AIでノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏のスピーチ : 読売新聞

急速に進化する人工知能(artificial intelligence, AI)は、2024年のノーベル化学賞と物理学賞で主役の座を占めた。そのうち、化学賞を受賞した英国のデミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏のスピーチに挑戦しよう。動画は、Nobel Prize とハサビス氏の名前で見つかる。

(抜粋)  “It’s been an amazing few days. I’m going to talk about AlphaFold, of course, and the impact it’s had so far. But I’m also going to touch on the critical work we did in the lead-up to developing AlphaFold, and where I think the future of AI for science is going more broadly.  “So, my journey to AI actually started surprisingly with games, and specifically, chess. I started playing chess when I was 4 and played very competitively, captaining many of the England junior chess teams growing up.”
(和訳)  この数日は素晴らしいものでした。これからお話するのは、もちろんアルファフォールドのこと、それが今まで与えた影響についてです。また、この開発過程での重要な作業や、科学分野での AI がより広い意味でどうなっていくかについても触れるつもりです。  さて、私の AI に至る道のりは、意外かもしれませんがゲーム、具体的にはチェスから始まりました。4歳の時に始め、大きくなると競技としてもチェスをするようになり、イングランドのジュニアチームで何回も主将を務めました。

4歳で始めたチェス

 ハサビス氏は、AI 開発で名高い英グーグル・ディープマインド社の最高経営責任者(chief executive officer)。生物の体を形作るたんぱく質の構造を予測する AI モデル AlphaFold を開発し、他の2人と共にこの年の化学賞に選ばれた。

 昨年12月、授賞式のためにストックホルムを訪ねたハサビス氏は、そこでの数日間をたたえ、すぐに話す内容の説明に入った。このシリーズでは、1. AI との出会い 2. ゲームと AI の関係 3. たんぱく質を扱うAlphaFold の役割 4. 科学分野における AI の未来、に分けて読んでいこう。

 so far は「これまで」という意味。日本語から浮かぶのは until now かも知れないが、口語では言いやすい so far が多用される。仕事などの進み具合を聞かれて So far, so good.(今のところ、まあまあだね)などと言うと、米国出身の同僚は教えてくれた。

 critical は「批判」や「重要」など、関連性がないように見える訳語が当てられている。由来を調べてみると、真実を見分ける力、判断を下す知識や能力などの意味があり、日本語の「分別」に近いようだ。また、教育やビジネスで重視される critical thinking は自分で考えて答えを出すことで、これも概念は共通していると同僚は解説してくれた。

 captain は動詞ではキャプテンを務めること、チームを率いることを意味する。lead の言い換えとして覚えておこう。

 最初は話をなるべく楽しくしようと、ハサビス氏は、真剣な表情でチェス盤に向かう9歳の自分の写真を披露し、 “when you play chess seriously at such a young age, it’s a very formative experience”(幼少期に真剣にチェスをすることは、人間形成に大きな影響を与える経験となります)と話す。formative は、単語に含まれる form(形、形作る)から意味を想像しやすい。

 では具体的にどのような影響だったのだろう。

 “It really got me thinking about thinking itself. I was sort of fascinated, intrigued by how does our mind come up with these ideas, these plans…”  (チェスを通して、考えることとは何かを考えるようになりました。興味をひかれたのは、我々の頭脳はどのように、色々な発想や計画<中略>を考えつくのかということでした)

 get somebody … ing something は、誰かに何かをさせることで、日本語にはあまり見られない構文だが、英語では直線的に流れ、すっきりしている。自然に使えるよう慣れておこう。

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