米連邦判事、USAID解体の差し止めを命令

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米メリーランド州の連邦地裁は18日、ドナルド・トランプ政権がアメリカ国際開発庁(USAID)を閉鎖しその事業を停止し続けることを差し止めた。

連邦地裁のセオドア・チュアン判事は判決で、トランプ大統領の側近イーロン・マスク氏が主導する「政府効率化局(DOGE)」によるUSAID解体は、「さまざまな形で」合衆国憲法におそらく違反すると述べた。

チュアン判事は、USAID職員が同機関のコンピューターおよび支払いシステムに、再びアクセスできるようにするよう、DOGEに命令した。これには、休職処分になった職員も含まれる。

判事はさらに、USAID職員の解雇を停止するよう命令した。ただし、すでに休職処分になっている職員の復職は命じなかった。

この判決は、USAID職員26人が原告となった訴えに対するもの。2月13日に提起された訴えでは、名前が公表されていないUSAID職員たちが、マスク氏が「無謀な焼き討ち」のような形で連邦政府のさまざまな省庁を解体し続けていると主張している。

原告の弁護団は、マスク氏は連邦政府の役職に正式に指名されたわけではなく、連邦議会上院の承認手続きも経ていないため、同氏の権限は不当だと主張。DOGEの活動停止と措置の撤回を求めている。

トランプ大統領は今年1月にホワイトハウスに復帰すると、対外援助の90日間凍結を命令した。マスク氏はその直後にUSAIDを「閉鎖する」と表明した。

職員26人の提訴に対してマスク氏とDOGEは、マスク氏の役割はあくまでも助言に過ぎないとする書面を裁判所に提出している。

これに対してチュアン判事は、マスク氏とDOGEがUSAIDに対して権限を行使し、それによって「合衆国憲法に複数の形でおそらく違反した」と判断した。さらに、マスク氏とDOGEの行為が、「原告だけでなく公共の利益も損なう」と指摘した。

この判決がUSAIDの活動にどのような影響を与えるのかは、不透明な状態。政権関係者によると、すでにUSAIDの活動の80%以上が停止されている。

トランプ政権は18日の判決を批判している。 ホワイトハウスのアナ・ケリー報道官は「ならず者の裁判官たちが、トランプ大統領の政策遂行を阻止しようとして、アメリカ国民の意思を覆そうとしている」と述べた。その上で報道官は判決を「誤審」と呼び、控訴すると表明した。

原告となったUSAID職員の代理人で民間団体「国家民主主義擁護者基金」を代表するノーム・アイゼン弁護士は、「マスク氏とDOGEの違法性に反撃する画期的なもの」だと判決を歓迎した。

「(マスク氏たちは)メスの代わりにチェーンソーで手術をするような行為を繰り返している。USAIDが支援する人々だけでなく、安定した政府を必要とする大多数のアメリカ国民に危害を加えている」とアイゼン弁護士は述べた。

これを受けてトランプ大統領がボアズバーグ判事の弾劾を求め、それに対して連邦最高裁のジョン・ロバーツ長官が大統領をたしなめるという、異例の事態になっている。

ホワイトハウスやアメリカの保守派の間では、各地の下級裁判所の判事たちが権限を逸脱して大統領命令を遅らせたり差し止めたりしているという認識にもとづき、いらだちが募っている。アメリカでは、ひとつの州の連邦判事による決定が、その政策の施行を全国的に差し止めることができる。

アメリカではこれまで共和党か民主党かを問わず、大統領の政策をひとりの連邦判事が全国的に差し止められる権限について、ホワイトハウスはしばしば抗議してきた。連邦判事のそうした権限を疑問視する政権もあった。トランプ政権が、この行政府と司法府の対立に何らかの終止符を打とうとするのか、注目されている。

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