日鉄とUSスチールには寝耳に水、トランプ米大統領の「投資」発言

トランプ米大統領は先週、日本製鉄USスチールを買収するのではなく、同社に投資すると述べ、投資家を驚かせた。この発言は両社にとっても寝耳に水だったことが分かった。

  トランプ氏が石破茂首相との7日の首脳会談後に明らかにしたこの投資案は、両社いずれにも事前に知らされていなかった。事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。

  トランプ氏の発言を受けて、USスチールの株価は同日に急落。石破氏も9日、日本でのテレビインタビューで投資の計画を改めて強調した。しかし、141億ドル(現在のレートで約2兆1450億円)での合併計画をなお救おうと努める両社は、この構想について沈黙を保っている。そうした投資がどういったものになるのか両社には確信がないと、関係者は話した。

  トランプ氏は13日、日鉄による投資について自身が交渉する案から距離を置くコメントをした。同氏は14日には、日本がUSスチールの少数株を取得するのは構わないと述べた。

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  買収計画はバイデン前大統領が国家安全保障を理由に阻止して以降、既に崩壊寸前の状態になっていた。そこにトランプ氏が不確実性を注ぎ込んだ格好だ。投資家はトランプ氏が考えを変え、バイデン氏の決定を覆すことを期待していた。

  USスチールはこれに関するコメント要請に対し、デービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)がトランプ氏と会談した後に同社が投稿したツイートに言及した。投稿は「USスチールの将来的な繁栄」にトランプ氏が感心を示していることに感謝する内容だ。日鉄からはまだ返答は得られていない。ホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

  ブリットCEOとトランプ氏の会談が行われたのは、トランプ氏の「投資」発言の前日夕だったため、同社幹部らの困惑が深まったと、関係者は述べた。USスチールはこの会談について生産的だったとみていたという。

  USスチールの株価は7日、41.38-35.15ドルで乱高下する展開となり、一時10%下落した。日鉄が提示した1株55ドルの買収額を依然として大きく下回る。

  トランプ氏は13日、「USスチールは今、すべての力を手に入れていると思う。関税がUSスチールに新たな活路を与えた」とコメントした。

  これらはどれも、USスチールの株主に安心感を与えるものではなかった。「投資」がどのようなものであれ、完全買収の代替策にはならないと、複数の投資家は語った。公に話す権限がないとしてオフレコで話した。

  関係者によると、トランプ氏は自身の発言に関してさらなる詳細は示していない。ブリットCEOはトランプ氏との会談で、解決策の一つとして、USスチールの老朽化した資産を再建するために日鉄が既に表明している20億ドル余りの投資に加え、さらなる投資を日鉄から確保することを提案した。そのような解決策は、日鉄が同社をなお買収することと並行する形になると、関係者は述べた。

原題:US Steel, Nippon Steel Were Blindsided by Trump Investment Talk(抜粋)

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