ドル高見通しに疲労感、新たな関税巡る威嚇は交渉手段との見方
トランプ米大統領による新たな関税に関する威嚇は単なる交渉手段なのではないかという臆測が、ドル高見通しに水を差している。
トランプ大統領が相互関税導入の検討を政権に指示したことを受け、ブルームバーグのドル指数は2カ月ぶり低水準まで下落した。検討には数週間から数カ月かかることから、関税を課すことが目的なのではなく、交渉で有利な条件を引き出すための戦術だという見方が強まった。
これは米国のインフレが加速しドル高につながるという見通しを弱める。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏(シンガポール在勤)は「これはドルの巻き戻しの始まりに過ぎない」として、「ドル高は関税の脅威と米国の例外主義によってもたらされた。関税は広範囲ではなく、国家安全保障と貿易の公正性という根本的な動機に基づいて対象が絞られることは今では非常に明白だ」と解説した。
トランプ氏が「米国第一主義」政策の一環として世界的な関税引き上げに踏み切るという見方を投資家が撤回したため、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は2月の高値から約2.5%下落。ドルは今月、G10通貨全てに対して弱含み、カナダドルやオーストラリアドルなどの商品通貨に対しては特に大きく下げている。
外国為替オプション市場でも、ドルの疲労を示す兆候が見られる。ブルームバーグの米ドル指標における1カ月間のリスクリバーサルによると、トレーダーは13日まで4日連続で米ドルへの強気なポジションを減らした。
インベスコ・アセット・マネジメントのアジア太平洋地域(日本除く)担当グローバル市場ストラテジスト、デービッド・チャオ氏は「ドルは依然として割高であり、ファンダメンタルズも良くない。また、公共政策や貿易政策の先行きが不透明な局面に入っている」と指摘。「私は今の時点でドルを買うことはないだろう」と述べた。
それでも、一部の投資家はドルに対して強気の見方を維持している。オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、キャロル・コング氏は「私は依然として『関税のピーク』はまだ到達していないと考えている。トランプ氏の脅威が真実であり、関税が引き上げられると市場が認識すれば、ドルは再び強くなるだろう」と述べた。
原題:Markets Flash Glimpses of Dollar Fatigue as Tariff Risk Queried(抜粋)