ゴミや核廃棄物はロケットで太陽に捨てれば良い?夢のようで現実離れした“最悪のアイデア”は何が起こる?(スペースチャンネル)
地球上には、何千年にもわたり危険性を保つ高レベル放射性廃棄物が大量に存在しています。その最良の処分方法はいまだ見つかっておらず、ある種の“究極の解決策”としてたびたび持ち上がるのが、「ロケットで太陽に捨ててしまえばいい」という案です。確かに、太陽に捨ててしまえば、地球に悪影響を与えることはなさそうに思えます。しかし、このアイデアは物理的にも経済的にも、そして安全面からも極めて非現実的なのです。
■一見簡単そうに見えて、実は超困難な「太陽直行便」
太陽観測衛星「パーカー・ソーラー・プローブ」出典:NASAまず、地球から「まっすぐ太陽に向けてロケットを撃つ」という行為自体が、とてつもなく難しい技術的チャレンジなのです。地球は太陽の重力に引っ張られつつ、秒速30km(時速約10万8000km)という猛スピードで公転しています。このため、ロケットを太陽に“落とす”には、地球の公転速度と真逆の方向に向けて、同じ秒速30kmで打ち出す必要があります。これは、私たちがこれまで打ち上げたどのロケットよりも遥かに高い速度とエネルギーを要求することになり、現実には実行が極めて困難です。
■ロケット打ち上げの“失敗”が招く最悪の事態
スペースシャトルの爆発事故 出典:NASA次に問題となるのが、ロケットの打ち上げ失敗のリスクです。現在最も信頼性が高いとされるロケットでも、打ち上げ成功率はおよそ97%。つまり、100回に2〜3回は失敗しているのが現実です。もし放射性廃棄物を搭載したロケットが爆発した場合、高濃度の放射性物質が大気や海洋、都市部に拡散するおそれがあります。これは、事故が起きた場合の影響があまりにも大きく、人類にとって取り返しのつかない環境汚染につながる可能性があります。
そして、無事にロケットを宇宙に打ち上げられたしても、心配は尽きません。もし宇宙で不具合が起きてしまった場合、地球の周回軌道に残骸が漂い、人工衛星や宇宙ステーションと衝突する可能性があります。最終的には、周回軌道を外れて地球へ最突入することも考えられるのです。その他には、地球のみならず、月や火星にも汚染を広げてしまうかもしれません。宇宙空間に放射性物質をまき散らすことは、未来の宇宙探査や地球外生命の発見に悪影響を与えるという懸念に繋がってしまうのです。
■想像を超える打ち上げコスト
大量のロケット打ち上げ風景 出典:スペースチャンネル(AI)さらに現実的な壁がコストです。例えば、月面に1kgの物資を届けるだけでも、1億円の費用がかかると言われています。現在、日本には約1.8万トンの放射性廃棄物が蓄積され、その量も年々増え続けていると言われています。すべてを宇宙に捨てるには非現実的な巨額の費用が必要になるでしょう。たとえ再利用可能なロケットを駆使しても、毎年数万トンのゴミを処理するには何千、何万回もの打ち上げが必要です。
現在、放射性廃棄物のほとんどは、地中深くの「地層処分」などで管理されており、これに加えて再処理や再利用技術の開発も進んでいます。現実的な選択肢は、これらの方法をさらに安全・効率的にすることです。宇宙に捨てるのではなく、地球上で処理・管理する方法を確立することが最良と考えますが、皆さんのご意見はいかがでしょうか?コメントお待ちしています。
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