トランプ大統領が公約する相互関税、その意味と機能とは-QuickTake

目玉施策」を打ち出すと約束したトランプ米大統領は13日、世界の貿易相手国との通商関係を再編しかねない相互関税の導入を政権に指示する措置に署名した。多くの国々からの輸入品に最終的により重い関税が賦課されれば、米国でインフレが加速し、他国で経済活動が停滞するリスクがある。トランプ大統領が次期商務長官に指名したハワード・ラトニック氏は、相互関税導入案は4月1日までに準備できると述べた。

相互関税とは?

  「相互」という用語は貿易の文脈で使用される場合、二国間貿易の公平性を確保するため当事者双方が講じる措置を指すのが普通だ。ここ数十年間では通常、貿易障壁の引き下げを意味してきた。米国では1934年の互恵通商協定法が米国の保護主義の時代の終わりを告げるものとなり、米国とパートナー諸国による互いの産品に対する関税引き下げ交渉を可能にした。

Source: US International Trade Commission, Bloomberg Economics

  トランプ氏と顧問らは、多くの貿易相手国が自国の輸出業者を米企業より競争優位に立たせているため、米国の製造業が犠牲になっていると主張する。トランプ政権1期目に、ロス商務長官(当時)は、貿易相手国の関税率に合わせる形で米国の税率を引き上げるよう提案した。ロス氏はその「理想的な」貿易システムの下では、米国が税率を引き下げるのは他国がそうした場合だけになると説明していた。

相互関税はどう機能するのか?

  ホワイトハウスが配布した文書によると、新たな輸入関税は貿易相手国ごとにカスタマイズされる。米国産品への貿易相手国の関税だけでなく、米国の製造業者を不利な立場に追い込むと見なされる要因、例えば、不公平と判断される企業補助金や規制、付加価値税(VAT)、為替レート、知的財産保護の不備などを相殺することが目標となる。

  こうした「非関税障壁」は数値化が難しいため、国ごとに新たな課税を提案する役割を担う米通商代表部(USTR)や商務省にとって、非常に大きな課題となる。

  相互関税はさまざまな方法で課すことが考えられる。特定の製品や業界全体だけでなく、特定の国から輸入される産品の平均関税としても適用することができる。

  理論的には、相互主義の観点から、米国は場合によっては関税を引き下げることも可能だが、トランプ氏の保護主義的スタンスを考えると、それはなさそうだ。

相互関税はトランプ氏の当初の一律関税案とどう異なるのか?

  昨年の大統領選でトランプ氏は中国以外の国からの輸入品に20%の一律関税を課す構えを見せていた。そもそも、中国からの輸入品には60%の関税を課すと脅していたが、その後10%の追加関税を発動した。相互関税の政策では、各貿易関係の詳細に合わせたものとなることから、米企業にとって障壁が少ない国などは特に大幅に免除される可能性がある。

特に打撃を受ける国は?

  米国産品に最も高い関税を課している国に対して米国がそれに見合う関税をかける場合、新興国が最大の痛手を被る。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)が米国と貿易相手国の関税率を比較したところ、インドとアルゼンチン、アフリカと東南アジアの大部分が最も影響を受ける。

  しかし、トランプ政権が貿易の「公平性」に関してより一般的な定義を検討していることを考えると、世界の多くの国が影響を受ける可能性がある。米国は全体として貿易赤字を抱えている。トランプ氏はこの不均衡を根本的に不公平だと捉えており、米国産品が他国で販売される際に課されるVAT、特に欧州連合(EU)の15%のVATを繰り返し批判している。日本にもVATに相当する消費税がある。

Source: UNCTAD TRAINS, Office of the United States Trade Representative

交渉の余地はあるか?

  これまでの例からみて、トランプ氏はまずショックを与え、次に交渉を行うことを好む傾向がある。1期目にトランプ氏は、関税の影響を受ける国内産業からのロビー活動を踏まえ、一部の国や輸入品に対する関税免除措置を講じた。トランプ氏は今月初め、国境での不法移民や麻薬の流入阻止策の強化にメキシコとカナダが応じたことから、両国からの輸入品への25%の関税適用を延期した。

  それでも、トランプ氏が2期目に貿易面でより強硬な姿勢を取る可能性を示す兆候はある。同氏は全ての国に課す計画の鉄鋼・アルミニウム関税について、オーストラリアを適用除外にする可能性を示唆していたが、その後、ナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)はオーストラリアのアルミニウムが米国の産業を「抹殺している」と発言し、除外の可能性に水を差した。

相互関税は公平か?

  それは「公平」という用語を、経済発展段階の異なる国々の事情を考慮できるほど柔軟に定義できるかどうかによる。新興国は国内産業と雇用(特に農業)を保護するため、一定の国際競争力の水準に達するまで、特定の輸入品に対し高めの関税を課す傾向がある。

原題:Trump Is Promising Reciprocal Tariffs. What Are They?: QuickTake(抜粋)

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