〈ブラジル教育リポート〉④ 数学は人を幸せにできるか

  • サンタナ・デ・パルナイーバ市
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 数学は好きかと聞かれたら「いえ、あまり……」。そんな記者がブラジルの数学教師を取材しました。彼女は、ポルトガル語でこんな問いを立て、生徒と探求します。「A matemática pode tornar as pessoas felizes?(数学は人を幸せにできるか)」(記事=大宮将之、写真=種村伸広)      

 数学は好(す)きかと聞(き)かれたら「いえ、あまり……」。そんな記者がブラジルの数学教師を取(しゅ)材(ざい)しました。彼女は、ポルトガル語でこんな問(と)いを立て、生徒と探(たん)求(きゅう)します。「A(ア) matemática(マテマチカ) pode(ポジ) tornar(トルナル) as(アス) pessoas(ペソアス) felizes(フェリゼス)?(数学は人を幸(しあわ)せにできるか)」(記事=大宮将之、写真=種村伸広)      

数学教師のシェイラ・アビダラさんが7年生(日本の中学1年生に相当)の授業で「座標」を扱う

数学教師のシェイラ・アビダラさんが7年生(日本の中学1年生に相当)の授業で「座標」を扱う

サンタナ・デ・パルナイーバ市の街を歩く

サンタナ・デ・パルナイーバ市の街を歩く

 ブラジルの学校の新年度は、主に2月から始まる。サンタナ・デ・パルナイーバ市の公立マリア・フェルナンデス・マシャド・デ・オリベイラ初等教育学校(日本の小・中学校)では、そこで「折り紙」の活動を行うという。

 ブラジルの学校の新年度は、主(おも)に2月から始(はじ)まる。サンタナ・デ・パルナイーバ市の公立マリア・フェルナンデス・マシャド・デ・オリベイラ初等教育学校(日本の小・中学校)では、そこで「折(お)り紙(がみ)」の活動を行(おこな)うという。

中央の青と白の建物が、公立マリア・フェルナンデス・マシャド・デ・オリベイラ初等教育学校

中央の青と白の建物が、公立マリア・フェルナンデス・マシャド・デ・オリベイラ初等教育学校

学校の校章と名称が刻まれたオブジェ

学校の校章と名称が刻まれたオブジェ

折り紙の活動を行う生徒(シェイラさん提供)

折り紙の活動を行う生徒(シェイラさん提供)

 だからだろうか。本年3月に同校を訪れた際、生徒たちから次々に「プレゼントです!」と渡されたのも、折り紙の作品だった。自分たちで考えて用意したらしい。

 だからだろうか。本年3月に同校を訪(おとず)れた際(さい)、生徒たちから次々に「プレゼントです!」と渡(わた)されたのも、折り紙の作品だった。自分たちで考えて用意したらしい。

生徒からプレゼントされた折り紙の作品。日本とブラジルの国旗が描かれている。「ムイト・オブリガード!(本当にありがとう!)」と伝えると、こちら以上に喜んでくれた

生徒からプレゼントされた折り紙の作品。日本とブラジルの国旗が描かれている。「ムイト・オブリガード!(本当にありがとう!)」と伝えると、こちら以上に喜んでくれた

 折り紙の活動を学校に根付かせたのが、数学教師のシェイラ・アビダラさん(婦人部本部長)である。ブラジル創価学会の教育本部が長年にわたり全土で展開してきた、初代会長・牧口常三郎先生の教育学説に基づく「牧口教育プロジェクト」を応用したそうだ。   折り紙は、半分ずつに折る動作を通して「2分の1」「4分の1」といった分数を視覚的に理解できたり、線対称(二つに折るとピッタリ重なること)や回転対称(ある点を中心に回転させると、元の図形にピッタリ重なること)を体感できたりと、数学的な概念を自然に楽しく学べる。   それだけではない。友達や親と一緒につくって仲を深め、誰かにプレゼントして喜んでもらう中で「価値」が生まれる。「“価値創造の過程”を体験し、日常の行動に良い変化が生まれてこそ創価教育です」とシェイラさんは言う。  

 数学の授業が面白く、人格の価値を高めるものとなるよう、心を砕いているのが「教材開発」だ。

 折り紙の活動を学校に根(ね)付(づ)かせたのが、数学教師のシェイラ・アビダラさん(婦人部本部長)である。ブラジル創価学会の教育本部が長年にわたり全土で展(てん)開(かい)してきた、初代会長・牧口常(つね)三(さぶ)郎(ろう)先生の教育学(がく)説(せつ)に基(もと)づく「牧口教育プロジェクト」を応用したそうだ。  

 折り紙は、半分ずつに折る動作を通して「2分の1」「4分の1」といった分数を視(し)覚(かく)的(てき)に理解できたり、線(せん)対(たい)称(しょう)(二つに折るとピッタリ重(かさ)なること)や回転対(たい)称(しょう)(ある点を中心に回転させると、元(もと)の図形にピッタリ重なること)を体感できたりと、数学的な概(がい)念(ねん)を自然に楽(たの)しく学べる。

  

 それだけではない。友達や親と一(いっ)緒(しょ)につくって仲(なか)を深め、誰(だれ)かにプレゼントして喜(よろこ)んでもらう中で「価(か)値(ち)」が生(う)まれる。「“価値創(そう)造(ぞう)の過(か)程(てい)”を体験し、日常の行動に良い変化が生まれてこそ創価教育です」とシェイラさんは言う。

  

 数学の授業が面(おも)白(しろ)く、人(じん)格(かく)の価値を高めるものとなるよう、心を砕(くだ)いているのが「教材開(かい)発(はつ)」だ。

シェイラ・アビダラさん。全ての学びに「楽しさ」を忘れない

シェイラ・アビダラさん。全ての学びに「楽しさ」を忘れない

■創価教育学の3スローガン

■創価教育学の3スローガン

 教材開発と授業に当たり、シェイラさんが心がけるのは、創価の人間教育者である三代の会長――すなわち初代・牧口常三郎先生、第2代・戸田城聖先生、第3代・池田大作先生なら「どうされるか」と考え、祈り、教育現場で試行錯誤を重ねることである。

 教材開発と授業に当(あ)たり、シェイラさんが心がけるのは、創価の人間教育者である三代の会長――すなわち初代・牧口常(つね)三(さぶ)郎(ろう)先生、第2代・戸田城(じょう)聖(せい)先生、第3代・池田大作先生なら「どうされるか」と考え、祈(いの)り、教育現場で試(し)行(こう)錯(さく)誤(ご)を重(かさ)ねることである。

牧口先生の創価教育学についてポルトガル語で書かれた書籍。右は、池田先生の指針集『わが教育者に贈る』のポルトガル語版

牧口先生の創価教育学についてポルトガル語で書かれた書籍。右は、池田先生の指針集『わが教育者に贈る』のポルトガル語版

 牧口先生は「創価教育学の三つのスローガン」を掲げた。 「①経験より出発せよ」 「②価値を目標とせよ」

 「③経済を原理とせよ」

 ――である。 それぞれ―― ①「身近な生活」や「経験」に根差した学びから出発すること ②美・利・善の「価値」を創造できる人間への成長を目標とすること ③経済的・時間的な無駄を省き、教師の教育力や子どもの学習力を合理的・効率的に引き出すこと ――と解釈できよう。  

 数学者でもあった戸田先生の信念は「どんなできない生徒でも、できるようにしてみせる」。教え方は具体的で分かりやすく、面白い。シェイラさんが模範とするものだ。

 牧口先生は「創価教育学の三つのスローガン」を掲(かか)げた。 「①経験より出発せよ」 「②価値を目標とせよ」

 「③経(けい)済(ざい)を原理とせよ」

 ――である。 それぞれ――

 ①「身(み)近(ぢか)な生活」や「経験」に根(ね)差(ざ)した学びから出発すること

 ②美(び)・利(り)・善(ぜん)の「価値」を創(そう)造(ぞう)できる人間への成長を目標とすること ③経済的・時間的な無(む)駄(だ)を省(はぶ)き、教師の教育力や子どもの学習力を合(ごう)理(り)的(てき)・効(こう)率(りつ)的(てき)に引き出すこと ――と解(かい)釈(しゃく)できよう。  

 数学者でもあった戸田先生の信念は「どんなできない生徒でも、できるようにしてみせる」。教え方は具体的で分かりやすく、面(おも)白(しろ)い。シェイラさんが模(も)範(はん)とするものだ。

■戸田先生は子どもたちにどう教えたか

■戸田先生は子どもたちにどう教(おし)えたか

時習学館で教える戸田先生(小説『新・人間革命』第24巻「人間教育」の章の挿絵から。内田健一郎画)

時習学館で教える戸田先生(小説『新・人間革命』第24巻「人間教育」の章の挿絵から。内田健一郎画)

 戸田先生は1923年、「時習学館」という私塾を都内で開いた。ここが師匠・牧口先生の教育学説を実証する場となったのである。   例えば数学の授業の際、戸田先生は「犬の欲しい人はいないか?」と語りかけることから始めた。教室のあちこちから手が挙がる。先生は目を細めて見渡し、「さあ、誰にあげようか」と言いつつ、黒板にチョークで「犬」と大きく書いた。   「これは、なんだ?」 「イヌ!」 「そう、確かに犬だね」 「ハーイ!」 「さあ、欲しい人は持っていきなさい」   子どもたちは一瞬、困惑する。ややあって一人が「なんだ、字か!」。どっと笑い声が上がる。   先生は面白い実例を通して、黒板の字が抽象化された「記号」であることを理解させる。「数学は数の記号の上に成立している」という概念が、小さい頭に知らず知らず、染み込んでいく。そして子どもたちの頭は、自らの力で活発に応用を始めるのだ。   池田先生は、つづった。

 「優れた教育理念を根底にもち、独創的な教育技術を身につけた教師は、ぐいぐい生徒を引っ張っていくことができる。そうした教育者から、物事を認識する訓練を受け、いつしか人格の高みにまで導かれた人は、まことに幸福者といわなければなるまい」

 戸田先生は1923年、「時(じ)習(しゅう)学(がっ)館(かん)」という私(し)塾(じゅく)を都内で開(ひら)いた。ここが師(し)匠(しょう)・牧口先生の教育学説を実(じっ)証(しょう)する場(ば)となったのである。  

 例(たと)えば数学の授業の際(さい)、戸田先生は「犬(いぬ)の欲(ほ)しい人はいないか?」と語りかけることから始めた。教室のあちこちから手が挙(あ)がる。先生は目を細(ほそ)めて見(み)渡(わた)し、「さあ、誰(だれ)にあげようか」と言いつつ、黒(こく)板(ばん)にチョークで「犬」と大(おお)きく書いた。

   「これは、なんだ?」 「イヌ!」

 「そう、確(たし)かに犬だね」

 「ハーイ!」

 「さあ、欲(ほ)しい人は持っていきなさい」

  

 子どもたちは一(いっ)瞬(しゅん)、困(こん)惑(わく)する。ややあって一人が「なんだ、字か!」。どっと笑い声が上がる。

  

 先生は面(おも)白(しろ)い実(じつ)例(れい)を通して、黒板の字が抽(ちゅう)象(しょう)化(か)された「記号」であることを理解させる。「数学は数(かず)の記号の上に成立している」という概(がい)念(ねん)が、小さい頭(あたま)に知らず知らず、染(し)み込(こ)んでいく。そして子どもたちの頭は、自(みずか)らの力(ちから)で活(かっ)発(ぱつ)に応用を始めるのだ。

   池田先生は、つづった。

 「優(すぐ)れた教育理念を根(こん)底(てい)にもち、独(どく)創(そう)的(てき)な教育技術を身(み)につけた教師は、ぐいぐい生徒を引(ひ)っ張(ぱ)っていくことができる。そうした教育者から、物(もの)事(ごと)を認(にん)識(しき)する訓(くん)練(れん)を受け、いつしか人(じん)格(かく)の高(たか)みにまで導(みちび)かれた人は、まことに幸(こう)福(ふく)者(もの)といわなければなるまい」

■美・利・善の価値を創る学び

■美(び)・利(り)・善(ぜん)の価(か)値(ち)を創(つく)る学び

 実際に、シェイラさんの教材や授業を見せてもらった。担当は、6年生から8年生(日本の小学6年生から中学2年生に相当)である。  

 6年生のプロジェクトは「数学プラネット」。宇宙のどこかにある「幸福の星」を探して、数々の惑星を旅するというRPG(ロールプレーイングゲーム)型の学びだ。教室に、一つ一つの星に見立てたスペースをつくる。生徒たちは複数のグループを組み、いざ出発――。

 実際に、シェイラさんの教材や授業を見せてもらった。担(たん)当(とう)は、6年生から8年生(日本の小学6年生から中学2年生に相当)である。  

 6年生のプロジェクトは「数学プラネット」。宇(う)宙(ちゅう)のどこかにある「幸福の星」を探(さが)して、数々の惑(わく)星(せい)を旅(たび)するというRPG(ロールプレーイングゲーム)型(がた)の学びだ。教室に、一つ一つの星に見立てたスペースをつくる。生徒たちは複数のグループを組(く)み、いざ出発――。

教室で数学プラネットの準備を(シェイラさん提供)

教室で数学プラネットの準備を(シェイラさん提供)

 星に到着すると「モンスターが現れた!」。やつらは、数学的な問題を出してくる。 ほかにも、必要な道具を店で買うために金額の計算をしたり、次の目的地までの距離と時間を測ったりもしなければならない。

 シェイラさんは、考え方のヒントを出す。子どもたちは、知恵と力を合わせる。効率的な学び合いが生まれる。

 星に到(とう)着(ちゃく)すると「モンスターが現(あらわ)れた!」。やつらは、数学的な問題を出してくる。 ほかにも、必要な道具を店で買うために金額の計算をしたり、次の目的地までの距(きょ)離(り)と時間を測(はか)ったりもしなければならない。 シェイラさんは、考え方のヒントを出す。子どもたちは、知恵と力(ちから)を合わせる。効(こう)率(りつ)的(てき)な学び合いが生まれる。

数学プラネットに取り組む(同)

数学プラネットに取り組む(同)

数学プラネットの問題の一つ

数学プラネットの問題の一つ

 クリアした生徒たちの、うれしそうな顔といったらない。数学を「楽しい」と感じて「好き」になる――創価教育学の「美」の価値に通じるだろう。「『幸福の星をつくる力は、みんなの中にあるんだよ!』と伝えるまでが、授業です」(シェイラさん)   7年生では「数学は解決策」と掲げ、「利」の価値を追求する。取り上げるテーマは「お小遣いの使い方や貯金、貸し借り」といった身近なものから、「経済格差」や「難民問題」までさまざまだ。  

 どうすれば「得」をするのか。どうして「損」してしまうのか。自分も人も、互いに「利」を生むには? 真剣に学び、語り合う生徒たちにシェイラさんは訴える。「そうした問題を解決するための技術と考え方が、数学だよ」

 クリアした生徒たちの、うれしそうな顔といったらない。数学を「楽しい」と感じて「好き」になる――創価教育学の「美」の価値に通じるだろう。「『幸福の星をつくる力(ちから)は、みんなの中にあるんだよ!』と伝(つた)えるまでが、授業です」(シェイラさん)  

 7年生では「数学は解(かい)決(けつ)策(さく)」と掲(かか)げ、「利」の価値を追(つい)求(きゅう)する。取り上げるテーマは「お小(こ)遣(づか)いの使い方や貯金、貸(か)し借(か)り」といった身(み)近(ぢか)なものから、「経(けい)済(ざい)格差」や「難(なん)民(みん)問題」までさまざまだ。

  

 どうすれば「得(とく)」をするのか。どうして「損(そん)」してしまうのか。自分も人も、互(たが)いに「利」を生(う)むには? 真剣に学び、語り合う生徒たちにシェイラさんは訴(うった)える。「そうした問題を解決するための技術と考え方が、数学だよ」

 そして8年生は「善の数学」だ。「善」とは「社会的価値(公益)」のこと。 例えば、障がいのある人も安心して過ごせる学校や社会をつくるため、数学を活用する。車椅子の人が「スロープ」を安全に使える角度を算出したり、点字ブロックの設置距離と費用対効果の関係をグラフ化したり。実際の学校環境の改善にも生かされる。  

 シェイラさん自身、発達特性のある生徒も分かりやすく学べるよう、教材の工夫を惜しまない。

 そして8年生は「善(ぜん)の数学」だ。「善(ぜん)」とは「社会的価値(公(こう)益(えき))」のこと。 例(たと)えば、障(しょう)がいのある人も安心して過(す)ごせる学校や社会をつくるため、数学を活用する。車(くるま)椅(い)子(す)の人が「スロープ」を安全に使える角度を算(さん)出(しゅつ)したり、点字ブロックの設置距(きょ)離(り)と費(ひ)用(よう)対(たい)効(こう)果(か)の関係をグラフ化したり。実際の学校環(かん)境(きょう)の改(かい)善(ぜん)にも生(い)かされる。  

 シェイラさん自身、発達特(とく)性(せい)のある生徒も分かりやすく学べるよう、教材の工(く)夫(ふう)を惜(お)しまない。

生徒が車椅子を利用する人に話を聞く(同)

生徒が車椅子を利用する人に話を聞く(同)

「善の数学」に取り組んだ生徒が書いた感想。「私は『親切は親切を生む』ということを学びました。そうすれば世界をより良い場所にすることができます」

「善の数学」に取り組んだ生徒が書いた感想。「私は『親切は親切を生む』ということを学びました。そうすれば世界をより良い場所にすることができます」

「正負の数」の理解が苦手な、発達特性のある生徒が興味を持って学べるように、シェイラさんが用意した教材。ビルの地上階を「正の数」、地下階を「負の数」と見立てる。その生徒が大好きなヒーロー・スパイダーマンが上り下りするイメージを持たせた

「正負の数」の理解が苦手な、発達特性のある生徒が興味を持って学べるように、シェイラさんが用意した教材。ビルの地上階を「正の数」、地下階を「負の数」と見立てる。その生徒が大好きなヒーロー・スパイダーマンが上り下りするイメージを持たせた

 市の教育局からの表彰も、一度や二度ではない。 カルラ・クリスチナ・ボルジェス・デ・ソウザ校長は言う。「シェイラ先生は学力と共に人格も育むんです。確かな教育技術に加え、深い人生哲学があるからでしょう」

 市の教育局からの表(ひょう)彰(しょう)も、一度や二度ではない。 カルラ・クリスチナ・ボルジェス・デ・ソウザ校長は言う。「シェイラ先生は学力と共(とも)に人格も育(はぐく)むんです。確(たし)かな教育技術に加(くわ)え、深い人生哲(てつ)学(がく)があるからでしょう」

2018年に市の教育局から表彰された時の一枚。シェイラさん㊥が当時、教えていた生徒㊧、愛する長男・シラスさんと笑顔で(同)

2018年に市の教育局から表彰された時の一枚。シェイラさん㊥が当時、教えていた生徒㊧、愛する長男・シラスさんと笑顔で(同)

校長のカルラ・クリスチナ・ボルジェス・デ・ソウザさん㊨、学校のスーパーバイザーであるアンドレイア・ダ・シルバ・カラプマラさん㊧と

校長のカルラ・クリスチナ・ボルジェス・デ・ソウザさん㊨、学校のスーパーバイザーであるアンドレイア・ダ・シルバ・カラプマラさん㊧と

「よく分かる」ことは楽しい「よく生きる」ことは嬉しい

「よく分かる」ことは楽(たの)しい「よく生きる」ことは嬉(うれ)しい

 その人生哲学の師匠こそ、池田先生にほかならない。シェイラさんが生き方に迷った10代の時も、経済苦に直面し、家庭教師として働きながら学んだ学生時代も――先生からの激励に、どれほど勇気をもらっただろう。   誰もが本来、「よりよく生きたい」と願っている。その人間の心と力を信じ抜き、励まし続け、無限の可能性を開いていける「学び方」「生き方」を会得できるようにする。その創価教育の本質を、池田先生は教えてくれた。   シェイラさんは授業のモットーに「今日も幸せ!」と掲げる。 「よく分かる」ことは楽しい。 「よく生きる」ことは嬉しい。

 それを日々、実感できる子どもは幸せだ。

 その人生哲(てつ)学(がく)の師(し)匠(しょう)こそ、池田先生にほかならない。シェイラさんが生き方に迷(まよ)った10代の時も、経(けい)済(ざい)苦(く)に直(ちょく)面(めん)し、家庭教師として働(はたら)きながら学んだ学生時代も――先生からの激(げき)励(れい)に、どれほど勇気をもらっただろう。  

 誰(だれ)もが本来、「よりよく生きたい」と願(ねが)っている。その人間の心と力(ちから)を信じ抜(ぬ)き、励(はげ)まし続け、無(む)限(げん)の可能性を開(ひら)いていける「学び方」「生き方」を会(え)得(とく)できるようにする。その創価教育の本質を、池田先生は教えてくれた。

  

 シェイラさんは授業のモットーに「今日(きょう)も幸せ!」と掲(かか)げる。

 「よく分かる」ことは楽(たの)しい。 「よく生きる」ことは嬉(うれ)しい。 それを日々、実感できる子どもは幸せだ。

数学の授業を始める際、シェイラさんは黒板に「Mais um dia feliz!(今日も幸せ!)」とのモットーを書き、生徒たちと目標を共有する。池田先生の励ましの言葉を重ねることも

数学の授業を始める際、シェイラさんは黒板に「Mais um dia feliz!(今日も幸せ!)」とのモットーを書き、生徒たちと目標を共有する。池田先生の励ましの言葉を重ねることも

■数学と人生の答え合わせは

■数学と人生の答え合わせは

 学校の読書教育の一環で、池田先生の『少年とさくら』を取り上げた。空襲で焼け残った桜を巡る創作童話だ。 桜守の老人が、少年にこう語る。「毎年、毎年、冬にたえぬいて、さくらはおおきくなっていく。そしてみごとな花を枝いっぱいにひろげていく。人間もおなじだ。きびしい環境にあったほうが、強くもなるし、おおきなこころの人にもなれる」   この読書を、数学の「立体」の学習に展開した。生徒がそれぞれ「心に残った場面」を描き、立体として組み立てる。  

 ある生徒は、「雪」の面の反対側に「桜」を配した。悩みと喜びは表裏一体。だから「何があっても、希望を信じて生きようと決めました」と。

 学校の読書教育の一(いっ)環(かん)で、池田先生の『少年とさくら』を取り上げた。空(くう)襲(しゅう)で焼け残った桜を巡(めぐ)る創作童話だ。 桜(さくら)守(もり)の老人が、少年にこう語る。「毎年、毎年、冬にたえぬいて、さくらはおおきくなっていく。そしてみごとな花を枝(えだ)いっぱいにひろげていく。人間もおなじだ。きびしい環(かん)境(きょう)にあったほうが、強くもなるし、おおきなこころの人にもなれる」  

 この読書を、数学の「立(りっ)体(たい)」の学習に展(てん)開(かい)した。生徒がそれぞれ「心に残った場面」を描(えが)き、立体として組み立てる。

  

 ある生徒は、「雪」の面の反対側に「桜」を配(はい)した。悩みと喜びは表(ひょう)裏(り)一(いっ)体(たい)。だから「何があっても、希望を信じて生きようと決めました」と。

生徒たちが池田先生の創作童話『少年とさくら』を読み、心に残る場面を立体に形づくった

生徒たちが池田先生の創作童話『少年とさくら』を読み、心に残る場面を立体に形づくった

『少年とさくら』は、世界的な画家ワイルドスミス氏の作画で『さくらの木』と題する美しい絵本にもなっている

『少年とさくら』は、世界的な画家ワイルドスミス氏の作画で『さくらの木』と題する美しい絵本にもなっている

 母校に貢献する生き方を選んだ教え子もいる。かつてシェイラさんのもとで学んだカミラ・ヘケナさんは今、校内にある「メイカースペース」(子どもたちが最先端の技術を活用し、ものづくりを協働して行う場)の指導員を務めている。 「数学を通して、創造することの楽しさと喜びを教えてくれたのが、シェイラ先生でした」

 母校に貢(こう)献(けん)する生き方を選(えら)んだ教え子もいる。かつてシェイラさんのもとで学んだカミラ・ヘケナさんは今、校内にある「メイカースペース」(子どもたちが最(さい)先(せん)端(たん)の技術を活用し、ものづくりを協(きょう)働(どう)して行(おこな)う場(ば))の指導員を務(つと)めている。 「数学を通して、創(そう)造(ぞう)することの楽しさと喜びを教えてくれたのが、シェイラ先生でした」

カミラ・ヘケナさん㊧と

カミラ・ヘケナさん㊧と

校内にあるメイカースペース。身近な工具から、3Dプリンターなど最先端のデジタル工作機械まで用意されている

校内にあるメイカースペース。身近な工具から、3Dプリンターなど最先端のデジタル工作機械まで用意されている

 取材を終えて、率直に思う。自分もここで、学んでいたら……。「いつでも歓迎します!」と笑うシェイラさん。 数学は人を幸せにできるか。

 答え合わせは、ずっと続いていくのだろう。

 取材を終えて、率(そっ)直(ちょく)に思う。自分もここで、学んでいたら……。「いつでも歓(かん)迎(げい)します!」と笑うシェイラさん。 数学は人を幸せにできるか。

 答え合わせは、ずっと続いていくのだろう。

教育本部の仲間たちと励まし合う

教育本部の仲間たちと励まし合う

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