「家族を守れなかった現実が重くのしかかる」奈良の小1女児殺害事件で父親が胸中明かす

有山楓ちゃんが通った奈良市立富雄北小学校の児童が7回弔鐘を鳴らす中、黙禱する出席者ら=11月16日午前、奈良市役所(西川博明撮影)

奈良市立富雄北小学校1年の有山楓(かえで)ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害された事件から17日で21年となるのに合わせ、楓ちゃんの父、茂樹さん(51)が現在の心境について、奈良県警を通じて手記を公表した。茂樹さんは「想像の中でしか楓の成長した姿を思い浮かべることができない」「夢や希望をかなえてやれなかった後悔が頭の中から離れることはない」とした上で、「子供達の笑顔の絶えない安心・安全な社会が続くことを心より願う」と訴えた。全文は次の通り。

楓が被害に遭って21年がたちます。警察署で再会した楓の表情は今も忘れられません。今まで体験したこともない大きな衝撃でした。

楓が生きていれば28歳、どんな人生を歩んでいたのだろうかと想像します。看護師の仕事をしているか、他のやりたい事を見つけているかもしれない。友達と旅行に行ったり、もしかすると結婚して幸せな家庭を築いたりしているかもしれない。そんな想像の中でしか楓の成長した姿を思い浮かべることができません。

仲の良かった姉妹の笑顔や笑い声、夢や希望をかなえてやれなかった後悔はどれだけ時間が過ぎようとも頭の中から離れることはありません。

この21年間、前を向かなければならない、少しずつでも前に進んでいると思っていましたが、家族を守れなかった現実が私の中に重くのしかかり、前を向いているだけで一歩も進んでいないのだと改めて感じます。

子供達が被害に遭うことのない、このようなつらい思いを誰もすることのない、子供達の笑顔の絶えない安心・安全な社会が続くことを心より願います。

有山 茂樹

(表記は原文のまま)

冥福祈り、黙禱

有山楓ちゃんが誘拐、殺害された事件から21年となるのを前に、奈良市役所で16日、「子ども安全の日の集い」(市、市教育委員会主催)が開かれ、出席者らが楓ちゃんの冥福を祈って黙禱(もくとう)した。

同じような事件が起きないよう「地域の子供は地域で守る」をテーマとし、市立小中学校の校長や子供の見守り活動に携わる地域住民、警察関係者ら約180人が参加した。

仲川げん市長は「奈良市にとって最も大切な日。21年の年月がたつが、まだ事件の衝撃は私たちの心に深い傷を残す。子供をターゲットにした犯罪に対し、先回りして対策をとることがわれわれの使命、責任だ」とあいさつ。奈良県警犯罪被害者支援室の担当者が講演で、子供らの犯罪被害を防ぐポイントなどを伝えた。

楓ちゃんは平成16年11月17日に行方不明となり、翌日に同県平群町で遺体で見つかった。新聞販売店員だった小林薫元死刑囚が同12月に逮捕され、後に死刑判決が確定。25年に刑が執行された。

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