【記者の目】なぜ西武は今井達也らのメジャー挑戦を容認したか…4年後の節目へ若獅子にかける

ポスティングシステムでの米挑戦が正式決定し報道対応する西武今井(撮影・金子真仁)

西武は10日、今井達也投手(27)に今オフのポスティングシステムでのメジャー移籍を容認すると発表した。

すでに高橋光成投手(28)への同システムの使用を5日に容認しており、同じ年に同一球団から2人の投手がポスティングシステムを利用するのはNPB史上初となる。

広池浩司球団本部長(52)は「難しい判断でした」とし「編成的な部分でも何とか整えて春を迎えたいと思います」と話す。

穴は深い。今季の2人合計での18勝はもちろん、年間311回2/3は簡単には解決できない。

重圧の1軍戦で計4829球を投げて奪った計935個のアウト。高卒ルーキーながら早くも1軍戦2試合に先発した篠原響投手(19)ら次代を担える若手は多くとも、この仕事を任せるには荷が重すぎる。

今季1軍戦で多く投げた現有戦力の成長や底上げを期待しつつ、新外国人投手やFA戦線での補強を目指すのが現実的となる。

まだ退団が正式に確定していないとはいえ、2人同時のメジャー挑戦での流出は異例だ。優勝や上位進出への可能性にも、大きく関わりかねない。

だが西武は決断した。米市場での高評価や、来オフにメジャーで予想されるロックアウトの問題もある。現地報道で200億円ともされる契約額となれば、西武への譲渡金は30億円以上に。来オフにロックアウト発生で移籍困難となれば、それもなくなる。

さらに球団のこの先を考えると、今が送り出す最後のタイミングと捉えることもできる。

4年後の2029年、埼玉・所沢を本拠地とする西武ライオンズとして50周年を迎える。

その2年後には、西鉄時代からのライオンズとして創設80周年を迎える。

今季はソフトバンクに8勝17敗、日本ハムに9勝15敗1分け。力負けも目立ち、首脳陣や選手も力量差を潔く認める。今井や高橋らが好投しながら援護に恵まれずに敗れた試合は、今季も何度もあった。現状で両チームより上に行くことは、決して容易ではない。

節目の時期は当然、球団としても「優勝」「常勝」が求められる。現在20代前半の選手たちに脂が乗っていることが、それらの絶対条件となる。

仮に今井らのメジャー挑戦が1、2年遅くなれば、この先1、2年での上位進出の可能性は高まる。

一方で、彼ら中心戦力が来季も西武で活躍すれば、5年先の主力を担うべき若手の出場機会は減る。実戦での成長機会が減り、2030年前後まで苦しい連鎖が続く可能性もある。

現在の選手層を踏まえ、どちらを選ぶか-。西武球団は熟考の末、若手たちの成長に未来をかけたと言える。

篠原や高卒2年目の成田晴風投手(19)、高卒育成1年目の冨士大和投手(19)は今季、それぞれの自己球速を一気に上げた。育つ土壌を証明した。

だからと言って、3年連続Bクラスの現状に無防備のままではいられない。勝利を求め、連日声をからすファンもたくさんいる。

チーム状況として「投高打低」が続く。広池本部長が「全体の得失点を考えた時に、失点を少なくするやり方も、得点を増やすやり方もあります」と話すように、野手強化も1つの手段になってくる。

すでに台湾・統一から海外移籍の希望を表明した強打者の林安可外野手(28)や、日本ハムからFA宣言した石井一成内野手(31)らの獲得調査を行う。ともにチームに不足する左打者だ。得点部門にもしっかり手を入れて来季へ備える。失った18勝を「きっと誰かがカバーしてくれるはず」という楽観視のままには、決してできない。【西武担当=金子真仁】

◆今井達也(いまい・たつや)1998年(平10)5月9日、栃木・鹿沼市生まれ。作新学院3年夏の甲子園では最速152キロをマークし、54年ぶり2度目の全国制覇に貢献。16年ドラフト1位で西武入団。24、25年に開幕投手。24年最多奪三振。23年アジアチャンピオンシップ、25年強化試合(対オランダ)で日本代表。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億8000万円。

▼西武から高橋に続き今井もポスティングシステムを使うことになった。同じ年に同一球団の複数選手が同制度を利用するのは、98年オフのケサダ、ペレス(ともに広島外野手)、20年オフの有原航平投手、西川遥輝外野手(ともに日本ハム=西川は不成立)に次いで3度目。投手2人は初めて。ポスティングシステム以外の移籍手段を含めると07年オフにロッテから小林雅英、薮田安彦の救援投手がそろってFA権により渡米したが、先発投手2人の例はない。

○…西武の広池球団本部長は「しっかり編成していきたい」と今後の補強へ意気込んだ。新外国人投手獲得や国内FAへの参戦が考えられる。9日には実績豊かなソフトバンク東浜がFA宣言したが「(資格ある選手)全てを調査しています。今の戦力を鑑みて、必要であれば我々も交渉に臨みたいと思います」と話すにとどめた。「得失点差を埋められるように」と野手補強にも着手する。

ポスティングシステム容認発表の今井達也「行くからにはワールドチャンピオンに」報道陣に対応


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ポスティングシステムでの米挑戦が正式決定し報道対応する西武今井(撮影・金子真仁)

西武は10日、今井達也投手(27)に今オフのポスティングシステムでのメジャー移籍を容認すると発表した。

すでに高橋光成投手(28)への同システムの使用を5日に容認しており、同じ年に同一球団から2人の投手がポスティングシステムを利用するのはNPB史上初となる。

広池浩司球団本部長(52)は「難しい判断でした」とし「編成的な部分でも何とか整えて春を迎えたいと思います」と話す。

穴は深い。今季の2人合計での18勝はもちろん、年間311回2/3は簡単には解決できない。

重圧の1軍戦で計4829球を投げて奪った計935個のアウト。高卒ルーキーながら早くも1軍戦2試合に先発した篠原響投手(19)ら次代を担える若手は多くとも、この仕事を任せるには荷が重すぎる。

今季1軍戦で多く投げた現有戦力の成長や底上げを期待しつつ、新外国人投手やFA戦線での補強を目指すのが現実的となる。

まだ退団が正式に確定していないとはいえ、2人同時のメジャー挑戦での流出は異例だ。優勝や上位進出への可能性にも、大きく関わりかねない。

だが西武は決断した。米市場での高評価や、来オフにメジャーで予想されるロックアウトの問題もある。現地報道で200億円ともされる契約額となれば、西武への譲渡金は30億円以上に。来オフにロックアウト発生で移籍困難となれば、それもなくなる。

さらに球団のこの先を考えると、今が送り出す最後のタイミングと捉えることもできる。

4年後の2029年、埼玉・所沢を本拠地とする西武ライオンズとして50周年を迎える。

その2年後には、西鉄時代からのライオンズとして創設80周年を迎える。

今季はソフトバンクに8勝17敗、日本ハムに9勝15敗1分け。力負けも目立ち、首脳陣や選手も力量差を潔く認める。今井や高橋らが好投しながら援護に恵まれずに敗れた試合は、今季も何度もあった。現状で両チームより上に行くことは、決して容易ではない。

節目の時期は当然、球団としても「優勝」「常勝」が求められる。現在20代前半の選手たちに脂が乗っていることが、それらの絶対条件となる。

仮に今井らのメジャー挑戦が1、2年遅くなれば、この先1、2年での上位進出の可能性は高まる。

一方で、彼ら中心戦力が来季も西武で活躍すれば、5年先の主力を担うべき若手の出場機会は減る。実戦での成長機会が減り、2030年前後まで苦しい連鎖が続く可能性もある。

現在の選手層を踏まえ、どちらを選ぶか-。西武球団は熟考の末、若手たちの成長に未来をかけたと言える。

篠原や高卒2年目の成田晴風投手(19)、高卒育成1年目の冨士大和投手(19)は今季、それぞれの自己球速を一気に上げた。育つ土壌を証明した。

だからと言って、3年連続Bクラスの現状に無防備のままではいられない。勝利を求め、連日声をからすファンもたくさんいる。

チーム状況として「投高打低」が続く。広池本部長が「全体の得失点を考えた時に、失点を少なくするやり方も、得点を増やすやり方もあります」と話すように、野手強化も1つの手段になってくる。

すでに台湾・統一から海外移籍の希望を表明した強打者の林安可外野手(28)や、日本ハムからFA宣言した石井一成内野手(31)らの獲得調査を行う。ともにチームに不足する左打者だ。得点部門にもしっかり手を入れて来季へ備える。失った18勝を「きっと誰かがカバーしてくれるはず」という楽観視のままには、決してできない。【西武担当=金子真仁】

◆今井達也(いまい・たつや)1998年(平10)5月9日、栃木・鹿沼市生まれ。作新学院3年夏の甲子園では最速152キロをマークし、54年ぶり2度目の全国制覇に貢献。16年ドラフト1位で西武入団。24、25年に開幕投手。24年最多奪三振。23年アジアチャンピオンシップ、25年強化試合(対オランダ)で日本代表。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億8000万円。

▼西武から高橋に続き今井もポスティングシステムを使うことになった。同じ年に同一球団の複数選手が同制度を利用するのは、98年オフのケサダ、ペレス(ともに広島外野手)、20年オフの有原航平投手、西川遥輝外野手(ともに日本ハム=西川は不成立)に次いで3度目。投手2人は初めて。ポスティングシステム以外の移籍手段を含めると07年オフにロッテから小林雅英、薮田安彦の救援投手がそろってFA権により渡米したが、先発投手2人の例はない。

○…西武の広池球団本部長は「しっかり編成していきたい」と今後の補強へ意気込んだ。新外国人投手獲得や国内FAへの参戦が考えられる。9日には実績豊かなソフトバンク東浜がFA宣言したが「(資格ある選手)全てを調査しています。今の戦力を鑑みて、必要であれば我々も交渉に臨みたいと思います」と話すにとどめた。「得失点差を埋められるように」と野手補強にも着手する。

ポスティングシステム容認発表の今井達也「行くからにはワールドチャンピオンに」報道陣に対応

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