論点:「白票とは何事か」批判受けた政治学者、有効票にも「後味の悪さ」
毎日新聞 2025/6/28 06:00(最終更新 6/28 11:05) 有料記事 1675文字
松本正生・埼玉大名誉教授
選挙のたびに、「入れる候補者がいなくて投票に行かないくらいなら、白票を投じた方が良い」といった論評が見受けられる。そもそも、白紙投票に意義はあるのだろうか。政治意識論で著名な松本正生・埼玉大名誉教授の「告白」から。【聞き手・後藤豪】
鉛筆を持つ手が動かず…
私は、2014年の衆院選で白票を投じた。
小選挙区選挙は立候補者の一人に入れた。ただ、比例代表選挙に関しては、いずれかの政党を選ぼうと思ったものの、鉛筆を持つ手が動かず、そのまま投票箱に入れてしまった。
当時、「政治学者が白票を投じるとは何事だ」とベテラン記者らから批判された。
しかし、「悩まずに選べる人の方がうらやましい。普通は悩むでしょ」と反論した。
元々、日本の政党は比例代表に耐えられないという思いがあった。
候補者の選択権は政党側に預けられているが、どこまで責任を持って候補者リストを作成しているのだろうか。
候補者の選定プロセスが見えづらいため、その人が「どういう貢献をしてくれるのか」というのが分からない。
今夏の参院選でも言えることだ。人気取りだったり、政党との利害関係があったりするなら、当然有権者の気持ちは萎えるだろう。
政権票への肯定ではないか
そういう感覚を抑えられず、私は比例で白票を投じた。
「結果として政権への肯定票ではないか」と言われることについては、否定はしない。
ただ、「反対ではない」という意思表示の機能を果たすのであれば、投票に行かない選択よりはマシなのではないか。
白票は一般的に、何らかの意図があるようにみられがちだ。だが、白票を投じようと…