日米貿易交渉、同盟国との協定締結へトランプ氏の本気度測る試金石に

日本は今週、米国との貿易交渉に臨む。今回の協議では、トランプ米大統領が貿易協定を締結する用意があるのか、親密な同盟国であることが交渉の場でどれほどの重要性を持つのかが試されることになる。

  正式な交渉に入る先頭集団にいる日本は、米国が他国に対しどの程度強硬に譲歩を迫るのかを見極めたり、同盟諸国の交渉戦略を研究したりするといった恩恵は得られない。だが、早期に動いたことで、ある程度の影響力はまだ保持している。

  ベッセント米財務長官は、日本のような同盟国と協力して、中国に経済的圧力をかけるための集団的な取り組みを模索する意向を示している。石破茂首相が「国難とも称すべき事態」と表現する米関税措置の緩和について、まず日本と合意することが必要になるだろう。

  ベッセント長官は先週、最終的には「恐らく同盟国と合意に達することができるだろう」と指摘。「彼らは軍事面では良き同盟国だが、経済面では完璧な同盟国ではない。その後、集団として中国に対応することが可能だ」と語った。

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  日本は中国と緊密な貿易関係にあるため、米国の対中経済圧力にどこまで足並みをそろえるかは不透明だ。ただ、安全保障面での中国の脅威に立ち向かう上で、米国にとって日本ははるかに協力的な同盟国であり、今も中国と激しく対立する米国が日本と貿易協定を結ぶもう一つの動機付けとなっている。

  在日米軍基地には兵士約5万3000人が駐留している。これは米国本土以外では最大の米軍常駐部隊だ。トランプ氏は、日米安全保障条約が日本に有利過ぎると批判しているが、米国家安全保障当局者らは日本との関係深化を望んでいる。これは、信頼のおける安保上の同盟国である日本を失うリスクを米国が懸念していることを示唆している。

  東京近郊に新たな軍司令部を設置する計画も進められているが、今回の貿易交渉が合意に至らない場合、日米安全保障体制の弱体化にまで影響が及び、防衛力の拡大計画を複雑にする可能性がある。

  元外交官でキヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏は、「地政学的な競争というゲームにおいて、われわれは米国側に多くのことを提供できるが、残念ながら、米国のトップにはいまだに悪役がいる」と述べた。

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  日本の当局者は、今後の協議で米国が具体的にどのような要求をしてくるのかいまだ不透明としながらも、米国の対日貿易赤字の削減方針が合意につながることを期待しているという。日本は、対米投資を増やし、米国産の液化天然ガス(LNG)の購入拡大に前向きな姿勢を示している。

  米側は日本に対し、米国産農産物の市場アクセス拡大や規制など非関税障壁の引き下げを求めている。グリア通商代表部(USTR)代表は、日本との協議では輸出管理など経済安全保障分野についても協議する見込みだと指摘した。一方、日本側の交渉責任者である赤沢亮正経済再生担当相は、ベッセント氏側から為替に関する議論が提起された場合には、これに応じる考えを示した。

  米国は日本に対する上乗せ税率を24%に設定したが、その後、他の多くの国々と同様に90日間の停止措置を講じている。もっとも、10%の基本税率は引き続き適用しており、自動車や鉄鋼、アルミニウムには25%の関税を維持している。

  日本は合意を望んでいるものの、関税の圧力に屈したと受け取られるような結果になることを当局者は懸念している。石破首相は14日、米国との関税協議を巡り、妥結を急がない考えを示した。

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  日本は自動車輸入に関税を課していないが、日本国内の米国車が極めて少ないことにトランプ大統領はたびたび不満を示しており、これが交渉の障害となる可能性がある。日本の政府当局者は、今回の協議で米側の交渉担当であるベッセント氏が、新たな貿易合意案をトランプ氏に納得させる役割を果たしてくれることを期待しているという。

  トランプ氏が迅速な合意で世界的な関税戦略の成果をある程度早期に得たいと考えているならば、先陣を切る日本は利益を得ることができる可能性がある。ただ、日本に対する関税を見直す見返りとしてトランプ氏が何を受け入れるかは不透明だ。

  トランプ氏が中国以外の国・地域に対して上乗せ関税の90日間停止を決めたことは、金融市場の混乱に完全に無関心ではないことを示している。日本と合意が成立すれば市場に一定の安心感を与え、トランプ氏の政策の成功事例として強調される可能性もある。一方、交渉が決裂すれば、市場の不透明感はさらに高まる恐れがある。

  SMBC日興証券の太田千尋投資情報部部長は、赤沢再生相の交渉がうまくいけば、他の国のガイドラインになる可能性があると指摘。「日本株にとってポジティブで、万人にプラスだろう」と述べた。

  日本が影響力を行使しない方針を明確にしている分野の一つが、米国債の大量保有に関するものだ。自民党の小野寺五典政調会長は13日のテレビ番組で、交渉については「同盟国なので、米国の国債を意図的にどうするかということは政府として考えることはない」と発言していた。

原題:Japan Provides Litmus Test for Trump’s Deal Appetite With Allies(抜粋)

(専門家のコメントと10段落目以降を追加して更新しました)

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