最高齢127歳、老化に抗う淡水魚「ビッグマウスバッファロー」の謎(Forbes JAPAN)
■新しい世代が50年以上も見られない場所もある 米国ミネソタ州のライスレイク国立野生動物保護区では、毎年春になると、ビッグマウスバッファローが時計のように正確に戻ってくる。水温が上がると、何世代にもわたってそうしてきたように、ライス川から遡上して、水没したワイルドライス(イネ科マコモ属の植物)の群生地で産卵するのだ。産み付けられた卵はふ化する。その後の数週間は、すべてが本来あるべき姿に見える。 しかし、真夏になると稚魚はいなくなっている。試練に耐えられなかったのだ。 『Scientific Reports』に発表された2024年9月の研究によれば、この個体群の390匹を調査した結果、99.7%が50歳を超えていることが判明した。多くの個体が80歳や90歳に迫り、100歳を超える個体もいた。このような年齢構成は、決して魚類個体群の典型ではない。 これが示しているのは、個体数の「谷」が、深く長いことだ。つまり半世紀以上にわたり、新たな世代が成体になっていない。 原因は解明されていないが、主な要因として外来種による高い捕食圧力、水位が安定しないこと、そして好ましくない水温が考えられる。 現在のところ、ライス湖の個体群は、長老たちの驚くべき長寿に支えられ、安定した状態を維持している。しかし、幼魚期の試練を乗り越えられる個体が極めて少ないため、人為的な支援なしに、個体群がいつまで持続できるかは疑問だ。 ■ビッグマウスバッファローは、私たちのようには年をとらない ほとんどの動物は、歳月がたつにつれて、免疫の低下やストレスの増加、細胞の衰えといった老化の兆候が現れる。しかしビッグマウスバッファローの場合、時の流れ方が少し違うように見える。 『Scientific Reports』に発表された2021年4月の研究では、2歳から99歳までの個体を追跡調査した。その結果、いくつかの主要なシステムにおいて、加齢に伴う生理機能の低下を示す証拠は見つからなかった。 それどころか、高齢の個体は、若い個体より健康に見えた。 一般的な血液マーカー(好中球とリンパ球の比率)でストレスレベルを測定したところ、高齢の個体の方が良い値が出たのだ。免疫機能も同様だった。生物学的システムの崩壊が予想されていたにもかかわらず、むしろアップグレードされるような現象を研究者たちは目の当たりにした。 テロメアの長ささえも、ストレスを受けていない限り、安定状態を保っていた(テロメアは、染色体を保護するキャップのようなもので、老化の指標とされている)。 理由はまだ研究中だが、ビッグマウスバッファローは脊椎動物に稀に見られる、「非常にわずかしか老化しない」種ということになる。 人間は加齢とともに、ストレスや病気が蓄積する傾向にあるが、ビッグマウスバッファローは異なる進化のゲームをプレーしているのかもしれない。急速な世代交代よりも、長寿と生存を重視するゲームだ。 この戦略で無敵になるわけではない。しかしビッグマウスバッファローは、並外れた生存能力を発揮している──外部からの脅威が抑えられている限りは。
Scott Travers