白く光る伝説の海「ミルキー・シー」とは何なのか? 400年の記録から見えたことと深まる謎
ミルキー・シーはあまりに珍しく、その研究はほぼ不可能だ。科学者が「船を同じ場所に停泊させ、希望と祈りを込めてじっと待つ」ことはできないとハドソン氏は言う。 唯一知られている写真は、2019年にインドネシアのすぐ南を航行していたプライベートヨットが撮影したものだ。乗組員は、ミラー氏が学術誌「Scientific Reports」に発表した2021年の論文を読むまで、自分たちが何を目にしたかを知らなかった。 「これを目撃するには強運が必要です」と英プリマス大学でプランクトンの生態を研究するアビゲイル・マクオーターズ・ゴロップ氏は言う。
この現象はとても広範囲に及ぶことが判明した。 「ミルキー・シーは10万平方キロに達することもあり、何カ月も続くことがあります」とハドソン氏は言う。 ハドソン氏らのデータベースによれば、ミルキー・シーは通常、1万平方キロに及ぶ。ただし、人工衛星にとっても、人にとっても、大きなミルキー・シーは目立つため、データが偏っている可能性はある。「面積が大きいほど、そこを船で通過する可能性は高くなります」とハドソン氏は述べている。 データベースによれば、ミルキー・シーは主にインド洋北西部とインド洋と太平洋の間にある熱帯の海域「海洋大陸」で起きているようだ。 世界規模の気候パターンがミルキー・シーの発生に何らかの役割を果たしている可能性もわかった。 夏には「ラニーニャ現象の後、予想より多くのミルキー・シーが発生します」とハドソン氏は説明する。冬には、インド洋の西部で海水温が高くなる時期に、より多くのミルキー・シーが発生する。 ミルキー・シーはモンスーンの強さと関連している可能性もある。強いモンスーンが湧昇流を引き起こし、深海から栄養豊富な水が湧き上がると、食物連鎖の「爆発的増加」が起きるとハドソン氏は説明する。 データーベースを使って、これらの現象の複雑な相互作用が明らかになれば、ミルキー・シーの予測、さらにはサンプリングさえも可能になるかもしれない。 現在のところ、ミルキー・シーは依然として謎に包まれている。「まだ十分に理解していないため、どれほど重要なのかさえわかりません」とハドソン氏は話す。 この珍しい現象の増加は、海の健康状態が悪いことを示唆している可能性さえある。「私たちがミルキー・シーの原因と考えている細菌は、魚を死滅させる種として知られています」とハドソン氏は言う。 もしこれが事実であれば、ミルキー・シーが増えたとき、世界中の漁業や経済が打撃を受けるかもしれない。ハドソン氏は次のように述べている。「海はよく目立つ形で警告を発しているのです」
文=Melissa Hobson/訳=米井香織