中国製おもちゃの億万長者、関税により米国での小売価格は2倍になる
中国製おもちゃで富を築いたニック・モーブレー氏によると、トランプ米大統領の関税は同氏の会社、ズールー・グループを「まひ」させている。米国での小売価格を引き上げる以外に選択肢がないという。
ズールーは中国で、「ペットアライブ」や「エックスショット」などのおもちゃや「ミリームーン」、「ラスカル」という紙おむつを製造し、ウォルマートやターゲットの米店舗で販売している。
そのため、同社は中国からの輸入品に課されるトランプ氏の145%関税の直撃を受ける。
モーブレー氏は電話インタビューで「現在の関税率では、少なくともおもちゃに関しては小売価格をほぼ2倍にしなければならない」と述べた。「おもちゃの80%が中国製であることを考えると、競合他社も皆同じ立場だ。トランプ氏は恐らく、米国中の家族や子供たちからクリスマスを奪おうとしているのだろう」と語った。
モーブレー氏(40)は、アジア最大の経済圏における工場ネットワークから資産を築いた。ニュージーランド人の同氏は20年以上前に兄のマット氏とともに中国に移住しズールーを設立。マテルやハズブロなどの大手玩具メーカーと競合するまでに成長させた。今、同氏の玩具帝国を成功に導いた事業モデルが危機に瀕している。
香港に本社を置くズールーは今年、約22億ニュージーランドドル(約1900億円)相当の製品を米国向けに出荷する見込みで、これは同社の世界的な売り上げの半分を占める。
「もし145%の関税が課された場合、30億ニュージーランドドル近くの関税がかかることになる。それは明らかに不可能だ。財務的に実行不可能だ」と同氏は語った。
モーブレー氏によると、ズールーは多くの小売業者と交渉中だが、小売業者の多くは注文を保留している。
「われわれは小売価格を毎日見直している。価格は大幅に引き上げざるを得ない」とモーブレー氏は語った。「どれだけの関税を自分たちで吸収するかを見直さなければならない」と付け加えた。
トランプ氏が今月初めに関税を発表して以来、兄弟はズールーの経営陣とほぼ毎日電話会議を開き、今後の進路を検討するとともに、特定の分野に対する一時的な適用除外に関する米国の議論を注意深く追っている。
モーブレー氏によると、玩具製造に関して中国には「非常に深いエコシステムがあり、サプライチェーンが非常に緊密に構築されている」。生産を「ベトナムやインドのような場所に移すことすら非常に難しい。中国と同じようなサプライチェーンが存在しないからだ」と同氏は説明した。
ズールーは新規株式公開(IPO)の可能性について検討していたが、現在は保留になっている。
「22年をかけて築き上げてきたものが、たった1人か2人のせいで台無しになる恐れがある。少し理解に苦しむ」」とモーブレー氏は話した。
原題:Made-in-China Toy Billionaire Says Tariffs Will Double US Prices(抜粋)