【日本市況】円が下落、政局不安や利上げ観測後退-超長期金利は急伸
3日の日本市場では円相場が下落。自民党幹部の辞意表明で国内政治情勢への不安が増し、円資産を売る動きが広がった。債券は欧米市場の下落も響き、超長期債が大幅安(金利は上昇)。株式は反落し、日経平均株価は1カ月弱ぶりに終値で4万2000円を割り込んだ。
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T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、夏場にかけ政治情勢に敏感とされる海外投資家の買いが株式を中心に入っていただけに、「トリプル安を連想しやすい」と指摘。政治の不透明感から「リスクテイクしにくい状況は続きそう」だと話した。
政局不安は日本銀行の追加利上げ観測も後退させている。金利スワップ市場が織り込む10月までの利上げの可能性は4割程度と、1日時点の5割程度から低下した。日銀の植田和男総裁は3日、石破茂首相と官邸で会談し、利上げは予断を持たずに判断すると発言した。
国内為替・債券・株式相場の動き- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の148円54銭-午後3時31分現在
- 長期国債先物9月物の終値は前日比23銭安の137円29銭
- 新発10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.63%
- 新発20年債利回りは一時7bp高い2.69%と1999年以来の高水準
- 新発30年債利回りは一時8.5bp高い3.285%と過去最高更新
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比1.1%安の3048.89
- 日経平均株価は0.9%安の4万1938円89銭
- 日経平均は一時447円(1.1%)安まであり、8月8日以来の4万2000円割れ
為替
外国為替市場の円相場は一時1ドル=148円台後半に下落。自民党の森山裕幹事長が前日に辞意を表明したほか、日銀の利上げ観測の後退を受けた円売りが続く中、石破首相と植田日銀総裁の会談後は円がやや買い戻された。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、首相と日銀総裁の会談を受け投機筋によるドルの上値追いがいったん沈静化したが、「あくまでスピード調整の域を出ず、持続的なインパクトはない」と言う。ドルは投資家の長期売買コストである200日移動平均線(148円86銭付近)を突破するかどうかが意識され、「短期的にドルの上値を試したい思惑が続きやすい」とみている。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、ドル・円はしばらく147円台で膠着(こうちゃく)していたが、円安方向に抜けたことでトレンドについていく動きも出やすくなり、「150円にタッチすることもあり得る」と述べた。
債券
債券相場は超長期債が大幅安。新発30年国債利回りは過去最高を更新した。財政悪化懸念を背景に米国や欧州で長期金利が上昇したことに加え、国内政治への警戒感が高まった。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは「世界的に財政インフレが課題になり、グローバルにスティープ(傾斜)化圧力がかかっているほか、30年債入札、政局不安とどれも超長期債に向かい風」と指摘。自民党総裁選の前倒し賛否の意思確認が行われる見通しの8日までは積極的にリスクを取りにくく、スティープ化が進むと予想した。
オリックス生命保険資産運用部の嶋村哲マネージング・ディレクターは4日実施の30年債入札について、超長期債の需給は「相応の水準訂正なくして回復しない可能性が高い。政治も投資家が購入に強く踏み切れない材料」で、無難から軟調な結果を予想。一方、財務省が流動性供給入札に関するアンケートを国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)会合のメンバーに送るなど需給不安を感じている点はサポート要因と分析した。
日銀は3日、定例の国債買い入れオペを実施。対象は残存期間1年以下、1年超3年以下、3年超5年以下、10年超25年以下で、買い入れ額はいずれも前回から据え置いた。オペ結果によると、1年超3年以下と、10年超25年以下の応札倍率が前回から上昇して需給の緩みが示された。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.865% 1.155% 1.630% 2.670% 3.285% 不成立 前日比 変わらず +1.0bp +3.0bp +5.0bp +8.5bp -株式
株式相場は反落。国内政治の混迷で日銀が追加利上げをしにくくなったとの見方が広がり、銀行や保険など金融セクター中心に売りが広がった。世界的な財政悪化への懸念や前日の米国市場で大型ハイテク株の下げが目立った点も投資家心理の重しとなった。
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アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、グローバルで金利が上昇していることは「株式市場にとって逆風」だと指摘。米金利が低下することを前提に株式市場は堅調な動きになっていたが、欧州市場での財政懸念を背景とした金利上昇やインフレリスクは注視する必要があると話した。
三菱重工業やIHIなど防衛関連株の下げも顕著。T&Dアセットの浪岡氏は、石破首相が力を入れてきた防衛力強化への期待が剥落している可能性があると述べた。東証33業種は銀行や証券・商品先物、保険のほか、電気・ガスや機械、情報・通信、電機などが下落率上位。半面、パルプ・紙やゴム製品、陸運、非鉄金属、小売りなどは上げた。