ワニのミイラを10体も発見、縄で縛られ炎天下に放置か、驚き
クベット・エル・ハワの墓から出土したワニの頭蓋骨の1つには、歯が良好な状態で保存されていた。(Zuma Press/Cordon Press)
2019年、エジプト南部の、ナイル川をはさんでアスワン市街の対岸に位置するクベット・エル・ハワのネクロポリス(墓地遺跡)の発掘調査を行っていたベルギーとスペインの考古学者のチームが、大量に埋葬されたワニのミイラを発見した。内訳は、ほぼ完全な骨格が残っているものが5体と、頭部のみのものが5体だ。
エジプトの墓でワニのミイラが発見されるのは珍しくない。だが、いちどに10体も発見されることはまれだ。2023年1月に学術誌「PLOS One」に発表されたこの発見に関する論文では、ミイラづくりに用いられた防腐処置の技術だけでなく、ワニが死に至った過程にまで光を当てている。
保存状態が非常に良いワニの標本を調べる考古学者たち。(Zuma Press/Cordon Press)
崇められ、恐れられたワニ
古代エジプト人はワニを、人間とセベク(ソベク)神の仲介者と見なしていた。セベク神はワニの頭を持つ水と豊饒の神で、すべての生命がナイル川の恵みを受けている砂漠の地にとっては非常に重要だった。(参考記事:「古代エジプトの多彩な動物の神々、ネコからトキまで 写真18点」)
クベット・エル・ハワで発見された10体のワニの標本にはナイルワニとニシアフリカワニが含まれていて、生前の体長は約1.8~3.5メートルと推定された。
ギャラリー:古代エジプト、動物のミイラたち 写真12点(写真クリックでギャラリーページへ)
女王のペットだったガゼルは、王家の一員として、人間と同じように手厚くミイラにされた。上質の布にくるまれ、木製の棺に納められたこの動物は、紀元前945年ごろ、主人の亡骸とともに埋葬された。(Photograph by Richard Barnes, Nat Geo Image Collection)
古代エジプトのワニたちは、セベク神と関連づけられていただけでなく、人々から日常的に観察され、恐れられていた。
獲物を水中に引きずり込んで溺れさせるナイルワニは、現在でも驚くほど攻撃的なハンターとして知られている。2023年には、アフリカのナイルワニの生息域の全体で合計115人がナイルワニに襲われて死亡した。