「非常に厄介なことに」 斎藤知事の七つの疑惑、側近たちは動いたが

有料記事

島脇健史

 「徹底的に調べてほしい」

 2024年3月21日、兵庫県の片山安孝副知事は知事室に呼ばれ、斎藤元彦知事からある文書を示された。

 文書は4ページ。斎藤氏が部下の県職員にパワハラをした▽企業に「おねだり」して贈答品をもらっていた▽側近たちが地方公務員法に違反して、知事選で斎藤氏を支援する選挙運動をした――など、七つの疑惑が記されていた。

告発文書が指摘した「疑惑」と県の対応

 複数の県関係者によると、斎藤氏はこの文書を、議員らとのパイプがあり、後の知事選で自身をそばで支えた知人男性から独自に入手していた。

 文書の内容を見た片山氏は、知事のパワハラ疑惑が含まれているのを見て「非常に厄介なことになる」と思った。

 後に、この文書に関する県議会の調査特別委員会(百条委員会)が設置され、斎藤氏や片山氏らが当時のやりとりを証言した。

今も混沌とした状況が続く兵庫県の内部告発文書問題。県の第三者委員会と県議会の百条委員会の資料や関係者の証言をもとに、経緯をたどります。文中の肩書は当時のものです。

 この日の斎藤、片山両氏の協議には、最終的に知事の側近「4人組」が顔をそろえた。

 片山氏の証言によると、そのうちの一人は「パワハラは受け取り方の問題ですよね」という趣旨のことを言った。

 それでも斎藤氏は、文書の作成者を探るよう指示した。

 「文書に事実でないことが含まれていると感じた。誰が、なぜ作成したのか、把握することが大事だと指示した」と斎藤氏は百条委で語った。

 協議の場では、文書の作成者として、人事課出身の西播磨県民局長の名前が浮上した。同じ人事畑の知事側近たちを暗に批判していると思われる文章を県のホームページに掲載していたからだ。

 片山氏らは県民局長の公用パソコンでやりとりされた過去1年分のメールを調べ、文書の作成者が県民局長である可能性が高いと判断した。

片山氏「誰から聞いたんや」

 3月25日、片山氏は人事課の職員とともに西播磨県民局を訪れた。片山氏は県民局長と同じ県西部出身で、長年の付き合いがあった。

 県関係者によると、地元の方…

【11月25日まで】全記事が読み放題のコースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

この記事を書いた人

島脇健史
神戸総局|選挙・震災担当
専門・関心分野
地方行政・選挙、気象・災害、地域医療

2024年3月、兵庫県の斎藤元彦知事らがパワハラ疑惑などを内部告発されました。告発への知事の対応をめぐって県議会と対立しましたが、出直し選挙では斎藤知事が再選を果たしました。最新ニュースをお伝えします。[もっと見る]

連載混沌 兵庫県内部告発文書問題(全12回)

この連載の一覧を見る

関連記事: