Googleマップを使わずに目的地に行き、自分の地図の読めなさを知る

今回のルールは、『スマホでマップと乗り換え案内を開かない』。

1人でフラフラと出かける年齢になった時には、既にスマホを持っていたので、Googleマップなしで外出した記憶がほとんどない。 そしてもっと小さかった頃は、親が印刷した地図を見ながら先導してくれていた、というぼんやりした記憶がある。そうそう、印刷してたんだよな、地図を。

とりあえずスマホからGoogleマップを印刷してみる。

なんか違う。Googleじゃない方がいいかも。

うん。いいね。見慣れた感じ。Yahoo!マップは紙と相性がいい。

そんでもってこうだ。Yahooマップを横に印刷。これが地図印刷の最適解。

回る地図

さて、目的地は渋谷。洋菓子屋→毛糸屋→映画館の3ヶ所を巡る。

予習もしたので、渋谷駅までは難なく到着。

そして出口から出たものの…

どっちに行けばいいのかわからないな。 右か?左か?

空間を『右』『左』で認識してる時点でわかる通り、わたしはマジで地図(地理)が苦手である。

しかし、ここで声を大にして言いたいのは、スマホ世代はGoogleマップのルート案内に頼りすぎているから地図が読めない、というわけではないことだ。

現に、わたしの同世代の友人は普通に地図が読めている。地図をぐるぐる回転させながら立ち尽くしているのはわたしだけだ。世代の問題ではなく、個人の問題だと思う。

今まで全然気にしたことなかったが、渋谷は意外と地図が設置してある。ありがたい。

そして地図を見てるのは、ほぼ全員インバウンド観光客だ。 みなさん異国の地図を前にウンウンと悩んでいる。すごいな。かっこいい。その心意気、素晴らしい。お手伝いしてあげたい。地図、読めてますか?わたしは読めてません。

地図をぐるぐる回しながら照らし合わせる。

地図を回すと露骨にイライラする人っているよな。一体わたしは今までの人生で何人の人間を地図大回転の罪でムカつかせたんだろう。考えると本当に申し訳なくなる。とりあえず今日は1人で来てよかった。

直進はこわい

地図の前で立ち尽くしていると、そういえば昔DPZのオフィスが入っていたビルが、渋谷PARCOと真反対に所在していたことを思い出した。初めて訪問した時、「わたしの知らない方の渋谷だ」と思ったのだ。

依然この地図上のどこに自分がいるのかはわかっていないが、とりあえずその方角に進もう。

合ってんだか間違ってんだかわかんない状態で直進を続けるのって怖いんだよな。

あ!地図がある!読めるか否かは別として、地図があるとホッとする。初めての感情だ。うれしくて早足で向かう。

めちゃくちゃ落書きしてあった。落書きすんな。

地図なんて誰も見ないと思ったか?わたしが見るんだよ。

どうやら正解の道を辿れているみたい。

この道をまっすぐ進むと、小川軒という老舗洋菓子屋があるはずだ。ただ、どのくらい進めばいいのかはわからない。地図の縮尺から推測するに、たぶん5分くらいな気がする。全然自信ない。

道中、イメージする小川軒っぽいオシャレブティックがいっぱいあった。こんな一等地に…。ブティックってどうやって経営が成り立っているのか一生謎だ。

Googleマップがあれば、『間違ってない、大丈夫』と確信を得た状態で進めるからお気楽なもんだが、無いとこんなにも不安である。

さて、5分以上歩いてる気がするが...。

あ、あの赤い軒、WとNの文字が書いてある。小川軒のローマ字表記かも。

LAWSONだった。

紙の地図は孤独

…ちょっと一旦立ち止まろう。

小川軒がこんなに駅から遠いのは、解釈違いだ。もっと手前にあってほしい。 偏見と表裏一体の勘を頼りに、元きた道を戻ると…、

…あった!

想像よりも素朴な店構えだったから、完全にスルーしてた。全ての店が小川軒である可能性を考えて歩くべきだった。

無事、お目当ての小川軒のチョコプレーンウィッチを購入。小川軒のチョコプレーンウィッチはこの世のチョコクッキーの中で最も美味しいので、要チェキだ。

そのあとは、ストレートに毛糸屋へ到着。『迷ったら光の方向へ進む(間違っていたとしても気分がいいから)』という戦法で行ったのだが、それが功を奏したようだ。

地図をしまうタイミングがわからない。スマホがなかった時代、みんなこうやって地図を片手に持って歩いていたのだろうか。

Googleマップがあると、一人でも一人で歩いている感覚がないが、紙の地図だと完全な孤独を感じる。日が暮れる前に次の場所へ急がねば。自然と早足になりながら、映画館へ向かう。

若干迷いつつも順調に進む。 到着。せっかくなので、予約番号も紙に書いてきた。そんでその様子をスマホで撮るのって、なんなんだろう。

そういえば、今はスマホがあるから、予定していた回を逃しそうになっても、次は何時の回があるかとか、近くの劇場で同じ作品が放映されてないかとか調べられるけど…、それ以前は?間に合うように頑張るか、入念に下調べするしかなかったのだろうか。

帰宅後、そのことを50代の親に聞いてみたところ、「う〜ん……?」と歯切れの悪い返事をした後に、もう一度「う〜ん………」と言いながら新聞をペラペラとめくり、それきりだった。

この誤魔化し方の感じ、親すぎるなと思った。

⏩ 地図が読める人の視点


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「自分って意外と地図読めるじゃん」と思ったわたしは、後日再びGoogleマップを開かない縛りを課して、動物園へと向かった。

今度は1人ではなく、友人と一緒に。友人は地図が読めるので黙って着いてきてもらう。

目的地の最寄り駅までは、予習とカンペさえ用意してれば余裕で行ける。楽勝だ。

しかし調子に乗ってはいけない。すべては駅の親切な設計のお陰である。駅をデザインしてくれた人、ありがとうございます。

最寄り駅から動物園前まで行くバスが出ているのだが、歩くことにした。なんか簡単な道だったので、散歩に丁度よさそうだったのだ。

この時の時間は正午。天気もいい。西口から出て、大通り沿いを1時間弱歩けばつくはずだ。

一応、印刷してきた地図を開く。

全体を写すために引きの画面で印刷したら、その間の道にある建物名とかがほぼ全部非表示になってしまった。正直、地図としてはかなり頼りない。

重要な部分を抜き取るとこんな感じ。途中に高速道路を挟む。

とりあえず歩く。

おッ!高速道路。頼りになる目印だ。

かわいい標識(逆光)。

かわいい標識(逆光)。

高速道路…2本目。2本目?

  地図には高速道路は一本しか書いていない。

間違ったのか。そういえば、1時間以上歩いている。

『動物園』の3文字が無い地図を眺め、立ち尽くす。

見兼ねた友人が一緒にマップを確認してくれた。そして、「全然違うところにいるから戻ろう」と一言。

大通り沿いをまっすぐ来てたはずなのに、何故だろう…。とぼんやりしていると、すかさず友人が解説してくれた。

つまり、こういうことらしい。

緩やかにカーブしていたみたいだ。

友人が言う。

「行きの道中で撮った写真はすべて逆光だったでしょう」

そう。つまり、進行方向に太陽があるということだ。そしてこの時の時間は正午。このことから、わたしが南に向かっていたことは明白だ。そして、肝心の動物園の位置は西である。

大通りを西側に進みながら、徐々に南に曲がっていったのだろう。

正直、この説明を聞いた時、意味がわからず、「へー…」しか言えなかった。地図が読める人ってこういう考え方ができるんだとただただ感心する。わたしなんて歩いてて太陽の位置とか考えないからな。

逆光じゃないから看板がよく見えるなあ。

西口から出たからと言って、まっすぐ歩けば西に進む、というわけではないのか。めちゃくちゃ当たり前の気づきを得た。

看板に言われるがままに行ったら到着

Googleマップなしで行くと、目的地までたどり着いたときの喜びもひとしおである。(労力の対価を無理矢理得ようと、脳が頑張っているだけかもしれない)

広い駐車場には車がズラリと並んでいた。 駅から動物園までの道中、あまりに人がいなかったので、もっと閑散としているかと思いきや結構な盛況だ。

そうだよな、みんな車で来るよな。そんできっと、カーナビを見ながら。

わたしは無数の車を眺めながら、はたしてこの中にグローブボックスにスーパーマップルが入っている車はあるのだろうか、と考えたりした。

動物園には、園内を全て見渡せる親切な地図がいくつも設置してあった。現在地も、どこにどの動物がいるかも、これを見れば一目瞭然。そして思った。その明瞭さは、例えるならGoogleマップである、と。 スマホを携帯するとは、常に動物園の地図を持ち歩くようなものなのかもしれない。

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今回のルールは、『スマホでマップと乗り換え案内を開かない』。

1人でフラフラと出かける年齢になった時には、既にスマホを持っていたので、Googleマップなしで外出した記憶がほとんどない。 そしてもっと小さかった頃は、親が印刷した地図を見ながら先導してくれていた、というぼんやりした記憶がある。そうそう、印刷してたんだよな、地図を。

とりあえずスマホからGoogleマップを印刷してみる。

なんか違う。Googleじゃない方がいいかも。

うん。いいね。見慣れた感じ。Yahoo!マップは紙と相性がいい。

そんでもってこうだ。Yahooマップを横に印刷。これが地図印刷の最適解。

回る地図

さて、目的地は渋谷。洋菓子屋→毛糸屋→映画館の3ヶ所を巡る。

予習もしたので、渋谷駅までは難なく到着。

そして出口から出たものの…

どっちに行けばいいのかわからないな。 右か?左か?

空間を『右』『左』で認識してる時点でわかる通り、わたしはマジで地図(地理)が苦手である。

しかし、ここで声を大にして言いたいのは、スマホ世代はGoogleマップのルート案内に頼りすぎているから地図が読めない、というわけではないことだ。

現に、わたしの同世代の友人は普通に地図が読めている。地図をぐるぐる回転させながら立ち尽くしているのはわたしだけだ。世代の問題ではなく、個人の問題だと思う。

今まで全然気にしたことなかったが、渋谷は意外と地図が設置してある。ありがたい。

そして地図を見てるのは、ほぼ全員インバウンド観光客だ。 みなさん異国の地図を前にウンウンと悩んでいる。すごいな。かっこいい。その心意気、素晴らしい。お手伝いしてあげたい。地図、読めてますか?わたしは読めてません。

地図をぐるぐる回しながら照らし合わせる。

地図を回すと露骨にイライラする人っているよな。一体わたしは今までの人生で何人の人間を地図大回転の罪でムカつかせたんだろう。考えると本当に申し訳なくなる。とりあえず今日は1人で来てよかった。

直進はこわい

地図の前で立ち尽くしていると、そういえば昔DPZのオフィスが入っていたビルが、渋谷PARCOと真反対に所在していたことを思い出した。初めて訪問した時、「わたしの知らない方の渋谷だ」と思ったのだ。

依然この地図上のどこに自分がいるのかはわかっていないが、とりあえずその方角に進もう。

合ってんだか間違ってんだかわかんない状態で直進を続けるのって怖いんだよな。

あ!地図がある!読めるか否かは別として、地図があるとホッとする。初めての感情だ。うれしくて早足で向かう。

めちゃくちゃ落書きしてあった。落書きすんな。

地図なんて誰も見ないと思ったか?わたしが見るんだよ。

どうやら正解の道を辿れているみたい。

この道をまっすぐ進むと、小川軒という老舗洋菓子屋があるはずだ。ただ、どのくらい進めばいいのかはわからない。地図の縮尺から推測するに、たぶん5分くらいな気がする。全然自信ない。

道中、イメージする小川軒っぽいオシャレブティックがいっぱいあった。こんな一等地に…。ブティックってどうやって経営が成り立っているのか一生謎だ。

Googleマップがあれば、『間違ってない、大丈夫』と確信を得た状態で進めるからお気楽なもんだが、無いとこんなにも不安である。

さて、5分以上歩いてる気がするが...。

あ、あの赤い軒、WとNの文字が書いてある。小川軒のローマ字表記かも。

LAWSONだった。

紙の地図は孤独

…ちょっと一旦立ち止まろう。

小川軒がこんなに駅から遠いのは、解釈違いだ。もっと手前にあってほしい。 偏見と表裏一体の勘を頼りに、元きた道を戻ると…、

…あった!

想像よりも素朴な店構えだったから、完全にスルーしてた。全ての店が小川軒である可能性を考えて歩くべきだった。

無事、お目当ての小川軒のチョコプレーンウィッチを購入。小川軒のチョコプレーンウィッチはこの世のチョコクッキーの中で最も美味しいので、要チェキだ。

そのあとは、ストレートに毛糸屋へ到着。『迷ったら光の方向へ進む(間違っていたとしても気分がいいから)』という戦法で行ったのだが、それが功を奏したようだ。

地図をしまうタイミングがわからない。スマホがなかった時代、みんなこうやって地図を片手に持って歩いていたのだろうか。

Googleマップがあると、一人でも一人で歩いている感覚がないが、紙の地図だと完全な孤独を感じる。日が暮れる前に次の場所へ急がねば。自然と早足になりながら、映画館へ向かう。

若干迷いつつも順調に進む。 到着。せっかくなので、予約番号も紙に書いてきた。そんでその様子をスマホで撮るのって、なんなんだろう。

そういえば、今はスマホがあるから、予定していた回を逃しそうになっても、次は何時の回があるかとか、近くの劇場で同じ作品が放映されてないかとか調べられるけど…、それ以前は?間に合うように頑張るか、入念に下調べするしかなかったのだろうか。

帰宅後、そのことを50代の親に聞いてみたところ、「う〜ん……?」と歯切れの悪い返事をした後に、もう一度「う〜ん………」と言いながら新聞をペラペラとめくり、それきりだった。

この誤魔化し方の感じ、親すぎるなと思った。

⏩ 地図が読める人の視点

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