アングル:独極右AfDが過激路線修正、現実主義へ転換か活動禁止逃れの手段か

 ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は今月初めの議員集会で、品のある服装をすることや、議会における「やじ」抑制、2月の総選挙での躍進に寄与した一部の移民排斥を求める言葉を政策綱領から削除するといった党規約の改定に合意した。写真はAfDの議員団。3月25日、ベルリンで撮影(2025年 ロイター/Lisi Niesner)

[ベルリン 11日 ロイター] - ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は今月初めの議員集会で、品のある服装をすることや、議会における「やじ」抑制、2月の総選挙での躍進に寄与した一部の移民排斥を求める言葉を政策綱領から削除するといった党規約の改定に合意した。

これまでAfDは、ショックを与える政策を掲げ、挑発的で乱暴な物言いをすることで注目を集め、連邦議会の第2党にまで党勢を拡大してきた。しかし今、そうした人気を武器に政治の主流勢力に加わり、政権獲得へ戦術的な転換を図ろうとしている、というのが政治評論家や党関係者の見解だ。

最大野党になったAfDは、議会で真っ先に政府に質問できるなど幾つかの特権が与えられたが、他のどの政党もAfDと連立を組んで政権を樹立する道を拒んでいる。

それどころか過激主義を唱えるAfDは活動を禁止するべきだとの声がさまざまな政治勢力の間に広がる中で、議会の各委員会でも重要なポストはAfDに決して回されない。

政党禁止は上下両院のどちらか、あるいは政府が要請し、憲法裁判所が調査の上で判断する。実際に禁止された事例は1952年と1956年の2回だけで、メルツ首相は今のところAfDの禁止を求めることには反対だ。

AfD幹部の1人は規約改定について党の「プロフェッショナル化」に尽きると説明するが、特にドイツ東部の議員ではない創設メンバーの中からは、せっかくの「成功の方程式」を修正する動きに反発する声が聞かれる。

東部チューリンゲン州の州議会でAfD議員団代表を務め、最も過激なグループに属するとされるビョルン・ヘッケ氏の盟友で極右エッセイストのゲルツ・クビチェク氏は「20%の支持率がある党がなぜ政策綱領を変える必要があるのか理解できない」とのメッセージをポッドキャストで発信した。

2月の総選挙で得票率20.8%だったAfDはその後、一時は世論調査で支持率トップに立った。足元の支持率はメルツ首相が率いる保守連合を4ポイント下回っており、2029年に予定される次の総選挙が本当に国民的な人気を得られるかどうかの試金石になるだろう。

AfD指導部が期待するのは、イタリアのメローニ首相が率いる政党「イタリアの同胞」が単なる極右勢力から政治の主流派に脱皮したのと同じ道筋をたどるシナリオの実現だ。

こうした中で152人の議員団全員は、ワイデル共同党首が2月の総選挙まで繰り返し訴えてきた「リマイグレーション(remigration=再移住)」という言葉を政策綱領から削除することに同意した。この言葉は、同化していない非ドイツ人市民および移民の母国への強制送還を意味するとの受け止めが広がっており、5月に情報機関、連邦憲法擁護庁がAfDを極右団体に認定する根拠とされた。

あるAfD議員は、リマイグレーションという表現は「有害」になっていると認め、政党禁止を避けるのも目標の1つだと付け加えた。

AfDでかつて最も過激な政治家の1人とみなされていたクラー欧州議会議員は「リマイグレーションという言葉は違憲と認定され未来はなくなった。もうこの話は終わった」と記した。

<見せかけだけの疑念も>

ただ多くの評論家は、AfDの軌道修正が見せかけに過ぎないのではないかと疑っている。

政治学者のオリバー・レンブケ氏は「政党禁止の可能性が取り沙汰されていることが、AfDの悩みの種になりつつある。彼らは他の政党に対してより受け入れやすい存在になろうとしている。その目的は政治権力の一角を握り、政治舞台の片隅に追いやられないようにすることだ」と指摘した。

AfDは昨年、選挙運動が人種差別主義的だとの批判を受けた際には、青年組織の再編にも乗り出した。

電子メールでナチスを連想させる言葉を使用していたことが明らかになった所属地方政治家は今週、AfDから除名されている。

メルツ首相はなお、AfDを政権の枠組みから排除する政策を推進する意思を示しているが、保守連合議員団を率いるイェンス・シュパーン氏は、AfDを「普通の」野党として処遇する時期がきたとの見方を示した。

それでもメルツ氏は、メルケル元首相がAfDを無視する戦略を採用したのは失敗だったとの結論を下し、8日には議会でワイデル氏を「敵意と絶望」を拡散しようとしていると直接攻撃した。

AfD側も全てのメンバーが軌道修正に従うかどうか定かではない。活動家の1人は通信アプリに「AfDは人口リプレースメント(西欧白人種文明が移民に乗っ取られるという極右の主張)に対する戦いを放棄した。これは共感者の間に混乱をもたらしている」と投稿した。

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Berlin correspondent who has investigated anti-vaxxers and COVID treatment practices, reported on refugee camps and covered warlords' trials in The Hague. Earlier, he covered Eastern Europe for the Financial Times. He speaks Hungarian, German, French and Dutch.

Chief correspondent covering political and general news in Germany with experience in Argentina and in Cuba leading Reuters’ broader Caribbean coverage.

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