【更新中】「これはやばい」「津波、今もトラウマ」各地で避難急ぐ:朝日新聞
ロシアのカムチャツカ半島付近を震源とする地震が30日朝、発生した。日本列島は広範囲に津波警報が発表され、夏の暑さの中、各地で対応に追われた。
30日午前10時10分ごろ、三重県熊野市甫母町の国道311号で、軽乗用車を運転していた近くに住む女性(58)が道路南側の崖下に車ごと約20メートル転落し、頭などを強く打って死亡した。
県警熊野署によると、女性の携帯電話には「高台の待避場所に自動車を置きに行く」などと、家族とのSNSのやりとりが残っていたという。署は津波警報を受けて避難する途中で運転を誤って転落した可能性があるとみている。現場付近の道路にはガードレールなどはなかったという。
崖下に転落した車=2025年7月30日、三重県熊野市、メ~テレ提供「海岸を閉鎖します」。千葉県山武市の海沿いにある「海の家一力」の代表、金杉照子さん(51)は午前9時すぎ、市からそう連絡を受けた。
ちょうどオープンするころ。バーベキューのために5人ほどの客がきていた。すぐに避難してもらい、予約客にも連絡して「向かうのをやめてニュースを見て」と伝えた。30人ほどが来る予定だったが、「みんなの命が大事」と話す。
千葉県旭市の海岸沿いにある飯岡地区の高台にも、多くの避難者が押し寄せた。夫が経営する高台の飲食店にいた渡辺雅子さん(78)によると、午前10時半ごろ、70台ほどの車しか止められない高台の駐車場に100台以上の車が詰めかけた。バスで避難する団体もあるといい、警察が片側を交通規制して誘導したという。「警報が出たらとにかく高台に逃げるという東日本大震災の教訓を思い出したのだと思う」
北海道
北海道釧路市のゲストハウスでは、テレビで津波警報の発表を知り、スタッフと宿泊者5人の避難を決めた。車で避難先の小学校へ向かったが、道路が渋滞。同様に避難しようとした人が多いとみられ、スタッフの女性は「東日本大震災もあったので、不安は大きい」と話した。
釧路川の河口付近では、津波警報を受けて漁船が一時、沖に避難した=2025年7月30日午後0時6分、北海道釧路市大町、読者提供知床半島の先端付近の岩場では、午前9時すぎ時点で小学生ら65人が一時待機を余儀なくされた。
地元羅臼町の小中学生とボランティアの「ふるさと少年探検隊」で、ヒグマ警戒のハンターを含め引率者29人と、子ども36人。知床岬をめざして難所の岩をクライミング中、町教育委員会の担当者から、携帯電話で津波到達の恐れがあると知らされた。65人はそのまま岩に登り、標高20メートル以上の場所で待機したという。
津波警報に伴い閉鎖されたJR函館駅前では運行情報を求めて観光客が集まっていた=2025年7月30日午後1時50分、北海道函館市若松町、野田一郎撮影JR函館駅は津波警報に伴って閉鎖され、多くの観光客が足止めされた。長野県佐久市の別府香緒里さん(57)と夫の直和さん(62)は午前10時半ごろ、人の波に流されるように駅から近くのホテルに避難。4階の廊下で過ごし、ミネラルウォーターを1本受け取ったという。
「客室のトイレも使えたので助かった」と香緒里さん。直和さんは「運行再開の見込みがわからないので、今夜はホテルを予約するしかなさそうだ」と話した。
津波警報が出される中、高まる波=2025年7月30日午前11時ごろ、北海道・日高沖、HTB提供太平洋に面した北海道新ひだか町のひだか漁協では、所属する約15隻の漁船のほとんどが沖へ避難した。ブリ漁が本格化する時期。中村敬専務理事は「このまま収まってくれればいいが」と声を落とした。
北海道根室市の港では、北方領土の洋上慰霊に向かうための準備が進められていた。千島歯舞諸島居住者連盟によると、津波警報を受けて、船は沖合に移動。約60人の元島民らの参加者は避難したという。
宮崎県
宮崎市の青島海水浴場にある青島ビーチセンター「渚の交番」では、最初に津波注意報が出た後、遊泳禁止とした。担当者によると、海にはすでに数人のサーファーがおり、避難してもらったという。
津波警報が発令され、対応にあたる岩手県田野畑村の職員ら=2025年7月30日午前9時53分、岩手県田野畑村、三浦英之撮影昨年8月、南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)が出た際にも遊泳禁止にした。その後、より近い避難場所がないか、マニュアルを見直したところだった。担当者は「今回も影響が長引いて、客足が減ると問題だ」と肩を落とす。
岩手県
東日本大震災で被災した東北各地でも、自治体が避難を呼びかけた。
岩手県北部・田野畑村の海沿いのホテルでは、宿泊客のスマートフォンから津波注意報のアラートがいたるところで鳴り響き、宿泊していた親子連れから悲鳴があがった。ホテルは「早めに宿泊施設を出て高いところへ逃げて下さい」と呼びかけた。
避難所で、テントを設営する中学生ら=2025年7月30日午前11時26分、岩手県田野畑村の田野畑中学校、三浦英之撮影高台へ向かう道は住民の車や工事車両で一時渋滞。近くの漁港では小型漁船を陸へ引き揚げたり、漁船を守るために沖へ向かわせたりする漁師らの姿が見られた。漁師の一人は「船が大事だ、生きる糧なんだ」と話した。
午前10時前、村は人口約2800人の約5分の1にあたる約600人に避難指示を出し、防災無線で「直ちに高台に避難して下さい」と呼びかけ、消防団らに避難誘導を命じた。
岩手県釜石市の鵜住居町の避難所で受け付けをする団体職員の女性(43)は、「津波注意報で予想高が1メートルとニュースで聞いて、だめだと思って」と、すぐに避難袋を持ち、小6の長女と小3の長男、義父と避難した。午前11時現在で200人以上が避難。体育館は暑く、エアコンがないので教室に避難しているという。
岩手県久慈市の久慈総合運動場では午前10時半ごろには300台以上の車で駐車場がいっぱいになった。
市体育協会の滝沢将志さん(35)は母親と一緒に避難した。東日本大震災のときも津波が予想よりも急に高くなったことを思い出し、「このあと上がるんじゃないか」と考えていたところ、注意報から警報に切り替わったという。
海沿いの自宅は堤防から100メートルほどのところにある。「何事もないことを祈りますが、大丈夫かな」と不安げに話した。その後、午後2時ごろには久慈港で130センチの津波が観測された。
宮城県
宮城県北部・気仙沼市では、海岸近くの職場で仕事の準備をしていた田村昂昨さん(38)が高台に避難してきた。
標高50メートルを超える気仙沼市復興祈念公園に避難した人たちは、心配そうに海を見つめた=2025年7月30日午前11時6分、宮城県気仙沼市、福留庸友撮影サイレンが鳴ったが地震を感じなかったため、「最初は訓練かと思った」という。しかし、防災無線からサイレンが鳴り響き、海沿いのゲート・陸閘(りっこう)も閉まったと聞いて、「これは結構やばい」と避難を決断。「まだ昼間でよかった」と海を心配そうに眺めた。
宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区では、震災の教訓から、土地を3メートルかさ上げして市街地を再建している。午前9時40分ごろ、津波注意報が警報に引き上げられたことで、地区の大部分に避難指示が出された。海岸から約1キロの閖上公民館の2階に午前10時時点で約30人が避難。夏休み中の子どもたちや、海近くの工場で働く人たちも身を寄せた。
平屋建ての復興住宅から避難してきた伊東与治さん(79)は14年前、津波からぎりぎりで逃げた経験を持つ。「(防災行政無線の)サイレンが鳴って、当時のことを思い出した。今もトラウマだ」と話した。
津波警報が県内全域に出されていることを知らせる道路の電光掲示板=2025年7月30日午前9時59分、和歌山県新宮市、菊地洋行撮影和歌山県すさみ町の高台にある道の駅すさみでは、津波の到達予想時間の午前11時半前に、駐車場は車でいっぱいになった。建物内も人で混み合い、電話で家族に安否を知らせる姿も見られた。
近くの海水浴場に神戸市から妻と一緒に遊びに来ていた片倉宏さん(70)は、スマートフォンに届いた警報に驚き、車で避難してきたという。「何度か遊びに来ているが、こんなことは初めてで慌てた。とにかく高いところに行かないといけないと思った」と話した。
南海難波駅には、津波警報の影響で一部区間で運転が見合わせになったことを知らせる看板が立てられていた=2025年7月30日午前11時53分、大阪市中央区、有元愛美子撮影大阪市の湾岸部にある人工島・夢洲で開催中の大阪・関西万博で、30日午前に発表された津波注意報を知らせる場内アナウンスが、津波到達予想時刻の正午を過ぎ、午後0時7分に流れていた。
主催する日本国際博覧会協会は30日午後に会見し、「来場者に安心を与えるということで、伝える情報の内容に慎重を期した。結果として到達予想時刻を越えたことには改善の余地があり、申し訳ない」と謝罪した。
津波注意報では、大阪府での津波到達予想時刻は30日正午で、予想される高さは1メートルだった。
会場では、午後0時7分に日本語と英語で「会場はかさ上げされており、予想される高さよりも8メートル高く、通常通り営業する」と通知するアナウンスが流れた。「えーっ」と驚く来場者もいた。
九州3県で津波注意報、宮崎の「津波避難タワー」解錠
九州でも太平洋側の大分、宮崎、鹿児島の3県で津波注意報が発令された。宮崎県では、宮崎市や延岡市など9市町が避難指示を出した。沿岸部や海水浴場などから高台への避難を呼びかけている。
宮崎県延岡市では注意報発令から約10分で、市が設置する「津波避難タワー」解錠された。周辺に高台がないことから2016年に設置された2階建ての建物で、地元の町内会が鍵を開け、希望者がいつでも入れるようにした。
宮崎市の「みやざき臨海公園」では、ビーチを遊泳禁止とした。発令時は開場前で遊泳客はいなかったという。公園は通常通り開場したが、「海に近寄らないようにしてください」と放送で呼びかけたほか、バーベキューを予約していた客に中止の連絡を入れた。
宮崎県門川町は地震直後、防災無線で津波注意報の発令を呼びかけた。町総務課によると、避難所は開設していないが、発令直後は町役場に約20人が一時避難し、車も十数台訪れたという。
避難命令でフェリー着岸できない状態に
津波警報を受けて港に避難命令が出ているため、フェリーが着岸できない状態になっている。
商船三井さんふらわあによると、茨城の大洗港と北海道の苫小牧港を結ぶ航行中のフェリー計4便の入港が遅れる可能性があるという。
また、太平洋フェリーも仙台港と苫小牧港が入港を見合わせているとして、仙台発名古屋行きのフェリーの出航が遅れる見込みとしている。
各フェリー会社は港に近づかないように呼びかけている。
高萩小学校に設置された避難所。地域住民のほか、保育園などからも避難者が集まってきた=2025年7月30日午後1時4分、茨城県高萩市、古庄暢撮影津波警報の発表を受け、三菱自動車は水島製作所(岡山県倉敷市)の操業を一時停止した。従業員らは工場建屋の2階より上のフロアなどに避難したが、工場がある地区の避難指示が解除されたことから、操業を順次再開するという。
日産自動車も追浜工場(神奈川県横須賀市)、横浜工場(横浜市)、いわき工場(福島県いわき市)の操業を停止。横浜市にある本社でも一時、従業員らが5階以上に移動したり、1階のギャラリーを休館したりした。
キリンビールも工場一時停止
キリンビールは30日、津波警報の発表を受けて、仙台工場、横浜工場、メルシャン藤沢工場の稼働を一時停止し、従業員を安全な場所に避難させた。工場の施設に被害はない。いつ稼働できるか、状況を確認中という。
浜岡原発で取水槽周辺作業中断 設備に異常なし
中部電力は津波警報の発表を受け、静岡県御前崎市の沿岸にある浜岡原発の1~5号機で、海水を取り込む取水槽周辺での作業を中断した。設備に異常はないといい、潮位の変化は確認されていないという。浜岡原発は稼働しておらず、廃炉や再稼働準備の作業が行われている。
コンビニ各社も一時休業
コンビニでは30日、津波警報の発表を受けて休業が相次いだ。
セブン―イレブン・ジャパンは午前10時すぎ、各店舗に向けて、人命を最優先し店舗の休業などの判断を加盟店側に委ねる緊急案内を送った。午前11時半現在で、北海道から関西地方までの約260店舗が一時休業しているという。
ファミリーマートは午前11時現在、各自治体の避難指示などに基づき、271店舗が一時休業。ローソンも午前11時半現在で、北海道から中国・四国地方までの266店舗が休業しているという。
日本製紙、石巻市の工場を停止し従業員避難
日本製紙は津波注意報を受け、30日午前9時ごろまでに宮城県石巻市にある工場で紙の生産を停止。従業員を工場2階に避難させ、3階に対策本部を設けた。北海道白老町の工場も同日午前に停止し、従業員を安全な場所に避難させた。
仙台空港付近の沿岸部。津波警報の発表を受けて仙台空港の滑走路が閉鎖となった=2025年7月30日午前10時37分、宮城県、朝日新聞社機から、嶋田達也撮影国土交通省によると、津波警報の発表を受け、仙台空港の滑走路が午前9時41分に閉鎖となり、航空機への影響が出ているという。
日本航空(JAL)によると、仙台空港に着陸予定だった伊丹・福岡発の2便が午前10時半時点で、滑走路の閉鎖により、それぞれ出発した空港に引き返している。仙台発で折り返し予定だった伊丹・福岡行きの2便も欠航になったという。
全日本空輸(ANA)によると、伊丹から仙台へ向かっていた1便が伊丹へ引き返した。仙台から中部・伊丹・新千歳へ向かう3便と、中部から仙台へ向かう1便の計4便も欠航になった。これにより計約530人に影響が出たという。