新章突入AI、シンギュラリティ接近で破竹の上昇旋風に舞う6銘柄 <株探トップ特集>

AIの社会実装が日本でもいよいよ加速しつつある。株式市場でも現実買いのステージに立つAI関連株が改めて選別されていくことになりそうだ。
―社会実装が加速、あらゆる産業に浸透していくAIとそれを担う銘柄群をロックオン!―  週末18日の東京株式市場では、日経平均株価が朝方は買い優勢で始まりフシ目の4万円大台を回復したものの、ほぼ寄り付き天井を形成し、その後は買いが続かずマイナス圏に沈んだ。前の日に欧米株が全面高に買われたほか、外国為替市場でもドル高・円安方向に振れるなど追い風材料には事欠かなかったが、日本固有の材料として参院選の投開票を20日に控えていることで買いポジションを整理する動きが優勢だった。参院選は自民党の苦戦を既にマーケットは織り込んでいるとはいえ、選挙後の合従連衡など政局が極めて読みにくく、3連休前ということも加味して見切り発車がしにくい状況ではあった。

 ただし、下値を大きく売り込むような動きも見られず、個別株の物色意欲は失われていない。参院選通過後の日経平均の値動きは現状では予想がつきにくいが、有力な投資テーマに乗る銘柄群は、イベント通過に伴い不透明感が払拭されることで、遅かれ早かれ仕切り直しの買いが誘導されることになりそうだ。ここで、改めてマークしておきたいのは相場の花形テーマである人工知能(AI)関連に位置付けられる銘柄である。AIの社会実装が加速するなか、それに絡むビジネスによって収益が押し上げられている銘柄、いわゆる“現実買い”の舞台に立つ銘柄群にスポットライトを当ててみたい。

●エヌビディアの変貌とソブリンAIの息吹

 米国では米オープンAIがリリースした「チャットGPT」の登場を皮切りに 生成AIの市場が爆発的な成長局面に突入した。そして、生成AIの爆需に対応したAIデータセンターの建設ラッシュを背景に、株式市場の景色も大きく変わることになった。その象徴として、AI半導体の申し子ともなった米エヌビディア<NVDA>がGPU(画像処理半導体)特需を享受し、業績と株価を大変貌させたことは周知の通りである。

 ただ一時期AIが商業化に向かうプロセスで、巨額の資金を投下した割になかなかビジネスとして回収が利かないというような見方も浮上し、AI半導体分野に携わるメーカーやAIソリューションを手掛ける企業が、大幅な株価調整を強いられるような場面もあった。ともすれば“AIバブル崩壊”というような文言がメディアに踊ることもあったが、これは生成AIの進化スピードを見誤ったものであったことが徐々に判明してきた。

 AIデータセンターへの投資抑制の動きも部分的な動きにとどまり、「ソブリンAI」のコンセプトに共鳴したオイルマネーの参画などで、AI関連市場は再び活況を呈することになる。そして、ここにきて急速にAIの社会実装が進み、さまざまなシーンでAIの活躍が我々の日常に投影される状況となっている。

●立ち遅れる日本もキャッチアップへ動き出す  JEITA(電子情報技術産業協会)によると生成AI市場のグローバルベースの需要額は2023年時点で約106億ドル(約1兆5800億円)に達したとされるが、何とこれが30年には約20倍の2110億ドル(約31兆4400億円)まで膨張するという試算がなされている。これは生成AIがあらゆる産業分野に我々の想定を上回るスピードで急激に浸透していくことを示唆するものである。  もっとも、現在の日本は世界的に生成AIの活用に関して出遅れていることは明白である。今月開示された総務省の情報通信白書によると、国内で生成AIの利用経験のある個人は全体の26%にとどまっているという。老若男女を問わず約4人に1人は利用したことがあるということになり、これが果たして少ないのかどうかという話になるのだが、ちなみに中国では全体の81%、米国でも68%が利用経験ありということで、日本は大きく及ばない状況となっている。総務省の白書でも、日本は世界のAI先進国に技術や利用面で大きく後れを取っているという認識で、今後AI技術を推進するとともに、社会生活における活用などを一層進めるべきという結論を提示している。 ●イメージされ始めたシンギュラリティの瞬間  生成AIは教育やビジネス、医療、アート、ロボティクスなど非常に幅広く活用されているが、今後は自動運転やドローンなどの次世代物流分野や人材開発などにもその活躍領域を広げていく可能性が高い。当然ながらこれまでは人間がAIを開発し、その進化を見届けてきたわけだが、いつの間にか人材を育成・開発する側にAIが回るようなSFチックな時代もすぐそこに迫っている。  AIの社会実装が進むということは、人類の英知の総和をAIが上回るとされるシンギュラリティ(技術的特異点)に漸次近づいていくということでもある。時間軸的に今はその初動にあるといえそうで、株式市場でもAI関連の範疇に属する企業を対象に、中期的に存在感を高めていく銘柄の取捨選択が重要性を増していく。今回のトップ特集では、AIの社会実装で商機を捉える有望株を6銘柄エントリーした。 ●AIの社会実装を担う株価変貌期待の6銘柄

◎AI inside <4488> [東証G]

 AIinsはディープラーニングによるAI認識技術を活用したOCRサービス「DX Suite」を法人向けにクラウドで提供し、業界トップシェアを誇るほか、新たな生成AIサービスでは従来人間が行う業務を自律的にこなすAIエージェント「Heylix」に注力しており、デジタルシフト推進に取り組む企業のニーズを取り込んでいる。また、近年はAIの社会実装に必要な人材育成も重要視されるなか、実践型AI人材育成プログラムなどで業界のフロントランナーとなった。

 業績も26年3月期は人件費を吸収して利益率改善が進む見通しにあり、売上高は前期比15%増の50億5000万円、営業利益は同31%増の5億500万円を見込んでいる。前期赤字だった最終損益も黒字化し3億3200万円を予想している。売上高は5期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。  株価は6月中旬に急騰を演じ、6月20日には4995円の年初来高値を形成したものの、その後の調整局面では思いのほか深押しを強いられ3000円台前半まで水準を切り下げた。しかし、目先売り物が切れ、ようやく本格的な切り返しが期待できる動きとなってきた。まずは4000円大台復帰から中勢5000円台活躍が視野に入りそうだ。

◎豆蔵デジタルホールディングス <202A> [東証G]

 豆蔵デジHDは昨年6月に東証グロース市場に新規上場したニューフェースだが、クラウドシステム導入コンサルのほか、AIコンサルティング、AIロボティクス・エンジニアリングなどによる企業のデジタルシフト支援で実績を積み上げている。また、モビリティ・オートメーションサービスなど自動運転及び先端カーエレ分野でも実力を発揮している。これ以外に、人間の五感に匹敵する機能を要するAIロボットの社会実装に積極的に取り組んでいる点はポイントとなる。企業のバリューアップ投資や業務変革への取り組みを、同社は商機として取り込むことに成功しており、今後も収益成長への期待が大きい。  25年3月期は売上高が前の期比10%増の105億5100万円、営業利益が同15%増の20億7000万円といずれも2ケタ成長を果たした。26年3月期について会社側は開示していないものの増収増益基調は維持される可能性が高い。同社は株主還元にも積極的で、今期予想配当61円を計画し、配当利回りは3.4%前後に達する。  株価は6月24日に上場後の高値である1923円をつけた後、調整局面に移行した。目先1700円を割り込む場面があり25日移動平均線も下回ったが、下値では買い板が厚く、強気に押し目買い対処で報われる公算大。中期的には2000円台を地相場としそうだ。

◎ヤプリ <4168> [東証G]

 ヤプリはスマートフォンアプリの開発・運用・分析がノーコード(プログラミングなし)でできるクラウドサービス「Yappli」を提供しており、顧客開拓を鋭意進めている。月額サブスクリプション型で安定した収益基盤を強みとし、近年はアプリ契約数が加速度的に増加している状況で、高成長路線をまい進する。導入実績は750社を超え、継続率についても99%とほぼパーフェクトに近い。また、「Yappli WebX」は最新AI技術とノーコード開発を融合させた次世代型Web構築プラットフォームで、今年5月にリリースしており今後の業績寄与が見込まれている。  長期にわたりトップラインの伸びが顕著で、25年12月期は前期比13%増の62億円予想と2ケタ成長を確保するとともに10期連続増収が予想され、営業利益は同36%増の7億5000万円と、こちらもピーク利益更新基調を続ける見通しにある。PER12倍台は成長力を考慮して評価不足が歴然だ。  790円近辺を横に走る25日移動平均線を足場に上放れの機が熟しており、早晩6月末の戻り高値867円を払拭し、ボックス上限突破が見込まれる。中期的には1月29日の年初来高値920円をクリアし、4ケタ大台を意識する強調相場が想定される。

◎アエリア <3758> [東証S]

 アエリアはスマートフォン向けオンラインゲームの開発・配信、キャラクターグッズ販売などを主力に手掛けるほか、データセンターやネット広告、電子出版、不動産ビジネスと幅広い事業を多角的に展開している。同社の連結子会社を通じAIチャットアプリの配信を4月から開始しているが、これは「honeybee」レーベルの人気キャラクターと時間や場所を問わず会話ができるチャットアプリで、旺盛なニーズが見込まれるなかAIチャットの社会実装でも先行することになる。

 業績は回復色が鮮明となっている。25年12月期は売上高が前期比18%増の225億円を予想し、前期は小幅ながら赤字だった営業損益も7億円の黒字化見通しと様変わりを見込んでいる。データサービス分野のニーズを捉えるほか、コンテンツ事業では新規コンテンツの創出や販売不動産の好採算物件などが寄与する見通しだ。  株価は5月下旬以降に動兆しきりとなっているが、依然として300円未満と低位に位置しており、長期波動でみても大底圏に位置している。今期配当計画について会社側は未開示ながら前期と並びであれば年5円が予想され、0.7倍前後のPBRは見直し余地が意識されやすい。年初来高値298円のクリアから300円台後半を目指す動きに。

◎JTP <2488> [東証S]

 JTPは海外のICTベンダーやライフサイエンス関連機器メーカーを主要顧客に情報機器の保守点検やIT研修など技術サービスを手掛けるほか、そこで得た知見を生かし自社サービスも展開している。生成AIを活用したDX支援に傾注し、インテグレーションサービスの「Third AI」を通じて、最新のAI技術や顧客ニーズに対応したプラットフォームを導入、企業の課題解決に向けたソリューションで高実績を誇っている。今年5月には世界的なITソリューション企業であるコグニザント<CTSH>の日本法人とAIエージェント開発で業務提携を発表している。

 26年3月期は売上高・利益ともに過去最高更新が続く見通し。営業利益段階では前期比1%増の8億3000万円を会社側は予想しているが保守的とみられ、官公庁向け大型案件の寄与などで大幅に増額修正される可能性が指摘されている。また、27年3月期は2ケタの利益成長トレンドに変化はなさそうだ。  PER13倍前後で3%前後の配当利回りは成長性を考慮すると割安感が強い。6月27日の年初来高値1484円奪回はもとより、17年1月につけた1690円の高値についても当時と業績内容が様変わりしている点を考慮すれば通過点に過ぎないと判断される。

◎Appier Group <4180> [東証P]

 Appierはマーケティング分野でAIを活用した分析をもとに集客効果を高めるソフトウェアを提供、業績は飛躍的な成長を続けている。台湾発祥の企業で、本社は東京に構えるが開発拠点は台湾にあり、最先端のマシンラーニングを活用して国内外で急速に需要取り込みが進んでいる。欧米を中心にグローバル戦略を推進するが、M&Aにも積極的で今年3月にはフランスのAI搭載プラットフォーマーである有力新興企業を買収して完全子会社化し、広告生成技術分野でのシナジーが中期的に期待される状況にある。  収益面では飛躍的な増収トレンドを続けるなか、営業損益も22年12月期に黒字転換を果たし、それ以降は目を見張る伸びを続けている。25年12月期は売上高が前期比34%増の454億6700万円、営業利益は同2倍となる40億5100万円といずれも大幅な過去最高更新が予想されている。26年12月期も高成長継続の公算が大きい。  株価は6月末に戻り高値1664円をつけた後は調整を入れていたが、目先25日移動平均線との下方カイ離を埋めリバウンド局面に移行する気配をみせている。抜群の収益成長力を考慮して、1500円台は中期スタンスで絶好の買い場となる可能性がある。年初来高値1875円奪回はもとより、中勢2000円台復帰が濃厚とみておきたい。 株探ニュース

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