リコールされたAnkerのモバイルバッテリーにどんな問題があったのかをCTスキャンで調査した結果とは?

ハードウェア

モバイルバッテリーメーカーのAnkerは、2016年から2022年に販売されたモバイルバッテリー「PowerCore 10000(モデル:A1263)」をアメリカで自主回収することを2025年6月に発表しました。このPowerCore 10000にどんな問題があったのかを、非破壊検査装置を開発するlumafieldがCTスキャンを使って調査しました。

What Went Wrong Inside These Recalled Power Banks?

https://www.lumafield.com/article/what-went-wrong-inside-these-recalled-power-banks

Recalled Anker Lithium-Ion Power Bank

https://voyager.lumafield.com/project/fd056b32-89ac-448c-864c-92cfe535497f lumafieldはまず、バッテリーセルを比較調査しています。PowerCore 10000には18650リチウムイオンバッテリーセルが3つ内蔵されており、調査対象となった5台の少なくとも2つの異なるサプライヤーのバッテリーセルが使われていました。調査対象の5台のうち、3台がリコール対象だったのですが、そのうちの1台には他の4台とは異なる2つの特徴があったとのこと。 その1台のバッテリーには、中心部が凹んでコアが崩壊するのを防ぐためのマンドレル(芯金)と呼ばれる補強材が使用されていました。

また、問題のバッテリーの正極側には大きなガス抜き穴が3つあったのに対して、他の4台には小さなガス抜き穴が4つありました。

これらの違いは、PB3のバッテリーが他の製品とは異なる供給元のものであることを強く示唆しています。ただし、複数のサプライヤーのバッテリーセルを搭載した製品がリコール対象となっていることから、リコールの根本的な原因はバッテリーセル自体ではなく、パワーバンクの他の部分にある可能性が考えられるとlumafieldは論じました。 次に、lumafiledがプリント基板(PCB)を比較チェックしたところ、リコール対象となった製品とそうでない製品との間に、組み立てにおける明確な違いがすぐに発見されました。

調査した5台はすべて、18650バッテリーセルの正極と陽極を薄い板状の金属製部品(バスバー)で接続していましたが、リコール対象外の2台(画像左)はバスパーからPCBへの接続に従来の絶縁ワイヤーを使用していたのに対し、リコール対象の3台(画像右)はPCBに直接バスバーを接続していました。

さらにリコール対象となった3台の接続部を詳しく見ると、懸念される可能性のある製造上のばらつきが存在しました。特に負極に接続されるバスバーの形状は製品ごとに大きく異なり、調査した1台ではわずかにねじれていることも確認されました。 以下はリコール対象となった3台でPCBとバッテリーセルの接続部分を撮影した画像。波打っているのが負極のバスバーで、その下にある平たい部品が正極のバスバー。特に左のバッテリーセルでは、負極のバスバーがわずかにねじれているのがわかります。

さらに、リコール対象の3台は正極と負極のバスバー間の距離が短かったことも判明。バスバーの変形によっては、ショートを起こす可能性もあります。

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lumafieldによれば、リチウムイオンバッテリーではアノード(負極)がカソード(正極)から十分に離れていないと、デンドライト形成によって性能の低下やショートを引き起こしかねず、最悪の場合熱暴走を引き起こす可能性があるとのこと。このように、バッテリー製造工程にはCTスキャンで簡単に発見できる欠陥がいくつかあるとlumafieldは述べています。 lumafieldは「PowerCore 10000をCTスキャンすることによって、一見シンプルに見えるこれらの製品のサプライチェーンの複雑さが垣間見えました。3年10カ月かけて製造され、6年半以上販売された数百万台のうち、ごく一部である5台のパワーバンクを対象とした限定的な分析ですが、A1263の製造期間を通じて、少なくとも2種類のバッテリーセルと2種類のバッテリーコネクタ設計が使用されていたことが判明しました。サンプル数を増やすことで、さらなる差異が明らかになる可能性があります」と述べています。 今回判明したタブバーの問題がリコール理由に直結するかは断言できませんが、lumafieldは「大量生産のバッテリーサプライチェーンの管理は本質的に困難であり、各段階における品質確保が不可欠です。今回のような大規模リコールの引き金になったのは何の欠陥だったのかは正確にはわかりませんが、品質問題がいかに大きな損失をもたらすかを如実に物語っています。こうした消費者向け製品の生産量は膨大であり、上流工程に至るまで品質問題を追跡することは極めて困難です」と述べています。

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