ルンバは本当にこれからも続くの? アイロボットジャパン社長に聞いた

ロボット掃除機「ルンバ」で知られるアイロボット社について、3月中旬ごろから日本国内での報道が過熱している。これは米国本社の決算報告を受けたもので、国内の一部報道では事業継続が困難であるといった内容が伝えられていた。 【画像】アイロボットジャパン 挽野元 代表取締役社長 昨今は国内外の家電メーカーで事業撤退や再編など衝撃的なニュースもある中、最も知られるロボット掃除機であり日本にもなじみ深いルンバのアイロボット社について、愛用するユーザーなどが心配するのは仕方ないところ。一方で、この注目に乗じて公式発表の一部を切り取り、強い言葉の見出しで目を引こうとする動きがあるのも、家電の情報を伝えるメディアとして懸念を持っている部分だ。 経営状況などの詳細は今後も冷静に見守る必要はあるものの、私たち消費者にとっては、生活を快適にしてくれる製品がちゃんとこれからも登場してくれることがまず大事。そこでアイロボットジャパンの挽野元 代表取締役社長にインタビューを行ない、実際会社としてどんな状況で、ルンバはどう変わっていくのか、または変わらないのか、話を聞いてきた。 ■ 報道は日本が特に誇張? 海外の反応は ――先日、ホームページ上で公開されたお知らせでは「一部誤解を招く報道が見受けられます」との表現がありました。 アイロボットジャパン 挽野元 代表取締役社長(以下敬称略):特に日本国内では報道の反応が大きく大変驚きました。一部メディアでは結構誇張された表現があって、そこに憶測も加わって「事業継続困難」という見出しが一人歩きしてしまったように見受けられて当惑しているところもあります。 実際のところ、私どもは普通にビジネスを進めています。企業としての存続不可といった状況には全くありません。ここはぜひ皆さんに正しくご理解いただきたいです。私も他の営業マーケティングのメンバーも通常通り業務を行なっていて、当面のビジネスを回す上でのキャッシュや資産の流動性に全く問題はなく、そこは強調したいところです。 挽野:グローバルでビジネス展開する中で、他の地域、北米や欧州を見ると、あまり誇張された報道は見られません。それは新製品を日本よりも早く発表して、もうすでに発売が始まっていることもあります。その記事などで新製品を見て「新しいルンバはここが良くなったよね」といった反応が大きな割合を占めていました。日本国内では少し遅れて発表するため、そのタイミングの差が、報道の傾向を見ると表れているかと思います。 ■ 愛用者にも「心配ありません」 ――今回の動向について、きっと問い合わせがあったと思います。 挽野:そうですね、例えば報道を見たお客様から店頭へ「ルンバはどうなっているんですか」と質問をいただいたり、サポートセンターへの電話もありました。それらに対して一つ一つきっちりご説明を差し上げて「引き続き安心してお使いいただけます」といったお話をしています。 ――やっぱり長年のファンも多いですよね。 挽野:改めて、ルンバという商品に対する愛情を私は感じています。大丈夫ですかと心配いただくだけでも非常にありがたいことで、それをちゃんと私たちが責任を持って「大丈夫ですのでご心配なく」という会話をさせていただいています。 取引先様からも「引き続き応援するので、がんばってください」という応援のメッセージをいただいたり。これも非常に感動しました。 ――特に生活家電は「あって当たり前」な存在になりやすく、思い入れを持って使い続けられる製品やブランドはそう多くないと思います。 挽野:ルンバに名前をつけていただいているお客様も多いですし、生活家電を飛び越えた家族みたいな存在という方もたくさんいらっしゃいます。私たちはお客様に対して責任がありますから「家族をちゃんとサポートし続けます」というところは申し上げたいです。 ■ 競争激しいロボット掃除機市場とルンバの立ち位置 ――報道でも語られている通り、ロボット掃除機は家電業界の中でも競争が激しく、製品が進化するたびに注目されていると、家電メディアとしては感じています。 挽野:確かにここ数年、国内外でかなりプレイヤーが増えています。特に中国系のブランドがたくさんいろんな製品を出してきて市場が非常に賑やかになっているというのは確かです。 これは、市場が活性化してお客様にとって選択肢が広がるという意味で非常に良いことだと思っています。アイロボットはロボット掃除機の市場を盛り上げていく、世帯普及率を上げていくという意思で2017年に日本法人ができました。ルンバは今も業界のリーディングポジションとして、そういう責任があると思っています。 技術や性能において、しっかり掃除できる清掃力と、ルンバを使うことで時間にゆとりができたり、その時間をうみ出す“時産”ですね。それを提供することがロボット掃除機ルンバの、お客様にとっての最大のメリットであり、私たちの役目でもあります。 ――いまの中国メーカーの強みとしては「吸引力の高さ」「車の自動運転技術のような回避性能」など、高いスペックを前面に出している印象です。改めて、いまのルンバの強みはどこにあるでしょうか? 挽野:20年以上ロボットをやっていますので、もちろんスペックも大事ですし、そういったところはちゃんと見ていきます。一方でルンバは国内で600万台、グローバルで5,000万台という実績があって、お客様をサポートする体制も20年間続けています。皆さんのご自宅で動いているルンバが、より賢くなっていって成長していくというようなところがとても大事です。こうした実績と、使っていただく上でのサポートも含めた安心感。そこをしっかり今後もやり続けていきたいですね。 ■ ルンバとアイロボットはどう変わる? 次の新製品は ――報道の元となった米国本社の決算を見ると、決して楽観的ではいられないのも現状かと思います。アイロボットがこれから変わっていく部分も教えてください。 挽野:ルンバとして変わらない部分はたくさんありますが、実は変わる部分も多くあります。例えば昨年(2024年)5月に新しく初めて外部からCEOとしてゲイリー・コーエン(Gary Cohen/かつてTimex CEOやQualitor Automotive CEO兼取締役など歴任)が着任しました。 既にいろいろな施策を打ち出しており、主には3つあります。最初のポイントは製品の開発。ここは外部パートナーをもっと積極的に活用して、より早く競争力のある新製品をちゃんと出せるように開発作業を早めるというのを、昨年の1年間使ってやってきました。 2つ目は会社として厳しい意思決定ですが、人員の削減です。そして、3つ目はマーケティングの投資を見直して、会社を売上に合った収益構造にしていくために思い切ったアクションを起こしました。業績をしっかり改善するというロードマップを作り、成長路線への復帰に向けた活動が始まっています。 結果として特に新製品の開発の仕方を変えました。この新しい開発プロセスに基づいた製品は、既に北米、欧州でデビューしました。日本でも先日皆様にご案内していますが、正式発表は4月16日です。 挽野:この日、大規模な新製品の発表を予定していますので、この新しい開発体制のもとで、新しいルンバを展開します。ルンバもアイロボットも盤石です。ぜひご安心いただいて、発表にご期待ください。 ――公式サイトでは「ルンバ史上最大の新製品発表」と案内されていました。詳細は4月16日の発表を待つとして、いま教えていただける範囲で、何が「史上最大」でしょうか? 挽野:テクノロジーと、デザイン、ラインナップ。この3点ですね。 ――ラインナップということは、何かすごい1つの製品が出るというよりは、ルンバ全体として総合的にアップデートされるということでしょうか? 挽野:イメージは「総合力」です。いろいろな機種がある中で、エントリーからミドルから……と、まだはっきりとは言えませんが。 私もアイロボットで9年目になりますが、本当に最大です。新しいゲイリー・コーエンCEOとともに発表しますので、そこでぜひご覧いただきたいと思っています。

家電 Watch,中林 暁

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