“当初は相手にされなかった”世界的偉業HDDの先駆者・岩崎俊一さん死去「本質をやり続けた」30年越しの逆転劇(FNNプライムオンライン)
垂直記録方式は、東北大学の門下生たちによって再び命を吹き込まれる。 2000年、日立製作所に所属していた高野公史さんが、岩崎研究室で学んだ技術をもとに、世界最高の記録密度を持つ垂直記録HDDを開発。これが世界中で再評価されるきっかけとなる。 日立グローバルストレージテクノロジーズ技術開発本部 高野公史本部長(2007年取材当時): 「大学時代からずっと垂直記録を実現するという夢を持ってやってきましたので、脚光を浴びた時は非常にうれしいものでしたね」 さらに2004年には、同じく岩崎研究室の出身である田中陽一郎さんが率いる東芝が、世界で初めて垂直磁気記録方式を採用したHDDの商品化を実現。 東芝 HDD商品企画部 田中陽一郎部長(2007年取材当時): 「我々が最初に出したということで、これは実用化に十分値する技術なんだと実証できた。そのインパクトはたいへん大きいし、それをやってきた者としては嬉しいですね」 岩崎俊一氏(2007年取材): 「日立も東芝も一生懸命で、東北大の研究者も研究をやっていて、実用化は嬉しかったですよ」 発明から30年近く経ち、垂直磁気記録方式はHDDの世界標準技術となった。
垂直記録方式の実用化は、HDDにとどまらず、ビッグデータ、動画配信、クラウドストレージといった今日の情報社会の中核を支える基盤技術となった。 2010年、岩崎さんは日本の科学技術分野で最高の栄誉とされる「日本国際賞」を受賞。授賞式には天皇皇后両陛下も臨席した。 岩崎俊一氏(2010年取材): 「この上ない名誉。この技術が将来にわたって真に『文明の利器』として社会に貢献できるように、今後も研究を続ける」 岩崎さんが理事長を務めていた東北工業大学には、実用化された垂直記録HDDの「第1号機」が大切に展示されている。 信じた道をやり続けた人が、時代を変えた 岩崎俊一さんは1989年に東北大学を退官後、東北工業大学で学長・理事長を歴任し、2016年からは名誉理事長を務めた。2013年には文化勲章を受章し、仙台市名誉市民、日本学士院賞、文化功労者など数々の栄誉に輝いた。 2023年には、米国電気電子学会(IEEE)が「垂直磁気記録方式」を“歴史的偉業(Milestone)”と認定。発祥の地である東北大学にマイルストーン賞が贈られた。 「本質をやり続けた」 その信念が、世界の技術と社会を支える力になった。 HDDという記録装置の中に、そして教え子たちの中に、岩崎俊一さんの仕事と志は、今も脈々と記録され続けている。
仙台放送