政府が政労使会議、石破首相「今年の勢いで大幅な賃上げを」
[東京 26日 ロイター] - 石破茂首相は26日、経済界、労働団体のトップらと意見交換する「政労使会議」で、来年の春闘での大幅な賃上げ実現に向けて協力を呼びかけるとともに、最低賃金引き上げのための対応策を来春までに取りまとめるよう関係閣僚に指示した。
政労使会議は岸田文雄政権が昨年3月に約8年ぶりに復活し、同11月、今年1月に開いた。石破政権下では初めての開催となる。
連合によると、24年春闘は基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた平均賃上げ率は5.10%と、33年ぶりの高水準で着地。ベア率は3.56%と、集計を開始した2015年以降で最も高かった。
石破首相は「今年の勢いで大幅な賃上げの協力を」と要請。賃上げの流れが中小企業や地方に行きわたることが重要とし、政府も総合経済対策に盛り込んだ具体策を通じて賃上げ環境の整備に取り組むと説明した。
連合の芳野友子会長は会議後、記者団の取材に応じ「賃上げに向けて政労使が同じ方向に向かっていく心合わせができるという点では非常にありがたい」と評価。地方版の「政労使会議」を通じて全国的な賃上げの機運醸成に力を入れていく考えを示した。
<最低賃金>
今回の政労使会議は、最低賃金の中期的な引き上げ方針についても意見交換した。石破首相は2020年代に全国平均1500円に引き上げる目標を掲げており、赤沢亮正経済財政・再生相をはじめとする関係閣僚に対応策を来春までに取りまとめるよう指示した。
一方、雇用する側の十倉雅和経団連会長は会議後、記者団に対し、労使協議を経て決めていく春闘と違い、最低賃金は法的拘束力があるものだと指摘。進め方やスピードには丁寧な議論が必要との認識を示した。
<賃上げのモメンタムは維持の見方>
連合は25年春闘について、ベアと定昇を合わせて5%以上の賃上げを目指す構想を掲げた。今年の要求水準を据え置き、「5%以上」を最低ラインとして取り組むことで賃上げの流れの定着を目指す。
もっとも、来年も大手企業を中心に賃上げの勢いは維持されるとの見方は多い。トランプ氏の米大統領再登板選で世界経済の先行き不透明感が強まったものの、人手不足やインフレ経済への移行など国内の構造問題は変わらないためだ。
ある政府関係者は「中小企業であっても人手を確保するために賃上げせざるを得ないところも多い。春闘の賃上げ率は今年同様に5%以上が望まれるところでもあるし、(中小も含めた全体で)実現できる環境だ」との見方を示す。
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