岡山:はやぶさ試料 倉敷に着陸 :地域ニュース : 読売新聞
初代・2号探査分 中四国初の同時公開
宇宙航空研究開発機構( JAXA(ジャクサ) )の小惑星探査機「はやぶさ」と「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星の砂などが、倉敷科学センター(倉敷市)で12月1日まで特別展示されている=写真=。両探査機が採取した試料の同時公開は、中四国では初めて。一連の試料は地球の水や有機物の起源を探る重要な手がかりで、今後の日本の宇宙探査の指針ともいえる。(浜端成貴)
小惑星「イトカワ」=JAXA提供「リュウグウ」の粒子=JAXA提供初代のはやぶさは2003年5月に打ち上げられ、約2年半後、史上初めて小惑星「イトカワ」への着陸に成功。一時、通信が途絶えるなどしたが、イトカワの微粒子を入手し、10年6月に地球に帰還した。
月より遠い天体の表面から試料を持ち帰る史上初の快挙で、7年間の宇宙の旅で飛行した距離は約60億キロ。燃料漏れ、制御不能といったトラブルを乗り越えての帰還は<奇跡>と呼ばれ、映画化されるなど大きな反響を呼んだ。
後継機のはやぶさ2は、14年12月に地球を出発。19年に小惑星「リュウグウ」表面の石や砂を採取し、20年12月に試料約5.4グラムが入ったカプセルを地球に届けた。6年にわたるミッションをミスなく達成した本体は、別の小惑星を目指して今も旅を続ける。
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特別展示ではこの二つの小惑星の試料を展示。イトカワの微粒子は約0.05ミリと肉眼では識別できないため、拡大した映像をモニターで流し、長さ2.87ミリのリュウグウの粒子は有機物を含んで黒くなっているのが確認できる。イトカワの微粒子は、内部に微量の水があることが確認され、地球の水の起源を探る新たな手がかりとして注目されている。
岡山大の中村栄三特任教授らのチームは昨年12月、リュウグウの砂や石から「生命の材料」となるアミノ酸が23種類含まれていることを確認し、成分を再現した土で野菜を育てることに成功したと発表し、宇宙で農業を行える可能性を示した。
2種類の試料の同時公開は、世界初の常設プラネタリウムがドイツで設置されて来年で100周年を迎えるのを記念し、日本プラネタリウム協議会などが実施。全国を巡回中で倉敷市は5か所目。
今月17日に倉敷科学センターを訪れた岡山市北区の男子高校生(16)は、はやぶさ2の打ち上げを生配信で見ていたといい、「あのはやぶさ2が宇宙から持ち帰ってきた砂をこんなに身近な場所で見られて本当にうれしい。科学の道に進みたいという気持ちがますます高まった」と興奮気味に話していた。
同センターの三島和久学芸員(54)は「どちらの試料も小惑星で採取されたものだが、色や成分が異なっている。その違いに重要な意味があるので、注目して見てほしい」と話している。
月曜日は休館。見学無料。問い合わせは同センター(086・454・0300)。