古代エジプトの王墓を発見、「失われた王朝」時代を解く貴重な鍵
深さ6メートルの砂の下から発掘された、名前は不明のファラオの墓。(Photograph by Dr. Josef Wegner, Penn Museum)
2024年12月と2025年1月、米国とエジプトの考古学者のチームが、エジプトのアビドス遺跡の近くでおよそ3600年前の墓を発掘した。この墓は、同国南部の都市ルクソールから北西に約32キロ、ナイル川の西に広がる砂漠地帯の端に位置する古代のネクロポリス(墓地群、ギリシャ語で「死者の都」という意味)で見つかった。
しかし、墓の主であるファラオ(王)の名前はわかっていない。また、そのファラオが属していた王朝に関しても、詳しいことはわからない。
「当時、エジプトはいくつもの対立する王国に分かれていました」と語るのは、米ペンシルベニア大学のエジプト学者で、発掘を率いたジョー・ウェグナー氏だ。「多くの争いや混乱があった時代です」
アビドスはエジプトのなかでも最も古い都市の一つで、オシリス神崇拝の中心地だった。オシリスは死、再生、王権に関わるエジプトの信仰が混ざり合ってできたものだ。(参考記事:「エジプトの神殿など、消滅の危機にある世界の美しい建造物6選」)
紀元前1839年頃、その近くに王家のネクロポリスが造られ、第12王朝のファラオで強大な権力を持っていたセンウセレト3世が葬られた。その後しばらくして、エジプトでは対立する派閥の支配者の間で争いが起こった。
センウセレト3世の墓は、1901年と1902年に発掘されたが、その数年後に現場は放置され、砂に埋もれた。
そして1990年代半ば、アドビスで新たな発掘を始めたウェグナー氏のチームが、センウセレトの墓の再調査も開始した。すると、いくつかの「失われた王」の墓が見つかった。2014年に発見されたセネブカイの墓もその一つだ。(参考記事:「古代エジプト王の壮絶な死が遺骨から明らかに」)
いずれの王もアドビスを支配していた同じ王朝に属しており、彼らの墓は、このネクロポリスのなかでは最後期の紀元前1650~前1550年頃のものと特定された。