参政党が「日本人ファースト」で存在感、保守票奪う-危うさ指摘も

「日本人ファースト」を掲げる参政党が支持を伸ばしている。自民党を支持していた保守層の一部も取り込んでおり、参院でも過半数割れの瀬戸際にいる連立与党にとって脅威となる可能性もある。

  20日投開票の参院選では減税、「行き過ぎた外国人受け入れ」の反対、外国人による土地・不動産購入への厳格な制限や外国資本による企業買収・インフラ投資への慎重審査実施、歴史教育の見直し、新しい憲法の作成などを訴える。改選1に対し6議席の獲得を目指すが、今月12、13両日にJNNが行った調査で選挙区を含めると10を超える議席を獲得する見込みだとしている。

  外国人への強硬な姿勢はトランプ米政権とも重なる部分もあり、石破茂政権に物足りなさを感じる保守層に浸透しているとみられる。物価高に国民が不満を募らせる中、参院選で与党が目指す非改選と合わせた過半数の確保は微妙な情勢だ。

  吉田徹同志社大学教授(政治学)は、反グローバリズムを掲げる同党の台頭はトランプ米大統領の誕生や欧州の極右政党の勢力拡大と「軌を一にしている」と語る。欧米の文化的保守・権威主義勢力は、2008年のリーマンショック以降に小さな政府から大きな政府に転換したが、日本には同様の政党が存在していなかったと指摘。「参政党は先駆的な事例になる」と話した。

  神谷宗幣代表は2日の党首討論で、多国籍企業が主導する規制緩和で各国の中間層が貧困化する中、「今世界ではそういったものと戦う政党がたくさん出ている。参政党は日本でその位置をしっかりと占めていきたい」と強調した。翌3日の会見では、親和性が高い政党として、米共和党の保守派、「ドイツのための選択肢(AfD)」、フランスの「国民連合(RN)」などをげた。

元自民党支持者

  9日夕に都内の駅前で行われた街頭演説で、ビラ配りをしていた滝澤将史さん(54)は安倍晋三政権時は自民に投票していたと語る。3年前、初めてユーチューブで神谷氏の演説を視聴し、「思っている通りに言ってくれる政治家がいるのだと驚いた」と語った。積極財政の姿勢やコロナワクチンへの注意喚起に加え、歴史教育や無農薬食の推進を掲げていることに共感したという。

  20年に結党した参政は22年に国会で議席を得て以降、日本銀行には利上げに慎重に判断し国債買い取りの減額見直しを求めたほか、新型コロナウイルスは人工物であるというトランプ政権の見解に基づき、ワクチン接種を進めた対策の再検証などを提起してきた。LGBTQなど性的少数者への理解増進法や選択的夫婦別姓に反対した。同党の国会での勢力は衆院3、参院2の計5議席。

  動物愛護政策の推進や、「女性が望めば安心して家庭に専念できる」支援も掲げている。同志社大の吉田教授は、同党が掲げる政策には、政治学的関連性がないと指摘。「どれか一つが有権者に引っかかる。そのような政策を並べているところが新しく、躍進を説明する」と分析している。

「日本人ファースト」に批判の声も

  経済財政政策については、2%の物価目標達成まで財政拡大によるマネー増大と日銀よる国債購入の継続を掲げる。現在約46%の国民負担率には35%の上限を設け、消費税を段階的に廃止、社会保障費の支出最適化で社会保険料負担を軽減する。経済成長に向けては人工知能、自動車などの製造業、サブカルチャーの3分野を戦略的に支援。「教育国債」を発行し15歳までの全ての子どもに1人10万円を給付することも提案している。

  野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストは、同党の政策は税収の上振れ分では対応できず、国債の発行増で財政への信認が低下すれば円売りを呼ぶ可能性があると指摘。物価高進行にもつながるため「処方箋としてそれだけで全てが解決しない」と述べた。「荒療治が必要だと言う感覚は間違ってないようにも見える」一方、「やり方を間違えると負のスパイラルになってしまう可能性さえある」と話した。

  「日本人ファースト」の姿勢に対しては批判の声もある。10日に都内で行われた街頭演説には「人間にファーストもセカンドもない」「日本人ファーストは差別の扇動です。私はこれに抗う。」などと書かれたプラカードを持った人も集まった。

  抗議に加わった専業主婦の芹澤悦子さん(57)は同日、半年前頃から危機感があると語った。参政は環境や外国人犯罪に関して非科学的な主張やミスリーディングな主張も行っているとし、「それが気づかれない、だまされてしまう人が多い」と話していた。

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