「公認辞退し、党の顧問に」榛葉氏の求め断った理由 山尾志桜里氏インタビュー(上)

インタビューに応じる山尾志桜里元衆院議員=24日午後、東京都港区(奥原慎平撮影)

国民民主党が参院選(7月20日投開票)での公認を取り消した山尾志桜里元衆院議員が、産経新聞のインタビューに応じた。山尾氏は過去の不倫疑惑を巡り、6月10日の出馬会見で事実関係を否定した一方、詳しい内容を説明しなかった理由について「民間人である関係者のプライバシーを傷つけることはできなかった」と強調した。榛葉賀津也幹事長から公認の辞退と党の政策顧問への就任を求められたが、断ったことも明らかにした。国政復帰には強い意欲を示した。

国政を目指す

──今後は政治家として道筋をどう描いているのか

 「国政を目指す気持ちは固まっている。政治的には隘路(あいろ)でも左右に偏らない中道政治を切り拓きたい。特定の政党が念頭にあるわけではないが、ポピュリズムとは距離を置きたい。ポピュリズムは政党を太らせ、国を弱らせる」

──なぜ国政なのか

「国会議員時代も、その後弁護士や研究者としても、一貫して憲法、国際法、人権外交、安全保障に携わった。やはり、こうした分野は国政でこそ貢献できる。民間の立場で国会質問も外交演説の原稿も書いてきたが、違う人の口で発せられた言葉というのは、一定の限界がある。自分で作った言葉は自分で発するとき魂が宿ると感じる」

──国民民主党から、参院選の公認辞退を迫られた

「党から辞退を促すような勧奨が続いた中、榛葉幹事長からは『国民民主党のために辞退し、党の政策顧問として日本一の応援団になってほしい』と求められたこともある。『そうしたことを発表する会見ならば、隣に座る』とも言われた。しかし、(民間時代)党派性のないロビー活動にすら一定の制約を感じた経験を踏まえれば、まして特定の政党の政策顧問になるという申し出は、恐縮ながら心に響かなかった」

 「戦後80年になり米国が変容する今、国家像を自分の言葉で語り、行動する政治家が必要とされていると思う。有権者に負託をいただけるかどうかという前提はあるが、そうした政治家として再起を目指したいという気持ちは揺らがなかった」

女性候補巡る3つの脆弱性

──公認取り消しに至った騒動をどう振り返るか

 「一連の出来事を通じ、3つの構造的な脆弱(ぜいじゃく)性を感じた。一つは政党に対する候補者の立場の弱さ。さらにSNS上のメディアに対する生身の人間の弱さ。最後に男性に比べ、女性に対する社会の反応の違い。これらが重なり合う部分に政治を志す女性候補者が置かれていると感じた。自分は政治家として人脈もあり、家族も含めた応援にも恵まれ、一定程度乗り切ることはできたが…」

「一連の問題を、私自身の体感や実感だけで語るとどうしても社会の分断を招いてしまうので、ぜひ、政党論やメディア論などの専門家に分析してもらいたい。三重の脆弱性を客観的に検証することで、多くの方が納得できる改善策が出るのではないか」

──10日の出馬会見で男女関係について「事実はない」と述べた一方、詳細な説明をしなかった

 「自身の私生活は他の人々の私生活と結びついており、自分の責任だけで公にできる私生活は少ない。でも、質問が尽きるまで誠心誠意、自身の反省と姿勢の変化を伝えようと考えて臨んだ。率直にいって当時は、『仕事さえきちんとやっていればいい』と思っていた。おごりですよね。8年前当時、政治家として未熟で軽率な行動と対応を取ったことは間違いなく、結果仕事にも支障をきたし、心から反省している」

「二度と同じ轍は踏まない。しかし、自分が政治的に乗り切るために、民間人である関係者のプライバシーを傷つけることは私にはできない。会見でも、事実関係についてはこれ以上話ができないと繰り返し伝えた。それ以上は、そうした私の考え方を含めて、有権者の判断に委ねるべきことだと思った」

「子供の質問苦しかった」

参院選出馬表明会見で過去の私生活について繰り返し質問を受ける山尾志桜里氏=10日午後、国会内(松井英幸撮影)

──会見では、SNSを中心に活動する一部の記者から不倫疑惑への質問が集中した

 「さまざまな関係者の中には子供もおり、そこに言及する質問が重ねられたときが、最も苦しかった。会見の様子は生配信されており、その質問自体が関係者を傷つけかねないと感じていた。そこは改善の余地があると思う。報道陣の多くは出馬の経緯や実現したい政策を聞いてくれ、会見の最中はメディアの良識に感謝していた」

「ただ、ごく一部の記者からは、『関係者のプライバシーが関わることはこれ以上答えられない』と繰り返し伝えても、なお私生活への問いが重ねられ、結果、会見を受けた報道でも私生活への語りぶりに焦点が当てられた。釈明会見でなく、出馬会見のはずだったので、そこには正直、ギャップを感じた」(聞き手・奥原慎平)

「組織の要諦は仲間裏切らない」山尾志桜里氏(下)

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