木星の死んだ衛星「カリスト」に海の可能性 酸素が豊富に存在し、生命の居住環境としても注目

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カリストの内部構造のモデル 出典:Kelvinsong

米カリフォルニア工科大学などの研究チームは、木星の衛星カリストの地下に広大な海が存在する可能性が高いとする研究成果を発表しました。これまで「死んだ天体」と見なされてきたカリストへの見方を一変させる今回の発見をご紹介していきます。

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ガリレオ衛星の一つ、カリスト

ガリレオが撮影したガリレオ衛星 出典:NASA

カリストは、木星の4大衛星「ガリレオ衛星」(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)の一つ。太陽系でも最もクレーターが多い天体であり、長らく地質活動がほとんどない「静かな衛星」、すなわち「死んだ天体」と考えられてきました。

過去にもカリストの地下に液体の海がある可能性は指摘されていました。1990年代、NASAの探査機「ガリレオ」がカリストの磁場を測定した際、塩分を含む導電性の液体が氷の下に存在する兆候が観測されていたのです。

しかし、カリストは強力な電離圏(大気の上層部にある電気を帯びた領域)を持っており、これが磁場の解析を難しくしていました。電離圏が生み出す磁場の「ノイズ」が、海による磁場の変化と区別しにくかったため、決定的な証拠とはならなかったのです。

再解析がもたらしたブレイクスルー

探査機ガリレオのイメージ 出典:NASA

研究チームは、ガリレオ探査機が約30年前に取得した磁場データを最新の解析技術で再検討。多周波解析とプラズマシミュレーションを用いて電離圏由来のノイズを除去した結果、観測された磁場は地下の塩水の海によって説明できることが明らかになりました。研究チームは、カリストの地下海が少なくとも数十キロメートルの厚さを持ち、その上を厚い氷の殻が覆っていると推定しています。

この発見は、カリストがエウロパやガニメデと同様に、生命を育む可能性を持つ「海の衛星」であることを示唆します。特にカリストには酸素が豊富に存在することも分かっており、その由来は依然として謎に包まれています。もし地下海と結びついているとすれば、生命の居住環境として注目される可能性が高まります。

次なる探査に期待

カリストの基地の想像図 出典:NASA

カリストの地下海の存在を裏付けるため、今後の探査ミッションが重要になります。NASAの「エウロパ・クリッパー」は2024年に打ち上げられ、2030年に木星圏へ到達予定。また、欧州宇宙機関(ESA)の「JUICE」も2031年にカリストを含む木星の衛星を詳しく観測する計画です。

これらの探査機は、フライバイ(近接通過)によって多くの磁場データを収集することが期待されており、地下海の存在や構造、さらには生命の痕跡の有無を探る上で重要な役割を果たすでしょう。

かつては「死んだ衛星」とされていたカリスト。しかし今回の再解析によって、その地下に広がる海の存在が現実味を帯びてきました。もしそこに生命の兆しが見つかれば、それは私たちが生命を定義する枠組みすら揺るがす大発見となるかもしれません。カリストの地下には一体どんな光景が広がっていると思いますか?みなさんからのコメントお待ちしています。

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