【米国市況】円下落し対ドル149円台後半、S&P500種は終盤に失速

外国為替市場で円はドルに対して下落。朝方にじりじりと下げを拡大し、一時0.4%安の1ドル=149円87銭を付けた後は、下げ渋る場面もあった。

  ドル指数は小幅上昇。アジア時間には一時0.4%下げていた。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1287.27 1.04 0.08% ドル/円 ¥149.72 ¥0.45 0.30% ユーロ/ドル $1.0467 $0.0009 0.09%     米東部時間 16時55分

  三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室ファーストバイスプレジデントの横田裕矢氏は、「先週21日に日本銀行の植田和男総裁から日本の金利上昇を抑える話や緩和維持の姿勢が示され、円は売り優勢だった」とした上で、「ドル・円はやはり上値が重い」と指摘。

  「ドルが対円で150円台を回復するには上値を追う材料不足。日本も祝日で方向感が出にくい。月末から月初にかけての経済指標待ちという感じだ」と話した。

  マーク・マコーミック氏らTDセキュリティーズのストラテジストは、「関税という一面だけに注目するあまり、市場はドルに有利なファンダメンタルズを見過ごしている」と24日のリポートで指摘。「いわゆるトランプトレードは奏功しなかったが、ドルは4-6月に上昇することが予想される」と続けた。

  週末のドイツ総選挙の結果を受けて、この日はユーロの上昇が目立った。

  独総選挙では、保守系野党のキリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)が勝利した。連立協議を主導する見通しのCDUのメルツ党首は2カ月以内の早期の組閣を目指す考えを示したが、中道派2党による政権を樹立するには、ショルツ首相の社会民主党(SPD)との連立以外に選択肢がない。

関連記事:独総選挙で保守系野党が勝利、極右は第2党-景気対策は複雑に (1)

  ドイツ銀行の為替調査責任者ジョージ・サラベロス氏は、「3党連立を必要としないことで、下振れ要因の一部は取り除かれた」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「しかし批判的に言えば、マクロ的な観点では、財政面で見通しがかなり良くなったわけではない」と述べた。

  三菱UFJ信託銀の横田氏はユーロについて、「ドイツ総選挙の結果を受けて買い戻し優勢だったが、1ユーロ=1.05ドル台はなかなか定着しない」と指摘。「独総選挙でのCDU・CSU勝利も、SPDと2党で議会多数派を形成する可能性もあり、結果もおおむね予想範囲内というところか。対ドルでユーロが買い一方向になるには材料不足」と分析した。

  カナダ・ドルは下落。トランプ米大統領がカナダとメキシコへの関税は予定通り前進していると述べたことが影響した。

関連記事:トランプ大統領、カナダとメキシコへの関税は予定通り前進している

株式

  S&P500種株価指数は続落。大型テクノロジー銘柄の一角が売られた。今週はエヌビディアの決算発表を控えている。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5983.25 -29.88 -0.50% ダウ工業株30種平均 43461.21 33.19 0.08% ナスダック総合指数 19286.93 -237.08 -1.21%

  S&P500種は6000を割り込んだ。ナスダック100指数は1.2%安。ハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」に対するヘッジファンドのネットエクスポージャーは、2023年4月以来の低水準となった。

  エヌビディアは3.1%安。マイクロソフトも下落。同社は米国内で一部のデータセンターのリースを解約したと、アナリストがリポートで指摘した。一方、アップルは上昇。

  ボラティリティーが再燃するとの見方が強まり始めており、26日のエヌビディア決算は市場に衝撃をもたらし得る一連のイベントの第1弾になる可能性がある。S&P500種は昨年12月終盤以降、1%を超える続落に見舞われていない。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「今週は株式相場にとって重要な週になり得る。相場は過去2カ月余りにわたってボックス圏で推移している」と述べた。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「投資家の混乱、最近の上昇を受けた自然な値固め局面、2月の季節的な弱さを要因に、相場は上下ともほぼ限られた範囲で推移している」と指摘。「しかし、力強いマクロ環境や堅調な企業決算、健全な資金フローは、モメンタムがいったん回復すれば上方向にブレークアウトすることを示している」と語った。

  ベルウェザー・ウェルスのクラーク・ベリン氏は、「エヌビディアの決算が絶好調となり、インフレのデータが予想より弱い内容となれば、株式の上向きモメンタムが強まる可能性がある」と話した。

国債

  米国債は上昇(利回りは低下)。この日実施された2年債入札(発行額690億ドル=約10兆円)で旺盛な需要が見られたことなどが相場を支えた。2年債入札での最高落札利回りは市場予想を下回った。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.66% -2.3 -0.48% 米10年債利回り 4.40% -3.1 -0.70% 米2年債利回り 4.17% -2.8 -0.66%     米東部時間 16時55分

  こうした入札結果は、米追加利下げ見通しへの信頼が回復しつつあることを示唆する。根強いインフレの数字を背景に、連邦公開市場委員会(FOMC)は1月に利下げを見送っていた。

  先週末の弱い経済指標や株式相場下落も、債券の需要を押し上げた。ただし、2年債利回りは過去4カ月にわたり昨年7月以来の高水準付近にとどまっている。

  UBSセキュリティーズの米金利戦略責任者、マイケル・クロハティー氏は「ポジティブなことの一つは、利回り水準が緩和から利上げにシフトしなければならないレベルにあることだ」と指摘。「FOMCが150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げるというシナリオは想像できるが、150bp引き上げることは想像し難い。このダイナミズムがより良いリスクリターンを生み出す」と話した。

原油

  ニューヨーク原油相場は反発。ロシアとウクライナの停戦協議やイラクによる増産の可能性など、地政学上の不確実性が多数くすぶる中で、総じて方向感を欠く展開となった。

  イラクのアブドルガニ石油相はこの日、トルコ向けのパイプラインが稼働を再開すれば、週内にも輸出を再開する可能性があると述べた。実際にそうなれば最大で日量18万5000バレルの供給増となるが、輸出量は石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の上限内にとどまると石油省は説明している。

  市場はウクライナ停戦交渉の行方も注視している。合意が実現すれば、対ロシア制裁緩和への道を開き、輸出の流れが変化する可能性がある。ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、キーウでの記者会見で、戦争で荒廃している自国に平和がもたらされるのであれば、退陣する用意があると述べた。トランプ大統領はウクライナに対して、選挙の実施を求めている。

関連記事:ゼレンスキー大統領、ウクライナの平和のためなら辞任の用意ある (1)

  一方、ブルームバーグがトレーダーやアナリストを対象に実施した調査によると、OPECプラスは供給過剰懸念から、減産縮小を再び先送りすると予想されている。調査では、4月に開始が予定されている段階的な供給回復を延期するとの回答が70%余りを占めた。

関連記事:OPECプラス、4月予定の供給回復開始を延期検討-参加国代表 (2)

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前営業日比30セント(0.4%)高い1バレル=70.70ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.5%上げて74.78ドル。  

  金スポット価格は再び最高値を更新した。金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入が背景にある。  

  金スポット価格は1オンス=2956.19ドルまで上昇。20日に記録したこれまでの最高値を上回った。ただ、その後は上げ幅を削った。金価格は過去8週間上昇しており、これは2020年以来の長期上昇局面だ。金を裏付けとするETFへの純流入額は先週、2022年以来の大きさを記録した。

  トランプ大統領の通商政策や地政学的な政策課題に対して懸念が高まっており、安全資産とされる金の妙味が増している。ゴールドマン・サックス・グループは先週、年末時点の金価格見通しを3100ドルに引き上げ、中央銀行の買い入れとETFの保有拡大が押し上げ要因になるとの見方を示した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時09分現在、前営業日比12.71ドル高の1オンス=2948.76ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は10.00ドル(0.3%)高の2963.20ドルで引けた。

原題:Loonie at Day’s Low After Trump Warns on Tariffs: Inside G-10(抜粋)

S&P 500 Swoons in Last 15 Minutes of US Trading: Markets Wrap

Treasury 2-Year Auction Draws Record Demand, Pushing Yields Down

Treasuries Rally, Extending Gains After Strong 2-Year Reception

Oil Edges Higher as Supply Questions, Peace Talks Cloud Outlook

Gold Marks Fresh Record After Bullion-Backed ETFs See Inflows

関連記事: