人生の「大きな賭け」を大成功させる4つのルール

米ロックフェラー財団の会長を務めるラジブ・シャー博士は、政府要職であるアメリカ国際開発局(USAID)の元局長で、医師であり、健康経済学者でもあります。

バイデン政権の諮問機関である国防政策協議会にも参加していました。

今回は、シャー博士の新著『Big Bets: How Large-Scale Change Really Happens(大きな賭け:大きなスケールの変化はどのように起きるのか)』(未邦訳)から、重要な洞察5つを取り上げて説明します。

1.「大きな賭け」に出る姿勢を持とう

目の前に立ちはだかる大きな問題に立ち向かおうとするとき、人はどうしても、その問題の規模と比べると、自分はなんてちっぽけで無力なんだろうと考えてしまいがちです。

気候変動との闘い、貧困の撲滅、新型コロナウイルス感染症の克服などは、みなそうした問題です。

自分を無力に感じるこうした感情は「アスピレーション・トラップ(向上心の罠)」と言われています。

この罠にはまってしまうと、目標を低く設定したり、良い行いに「挑戦しようとしている」だけで十分だと考えたりするようになります。

しかし、スケールの大きな変化は「大きな賭け」とともにしか起こりません。

つまり、まったく新たな解決策を見つけよう、見込みのないパートナーシップを実現させよう、結果を測定しようと人を駆り立てる「大きな賭け」のことです。

新型コロナウイルス感染症が発生したとき、ロックフェラー財団は、それまでの戦略とプログラムを方向転換させ、米国や世界各国の対応を支援しました。

そして、検査が重要な解決策であることを突き止めました。

感染拡大を食い止める唯一の方法は、どこの誰が陽性かを確認することだからです。

しかし、2020年4月時点では、新型コロナウイルス感染症を検査できる方法がPCR検査しかなく、結果が出るまで3日以上を要していました。

そのころのアメリカでは、100万人あたりのPCR検査実施件数が23回でしたが、韓国では3600回でした。

アメリカでの検査実施件数を大幅に増やそうと考えたロックフェラー財団は、レポートを公表し、実施件数を3倍以上に増やすよう求めました。

4月はじめの実施件数は週100万回未満でしたが、6月末に週300万回、10月に週3000万回近くまで拡大するという目標を掲げたのです。

そして、パートナーたちと手を組み、目標達成に向けて進むための明確な行動計画を立案しました。

検査体制に対するこうしたアプローチへの支持を集めるため、普段では考えられない協力関係を実現させました。

つまり科学者、医師、教師、行政、経済学者、政府当局者を団結させ、検査手順を計画したのです。

そればかりか、トランプ政権(当時)関係者と教員組合を団結させました。

子どもたちが再び学校に戻って安全に勉強できるよう、この検査手順を教育現場で試験導入したのです。

その過程をとおして、効果が出ているかを測定し、効果が出ていないことがあれば対応しました。

こうして1年以内に、児童・生徒たちが学校に戻るために必要な検査や生産体制、規則などが整いました。

「大きな賭け」に出れば、こうした類いの大規模な変化を起こすことができるのです。

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