マーク・ザッカーバーグが「ソーシャルメディアは終わった」と発言

ネットサービス

アメリカ連邦取引委員会(FTC)は2020年12月にMeta(当時Facebook)を独占禁止法違反の疑いで提訴しています。この裁判の中で、Metaの創設者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が「ソーシャルメディアは、以前ほどソーシャルではなくなってきている」と発言したことが報じられました。

Mark Zuckerberg Says Social Media Is Over | The New Yorker

https://www.newyorker.com/culture/infinite-scroll/mark-zuckerberg-says-social-media-is-over

FTCはMetaによる2012年のInstagram買収、および2014年のWhatsApp買収を、Metaが独占的地位を守るために競争相手をつぶす目的で行ったものだったと主張して訴訟を起こしています。訴訟は2021年6月に一度却下され、8月に修正訴状とともに再提起された結果、Metaが2022年1月と2024年4月に訴訟却下の申し立てをした後も継続され、2024年11月にコロンビア特別区地方裁判所の判事が訴訟の進行を承認しました。

「MetaによるInstagramとWhatsAppの買収はライバルつぶし」とFTCがMetaを訴えた訴訟の進行を連邦地裁が承認 - GIGAZINE

The New Yorkerの報道によると、ザッカーバーグ氏は裁判の冒頭陳述で「ソーシャルネットワークとは、そもそも何をするものなのでしょうか。それは、友人たちが投稿したコンテンツを見て楽しむデジタル上の集いの場など、人々をオンラインでつなぐウェブサイトを指していました。しかし、この10年の間で、ソーシャルメディアは、従来のメディアにより近いものへと姿を変えてきました。今では、著名人によるプロモーション動画や、時事問題に声高に意見を述べる評論家たちの投稿、ポップカルチャーの切り抜き、さらにはAIによって大量生産された質の低いコンテンツなどが流れ込む場所となっています。それらのコンテンツは、できるだけ多くの視聴者に向けて発信されることを目的としています。彼らの投稿するメッセージは、いまや広大なデジタルの干し草の山に埋もれた一本の針のように感じられます。ソーシャルメディアは、かつてのような『ソーシャル(社交的)』なものではなくなってしまったのです」と語ったそうです。 ザッカーバーグ氏のこの発言は、裁判において「ソーシャルメディアの定義」が争点となっていることに関係しています。FTCは「Metaが、『個人向けソーシャルネットワーキングサービス業界』で違法な独占を維持していた」と主張している一方で、MetaはInstagram、Facebookと合わせてTikTok、YouTubeなどのロゴを示しつつ「ソーシャルメディアそのものが2020年頃のような形では存在しておらず、あらゆる種類のコンテンツのデジタル消費が非常に普及しているため、単一の企業やプラットフォームがそれを独占しているとは言えない」と反論しています。しかし、FTCはTikTokやYouTubeを「個人向けソーシャルネットワーキングサービス業界」の競合とは定義していません。

FTCが裁判で指摘したように、ザッカーバーグ氏は2018年の時点で当時のFacebook幹部に「Instagramは、一連の買収に伴う独占禁止法違反の疑いでFacebookの成功を潜在的に損なっているため、命令に先んじてInstagramを分離させる方が良いかもしれない」というメモを送っていました。これによりMetaが買収に伴う独占状態を認識していたと考えられますが、ザッカーバーグ氏による冒頭陳述の通り、InstagramやWhatsAppが買収された頃からは10年以上が経過し、ソーシャルメディア業界は大きく変わっています。そのためThe New Yorkerは「FTCは、より新しく大きな問題が出現しつつある中で、古い問題を追いかけているのかもしれません」と述べています。

Metaのマーク・ザッカーバーグCEOが2018年にInstagramの分離を検討していたことが明らかに - GIGAZINE

テクノロジーアナリストのベネディクト・エバンズ氏は「FTCによるソーシャルメディアの定義は、選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りするゲリマンダーのようです。FTCの定義によればTikTokはFacebookと全く競合していないためMetaは独占的地位にいます。それならば、MetaがTikTokを買収しても問題ないのでしょうか」と指摘しています。 またFTCは、買収に伴うMetaの独占状態がイノベーションの欠如と消費者の選択肢の減少につながったと主張し、「市場競争によって特徴、機能性、健全性、そしてユーザーエクスペリエンスの向上がもたらされる」と述べています。一方でザッカーバーグ氏の証言によると、WhatsAppの創業者たちはMetaが促したような改革と急成長をまったく望んでいなかったそうです。そのため、新機能が追加されたり買収前後でユーザー数が約5億人から20億人を超えるまで増えたりといった成長は、FTCが主張する「買収によるイノベーションの欠如」には当てはまらない可能性があります。

MetaとFTCの訴訟は、トランプ政権の意向も関係してくると考えられています。Metaはプラットフォーム上に投稿される情報が正しいか否かを判断するための独立機関によるファクトチェックを、2025年4月7日にアメリカ国内限定で正式に終了していますが、これはドナルド・トランプ氏の大統領就任による情勢の変化をにらんでの方針転換とみられていました。ザッカーバーグ氏は繰り返しホワイトハウスを訪問し、政権にMetaの友好度をアピールしていますが、トランプ大統領はMetaに対する訴訟を支持し続けています。

・関連記事 Metaのマーク・ザッカーバーグCEOが2018年にInstagramの分離を検討していたことが明らかに - GIGAZINE

Facebookが独禁法違反で起訴される、InstagramやWhatsAppの売却要求も - GIGAZINE

Instagramの広告収益はYouTubeよりも多いことがMetaの裁判で提出された書類から判明 - GIGAZINE

「MetaによるInstagramとWhatsAppの買収はライバルつぶし」とFTCがMetaを訴えた訴訟の進行を連邦地裁が承認 - GIGAZINE

Metaの反トラスト法訴訟に巻き込まれたVR新興企業が「競合相手でも何でもないので放っておいてほしい」と不満を漏らす - GIGAZINE

関連記事: