日米関税協議は妥結急がず、大統領の感情面も理解し臨む-石破首相
石破茂首相は14日、米国との関税協議を巡り、妥結を急がない考えを示した。論理面と同時にトランプ大統領が関税措置を打ち出すに至った感情面にも配慮しながら臨む必要があるとした。
衆院予算委員会で語った。日米協議について「せいては事を仕損じるということだと思う。どんどん妥協する、とにかく交渉さえまとまればいいという方針が望ましいと考えていない」との認識を示した。安全保障面の議論も必要だと指摘。その上で、日米が「世界のために何ができるか」について「同盟国ならではの関係を新たに築いていくことが重要なことだ」とも語った。
また、5年間にわたって最大の投資をし、多くの雇用を生み出してきた日本が投資をしていない国と同列に扱われることは「極めて不当だ」と発言。「なぜ大統領はあのような主張をするに至ったのか」についても理解し、交渉に当たる必要性を強調した。「感情についてきちんと理解するということでなければ信頼し合う同盟国たり得ない」と述べた。
石破首相の発言は協議開始を前に拙速な結論は求めず、米側の対応を見極めながら慎重に交渉を進める考えを示したものだ。関税協議を巡っては赤沢亮正経済再生担当相が16日から3日間の予定で米国を訪問し、日本時間の17日にベッセント財務長官らと初めての交渉に臨むとNHKが報じた。石破首相も衆院予算委で、赤沢氏が今週中にも訪米の方向で調整していることを明らかにした。
報告関税には否定的
立憲民主党の後藤祐一氏は同予算委の質疑で、日米協議に向け、為替を円高・ドル安に誘導する米国債の売却などのカードを手元に持っておくべきだと見解をただした。これに対し、石破首相は「為替について発言することは市場の臆測を招く」と述べ、コメントを控えた。米国債売却についても直接言及はしなかった。
米国債に関しては、自民党の小野寺五典政調会長は13日のNHK番組「日曜討論」で、米国債市場の混乱が上乗せ関税の一時停止措置につながったとの考えを示しつつも、交渉については「同盟国なので、米国の国債を意図的にどうするかということは政府として考えることはない」と発言していた。
同予算委では米国への報復関税についても議論があった。石破首相は「報復関税を課しませんということを断言するつもりはない」とした。ただ、エネルギーや食料の自給率が低い日本の状況下で、米国からの輸入品に報復関税を課すことが「国民の利益に結び付くというふうに現在、考えていない」と明言した。
他の発言
- 東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係抜きに語れない-日米の安保・経済協力
- きょう午後、シンガポールのウォン首相と電話会談で調整中
- USスチールの米企業として存続し、日本の利益も実現されることの接点、必ずある
- 米との交渉いかに成功裏に導くかに重点置いて対応
- 「選挙目当てのばらまき」を行うこと考えていない-経済対策
為替は日米財務相で議論
赤沢再生相は14日の同予算委で、ベッセント財務長官が為替問題も議題に上る可能性を示唆したことに対し、為替は、加藤勝信財務相とベッセント氏との間で緊密に議論していくことになるとの見解を示した。
トランプ米政権は日本などへの上乗せ関税を90日間停止する方針を示したものの、5日発動の10%の基本税率や鉄鋼・アルミニウム関税や自動車関税の25%は維持している。石破首相は2月の日米首脳会談などで日本は最大の投資国で多くの雇用を生み出してきたと伝えていた。
石破首相は米関税措置を「国難とも称すべき事態」と位置付け、全閣僚の参加する対策本部の設置して対応に当たるとともに野党各党にも協力を呼び掛けている。共同通信が12、13両日に実施した世論調査で、内閣支持率は発足以来最低となった前回の27.6%から微増し32.6%。読売新聞が11日から13日にかけて行った調査では31%と横ばいだった。