惑星探査機「ベピ・コロンボ」、最後のスイングバイで撮影した水星のクレーター

Image: ESA

過去には、ミッキーやクッキーモンスターみたいなクレーターも発見されてます。

国際水星探査計画「ベピ・コロンボ(BepiColombo)」がスイングバイ(宇宙探査機が天体の重力を利用して減加速する技術)でモニタリングカメラ(M-CAM)が撮影した、水星の画像が公開されました。

ミッション全体としては9回目、水星では6回目。最後となるスイングバイでも、水星の美しい姿を捉えてくれました。

水星の明るい場所と暗い場所

欧州宇宙機関(ESA)とJAXAの共同ミッションであるベピ・コロンボ。今回のスイングバイでは、日本時間2025年1月8日14時59分、水星に再接近しました。

そしてベピ・コロンボは、水星の夜側の表面からわずか295キロ上空を飛行。その約7分後、水星の北極上空を直進し、1枚目の画像を撮影しました。

Image: ESA

まずM-CAM1が撮影したのは、水星の北極周辺。“ターミネーター”と呼ばれる昼夜の境界線に沿うようにして、4つのクレーターが並んでいます。一番大きい「プロコフィエフ・クレーター(Prokofiev crater)」の直径は約112kmです。

Image: ESA

これらのクレーターは“永久影”に覆われています。そのため、水星は太陽に最も近い惑星であるにもかかわらず、この画像が捉えたエリアは太陽系でもっとも寒い場所のひとつとなっています。

Image: ESA

2枚目はその約5分後、またしてもM-CAM1が撮影しました。水星の北極より左側に広がるエリアです。

1枚目と比べると、全体的に表面がつるっとのっぺりした印象。宇宙船の上あたりに見える「メンデルスゾーン・クレーター(Mendelssohn crater)」とその周囲に広がる「ボレアリス平原(Borealis Planitia)」は、水星でもっともなめらかな平原と言われていて、約37億年前に粘性の低い溶岩の噴火によって形成されたと考えられています。

画像の左下にちらっと見えるのは、水星最大の衝突クレーターである「カロリス盆地(Caloris basin)」です。その直径は1,500 kmを超えます。

Image: ESA

そのカロリス盆地の少し上に、ブーメラン型の溶岩流が見られます。画像上で“bright lave flow(輝く溶岩流)”と示されている箇所です。

この溶岩流は、その下にある深いトラフとつながっていると思われます。その色は、カロリス盆地やボレアリス平原の溶岩と似ているようですが、この溶岩がカロリス盆地に流れ込んだのか、それともカロリス盆地から外に流れ出たのか?という疑問もベピ・コロンボが解明しようとしている謎のひとつです。

Image: ESA

3枚目は、M-CAM2が撮影しました。画像に写る水星上側の縁に見えるのは「ナサール白斑(Nathair Facula)」。ESAによると、この火山の噴出口は直径が約40kmで、大規模な噴火が少なくとも3回起きたとされています。

一見すると、水星は月に似ているように見えますが、クレーターのある表面が反射する光は月の3分の2程度と、水星は驚くほど暗い惑星でもあります。

Image: ESA

その因果について、科学者もまだ正確にはわかっていないようですが、水星表面の物質は風化作用によって時間が経つほど暗くなっていくのだとか。左下に見えている「フォンテイン・クレーター(Fonteyn crater)」は、白く明るく写っていますね。比較的最近形成された新しいクレーターであることは間違いなさそうです。このクレーターが誕生したのは、約3億年前と考えられています。

メインミッションはこれから

2018年10月20日に打ち上げられて以来、数々の美しい宇宙の姿を撮影してくれたベピ・コロンボのスイングバイ。最後となった今回、2026年後半に水星周回軌道に乗せるために必要な最後の“重力アシスト操作”を無事、完了しました。次に水星を訪れた探査機は、いよいよ周回軌道に入ることになります。

これによりM-CAMが取り付けられている宇宙船モジュールは、2026年後半に水星の周回軌道に入る前に、ミッションの2つの周回衛星(ESAの水星惑星探査機とJAXAの水星磁気圏探査機)から分離される予定です。M-CAM、ありがとう!

なお、これまでM-CAMが撮影した画像はすべて「Planetary Science Archive」から見られますよ。

Source: ESA

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