スマートグラスからピザ用オーブンまで。CESで見つけた実用的な新製品10選
CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)が1月7日(米国時間)から正式に開幕した(10日まで)。CESは1月の最初の週にラスベガスを席巻する大々的な消費者向け家電製品の見本市である。今年も豪華なディスプレイや大規模な展示が並び、モビリティ、ウェアラブル、コンピューティング、スマートホーム、テレビ、パーソナルオーディオ、デジタルヘルスといった分野の実用的な新製品が数多く発表された。
この記事では注目すべき革新性と優れたデザイン、確かな実用性を備えた、お気に入りの製品を写真と共に紹介する。
Tristan deBrauwere
ガーミンの最新スマートウォッチ「Instinct 3」
ガーミンの「Instinct」シリーズの最新モデルだ! 最新モデルが出た! このウェアラブルデバイスは、ガーミンの最も人気のあるスポーツウォッチシリーズの最新モデルである。ガーミン製品のなかでもわたしのお気に入りであり、アウトドアスポーツ用のスマートウォッチとしても最高の一品だ。ガーミンは過去数年、このシリーズの新モデルを投入していない。ガーミンのInstinctシリーズはアウトドアは好きだが、高級ラインである「Fenix」シリーズの価格が高すぎると感じる人に最適である。
今回登場したInstinct 3は、より高価な兄弟モデルの要素をいくつかとり入れている。新しいアクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)ディスプレイと懐中電灯の機能を搭載したのだ。太陽光充電機能を備えたモデルのバッテリーは数週間持続するようになった。また、旧モデルのMIP(メモリインピクセル)液晶ディスプレイを搭載した、より低価格なモデル「Instinct E」もある。
それに心配しなくても大丈夫だ。Instinctの最新モデルは、わたしたちにとって馴染みがあり、大好きな「80年代のゴツいレトロなスタイル」を継承している(今回は明るい限定カラーも登場)。また、金属強化ベゼルや傷に強いディスプレイを備え、MIL-STD 810の基準を満たしている。つまり、温度と衝撃に関する厳しい試験に耐えたということだ。
わたし自身どうやったかはわからないが、屋外でロッククライミングしている最中にガーミンのスマートウォッチ「epix」のチタン製のベゼルに目に見えるほどの傷をつけてしまったことがある。だが、これなら気味の悪い蜘蛛がわらわらいる岩の穴に手を突っ込んでも大丈夫そうだ。—Adrienne So
Photograph: Tristan deBrauwere
Switchbotの多機能掃除ロボット「K20+ Pro」
ロボット掃除機は劇的に進化している。靴下を拾ったり、階段を登ったり、さらには食器洗い機が「侵入者がいる」と知らせたら、相手を追い払えるようになっているのだ。それだけではない。Switchbotの最新のモジュール式ロボットでは……正直、できないことを探すほうが難しい。
小型ロボット掃除機「K20+ Pro」はリモコンカーのように操作できるようになっている。そしてこの小さなロボットは単に部屋を掃除するだけでなく、Switchbotが「FusionPlatform」と呼ぶ独自の移動プラットフォームにさまざまなキットを追加することで、あらゆる作業に対応できる。
仕事中にペットに会いたい? ペット用カメラをとり付けて、驚く愛犬や愛猫を追跡することができる。スタンドにタブレット端末を設置してヨガの動画を見ることも可能だ。さらには、そうそう、空気清浄機の上にトレイを載せて、ビデオゲームをしている友達の元にビールを運ぶことだってできる。これなら、おならとともに放出されたビールのガスさえもきれいになる。また、軽量コードレス掃除機と空気清浄機がセットになった「Omni Clean」キットと組み合わせることも可能だ。掃除するだけのロボット掃除機なんて、もう時代遅れだ。—Adrienne So
Photograph: Tristan deBrauwere
スマートグラス「Halliday Glasses」
スマートグラスが大流行しており、各企業は自社製品を目立たせるために工夫をしなければならない。Hallidayというスタートアップは、スマートグラスに興味をもつ人々に魅力を感じてもらえるよう、テクノロジーを満載した新しいレンズを開発している。
Halliday Glassesのイノベーションは、フレームに埋め込まれた隠しディスプレイにある。このディスプレイは着用者の目にデジタル画面を投影し、視界の右上の隅に四角形の小さな表示が現れるようにする。ここにテキストメッセージ、地図のナビゲーション、メディアの制御機能が表示されるというわけだ。
音声コマンドを使用して内蔵されたAIエージェントとやりとりすることも可能だ。HallidayはこのAIシステムを「プロアクティブAI」と呼んでいる。これにより、利用者が許可した場合に限り、ユーザーの日々の行動を観察し取得した情報を要約・学習することで、ユーザーが次に何をしたいかを事前に提案できるようになる。
Hallidayのスマートグラスの優れている点はフレームだけではない。この製品には、スマートグラスの機能を制御するスマートリングも付属している。これは顔の前で手を振るようなジェスチャー操作を避けるための工夫だとHallidayは説明する。スマートグラスのバッテリーの持続時間は約12時間で、1日使用しても問題なさそうだ。価格は489ドルだが、先行予約をした場合に限り、発売日だけの特別価格369ドルで購入できる。—Boone Ashworth
Photograph: Tristan deBrauwere
BioLiteの家庭用バックアップ電源「Backup」
停電が頻繁に発生する地域に住んでいるだろうか? もしそうなら家庭用の非常用電源が必要かもしれない。しかし、施工業者に高額な費用を支払いたくない、あるいは大きくて扱いにくいガス発電機をガレージに置きたくないと思う人もいるだろう。
BioLiteのBackupは簡単に言えば、大きな薄型の蓄電装置だ。この製品は石膏ボード用アンカーを数個使って冷蔵庫の裏にとり付けることができる。Backupを一般的なコンセントに接続したら、主要な家電製品(冷蔵庫を推奨)をBackupをつないで使用する。電気が通じている平常時、電気はBackupを通過するが、停電になるとBackupが自動で作動する。また、モバイルアプリを通じてプッシュ通知が送られる。BioLiteは1.5KWh対応版(15~30時間の電力供給が可能)と、3.0KWh対応版(30~60時間の電力供給が可能)の2種類を用意している。ただし、電力供給が可能な時間は家電製品の大きさや電力需要によって異なる。
電力の容量を最大10.5KWhまで拡張したり、ソーラーパネルやとり付け金具、延長ケーブルなどのアクセサリーと併用したりすることも可能だ。現在予約を受け付けており、価格は2,000ドルからで、2025年5月に出荷を予定している。—Adrienne So
Photograph: Tristan deBrauwere
健康チェックができるスマートミラー「Omnia」
デジタルヘルス企業Withingsは今年「Omnia」を披露した。これは一般消費者向けの製品ではなく、同社が「コンセプト作品」と位置づけているものだ。木製のプラットフォームの上に立つと、それとつながっている等身大の反射型ディスプレイに、Withingsが提供するすべてのデバイスを通じて収集されたユーザーのデータが表示される。体組成、心電図(ECG)、安静時心拍数などの情報が画面に映し出されるのだ。情報はすべて美しい鏡面インターフェイスに表示される(口紅を塗るのに鏡を使っている人もいた)。さらに、AI音声アシスタントが健康増進に向けた具体的な計画を立てる手助けをしてくれる。
一般販売を目的としたものではないが、現在消費者が直面している医療にまつわる問題の一部を反映した製品である。米国では現在、医師の診察を受けることが非常に難しい。従って、自分の健康データをすべて把握しているコンピューター医師が常駐する大きな鏡を自宅のバスルームに置くというのは合理的な解決策に思える。Withings、この開発を急いでほしい! シャワーの横に設置したい! —Adrienne So
Photograph: Tristan deBrauwere
電動スキー「E-Skimo」
テクノロジー業界はこれまでに、ほぼあらゆる交通手段の電動化において素晴らしい成果を上げてきた。電気自動車、電動自転車にはじまり、電動スクーターや電動スケートボード、さらには電動ローラースケートまで登場している。しかし、電動スキーとは? これは初耳だ。
E-Outdoorが開発した「E-Skimo」はスキー板にとり付けるゴム製のキャタピラーと軽量バッテリー、手持ちコントローラーを使った高度な動力システムである。これにより、山を登るときやクロスカントリースキーをするときに推進力を得ることができるのだ。
E-Skimoを使えば、自力で動くよりも斜面を80%速く移動でき、体力の消耗を30%軽減できると同社は説明する。山頂に到着して滑る準備が整ったら、約60秒でE-Skimoをとり外してバッグに収納し、自由な滑走を楽しめる。現在、E-Skimoはこの技術を市場に投入するため、有名なスキーブランドとの提携を目指し活動中だ。続報に期待したい。—Verity Burns
Tristan deBrauwere
Soundcoreのオープンイヤー型イヤフォン「AeroClip」
最新のトレンドを知らない人のために説明すると、いまやオープンイヤー型イヤフォンはコロラド人にとってのスキー板のような存在だ。つまり、誰もが1つはもっているのだ。Soundcoreの最新モデル「AeroClip」は、C30iのような以前のモデルよりも柔軟性が高く、より高級感があるが、その分価格も上がっている。湾曲した設計のイヤフォンはコンパクトなケースにすっきりと収まる。装着感は軽く、短い時間試しただけだが、比較的快適だと感じた。その秘密は、TPU(熱可塑性ポリウレタン)と呼ばれるマットなプラスチックのような素材で覆われた薄いチタン製ワイヤーにある。
音質の第一印象は明瞭で心地よく、タッチコントロールもかなり反応がよいと感じた。価格は130ドルで手ごろとは言えないが、耳を塞がず快適さを保てるイヤフォンのなかでも気に入っているボーズの「Ultra Open Earbuds」に比べると控えめな価格設定である。AeroClipは米国では1月8日から予約受付を開始し、3月13日から出荷する予定だ。—Ryan Waniata
Photograph: Tristan deBrauwere
ピザ用スマートオーブン「Model P Smart Pizza Oven」
ピザ用の電気オーブンを試してきた年月のなかで最も衝撃を受けたことのひとつは、あまりに多くの人がただ怖いがためにこの種の製品を使おうとしないことだ。ピザ用電気オーブンを使ったことがない人が尻込みする気もちもわかる。ベトベトに汚れたり、いろいろなものが燃えそうになるから(例えば、指とか)。
そこでCurrent Backyard提供するピザ用のスマートオーブンには、アプリを通じて操作できるスマートな制御機能が搭載されている。そしてこのアプリには生地の厚さやソースの量、トッピングなどに応じて調理時間と温度を自動で調整する「Pizza Build Calculator」という機能が備わっている。また、このスマートオーブンには冷凍ピザ用を含む5つの調理モードが搭載されている。さらに独自のアルゴリズムによってオーブン内の各箇所に熱を循環させることで、ピザの中央までしっかりと焼き上げることができる。このスマートオーブンは屋内外どちらでも安全に使用できるので、雨が降る冬の晩にピザを楽しみたいときでも寒い思いをする心配はない。
最高温度は850°F(約454℃)に達し、これまで見たなかで最も高温に達する電気式オーブンだ。ただし、ピザづくりの初心者にはこの温度での使用はおすすめしない。夕食がチーズの香りがする炭になってしまうだろう。—Adrienne So
Photograph: Tristan deBrauwere
iFixitのはんだごてと修理用ツールキット「Pro Tech Go」
自分で物を修理するのが好きなら、iFixitが提供するさまざまなツールやハウツーガイドについてすでによく知っているかもしれない。昨年、同社が発表した「FixHub Power Series Portable Soldering Station」はUSB-C電源対応、細部まで修理可能な設計、そしてウェブインターフェイスで制御できるという21世紀にふさわしいはんだごてだった。しかし、この製品は人々を驚かせると同時に失望もさせた。iFixitは今年、このプラットフォームをいくらか更新している。いま予約注文すれば、4月に最終版の製品が届く予定だ。すべてが揃ったキットの価格は250ドルである。
また、新しいツールキットも登場した。わたしはiFixitが提供している、小型電子機器の修理用ツールキットのなかで最も充実した「Pro Tech」ツールキットをとても気に入っている。これには64種類のビットが入ったドライバーセットや豊富な種類のピンセット、オープニングツール、外装をこじ開けるための工具が含まれている。ただし、このPro Techキットは少々大きい。巻いて小さくしてもバッグのなかで弁当よりも場所をとってしまうのだ。
iFixitの優秀なチームはこの問題に気づき、「Pro Tech」をよりコンパクトで持ち運びやすいよう縮小した新しいツールキット「Pro Tech Go」を開発した。この新キットをつくるにあたり、iFixitは顧客調査を実施し、最も使用頻度の高いツールだけを厳選している。Pro Tech Goには32種類のビットが入ったドライバーキット(最もよく使われるビットを厳選)、2本のピンセット、2本のスパッジャー、そしていくつかのオープニングツールが含まれている。価格も手ごろで、わずか50ドル(約7,906円)だ。素晴らしい変更である! —Michael Calore
Photograph: Tristan deBrauwere
子ども用スマートウォッチ「Pinwheel Watch」
テクノロジーは素晴らしい一方で、子どもたちに過剰に、または早すぎる段階で触れさせることはよくないという認識が広がりつつある。Pinwheelはこの数年で、子どもや10代の若者向けスマートフォンの先駆者として知られるようになった。親と子どもがどこにいても連絡をとれる手段を提供しつつ、ソーシャルメディアやインターネットの危険な世界から子どもたちを守れる製品を提供してきたのである。そして今回、同社は同じコンセプトに沿ったスマートウォッチを発売する。
7歳から14歳の子どもを対象としたPinwheel Watchは、スマートフォンを完全に置き換えることを目的としている。このデバイスは、テキストメッセージの送受信や通話に加え、ゲームや写真撮影機能を備えている。ただし、インターネットには接続できず、InstagramやTikTokのような承認されていないアプリも利用できない。また、子ども向けAIエージェント「PinwheelGPT」を搭載しており、子どもたちの質問に対して年齢に適した回答を生成する。これは物議を醸すような内容には触れず、大人に相談するよう子どもを促す設計になっているので、親も安心できるというわけだ。
親用のダッシュボードでは、子どもがした質問をすべて確認できるほか、GPSによる位置情報の追跡や連絡先の管理、さらに子どもが自宅にいるときと学校にいるときでモードを切り替えられる機能が備わっている。このスマートウォッチは今後数週間以内に発売される予定だ。価格は159ドル(約25,142円)で、親用のダッシュボードと通信サービスの利用には月額15ドル(約2,371円)のサブスクリプション登録が必要となる。—Verity Burns
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)
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