2000年前の「財宝」を発見したのは、考古学者じゃなかった
ウェールズでの発掘調査で、なんと鉄器時代の素晴らしい遺物が見つかりました。でも、発見したのは考古学者じゃなかったそうですよ。
2000年前のレアな遺物を発掘
ウェールズにあるイギリス空軍(RAF)バレー基地の飛行場の地下から、軍関係者と退役軍人が2000年前のケルトの遺物を掘り出しちゃいました。
しかも、これらの遺物は正式に「財宝」認定されていて、1940年代に発掘された有名な考古学的埋蔵物の一部かもしれないのだとか。
今回発掘されたのは馬具や貴重な馬車の部品などで、1月末にイギリス政府が発表した声明でも、その歴史的価値が非常に高いとされています。
RAFバレー基地の司令官であるGez Currie氏は、今回の遺物発見について次のように述べています。
現在のRAFバレー基地がイギリスの防衛にとって重要であることは疑いようがありません。しかし、私たちは2000年以上続く歴史の一部であり、責任を持ってこの土地を守るべき存在でもあります。ウェールズの歴史にとって価値ある遺物の発見と保存に関われたことを誇りに思います。また、基地の軍人たちがこの取り組みに深く関与できたことも大変喜ばしく思います。
現役&元軍人の支援プログラムが発見に貢献
今回の発掘は、飛行場の改修計画に先立ち、Defence Infrastructure Organisation(DIO、防衛インフラストラクチャー機関)の主導で行なわれました。調査には、考古学を通じて軍人や退役軍人を支援するプログラム「ナイチンゲール作戦」のメンバーも参加していたそうです。
発掘された遺物の中には、西暦60年ごろの馬銜(はみ)や、ケルトの馬車の手綱に取り付ける馬銜環(はみかん)が含まれていました。特にこの赤い象眼(金属や木、石などの表面に別の素材をはめ込んで装飾する技法)が施されている馬銜環(下の写真参照)は、ウェールズではこれまでにたった3つしか発掘されていないレアなものだそうです。
Image: Operation Nightingale / Facebook赤い装飾を施された馬銜環今回の発掘作業について、Graham Moore軍曹は次のように振り返っています。
調査範囲が非常に広かったため、失われた財宝を探すのは本当にたいへんでした。でも、最終日の残り時間がたった10分になったとき、ついに馬銜を発見したんです! 最初、チームのみんなは冗談だと思っていたみたいですが、すぐに本当に貴重なものを見つけたと気づきました。その瞬間の感動は言葉では表せませんが、素晴らしい経験でした。
第二次大戦中に発掘された遺物の一部
考古学者たちは、今回発見された馬銜や馬銜環が、戦時中の1943年に行なわれていた飛行場建設作業中に偶然発見された「Llyn Cerrig Bachの財宝」として知られる重要な出土品の一部と考えているそう。
当時、滑走路の基盤を強化するために湖から泥炭を採取したところ、紀元前300年から紀元100年の間に作られた青銅や鉄器の遺物が150点以上も発掘されたといいます。
これらの遺物は、ケルト人が神々への捧げ物としてLlyn Cerrig Bach湖に沈めたとされています。数千年の時をへて、戦時中の工事によって再び地上に姿を現したというわけです。
ウェールズのカーディフ国立博物館で先史時代を専門としている上級学芸員のAdam Gwilt氏は次のように述べています。
80年以上前に近くの古代湖から飛行場まで引きずられた浅い泥炭層の中で、2000年前の遺物がこれほど完全な状態で保存されていたとは驚きです!
Gwilt氏はさらに続けます。
この馬銜や馬銜環のデザインは、これまでに発見されたLlyn Cerrig Bachのコレクションには含まれていませんでした。これらは、鉄器時代の終わり頃、あるいはローマ軍がアングルシー島に侵攻した頃に、宗教的に貴重な品々を湖に投げ入れて神々へ捧げていたことを示す重要な新情報を提供してくれます。
こうして振り返ると、これらの遺物が最初に発見されたのが、第二次世界大戦中にまったく別の「侵略」と連合軍が戦っていた時期だったというのは、なんとも不思議な巡り合わせのように感じられます。