HUMAN MADE上場は日本ファッション史の転換点、サブカルから世界へ
著名デザイナーのNIGO氏が創業したストリートファッションブランド、HUMAN MADE(ヒューマンメイド)が27日に東京証券取引所に上場した。専門家からは日本のファッション史におけるターニングポイントだとの見方が出ている。
初値は3440円と公開価格(3130円)を9.9%上回った。一時3840円まで上昇し、13%高の3545円で初日の取引を終えた。公開価格を基にした時価総額は717億円。新株発行のほか、NIGO(長尾智明)氏や「Happy」などの楽曲で知られるアーティストのファレル・ウィリアムス氏を含む既存株主が保有株を売却しており、公募と売り出しを合計した資金吸収額は約178億円だった。
ファッション史やラグジュアリー文化に詳しい青山学院大学の中野香織客員教授は、ヒューマンメイドの新規株式公開(IPO)は日本のストリートカルチャーがサブカルの域を超え、「資本市場で価値ある事業体として認定された象徴的な出来事」とみる。日本のブランドが世界で戦えることを投資家に示したとして、他の国内ブランドにとっても資金調達の追い風になる可能性を指摘した。
事情に詳しい複数の関係者によると、応募倍率は全体で約60倍に上り、機関投資家からは35倍超、一般投資家(リテール)は約80倍と申し込みが殺到した。
成長期待
需要を集めた背景には成長性への期待がある。ヒューマンメイドは2026年1月期に137億円の売上高、38億円の営業利益と、共に前期比20%の成長を見込む。業績予想と公開価格に基づく予想株価収益率(PER)は約27倍になり、ユナイテッドアローズなど上場する同業他社よりも高いバリュエーション(株価評価尺度)が付いた。
成長を引っ張ってきたのがNIGO氏の存在だ。中野氏は、「30年以上にわたって日本のストリート文化を輸出し、日本のカルチャーに市場価値を付けてきた人物だ」と話す。
1990年代にNIGO氏が創業した「A BATHING APE」は、ストリートウエアが世界的な潮流となる前からヒップホップやスケートボード、日本のポップカルチャーなどを融合させ、ストリートファッション文化を象徴するブランドとして地位を確立した。
ヒューマンメイド株主のウィリアムス氏のほか、カニエ・ウエスト氏やクリストファー・ウォレス氏(ノトーリアス・B.I.G.)ら著名アーティストがNIGO氏のブランドを着用したことで、世界的な知名度も獲得している。
もっとも、上場後は投資家を継続して納得させられる事業戦略が必須だ。GCIアセットマネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、収益がスピードを伴って成長していることを評価した上で、今後も20%成長を維持するには商品ラインアップの拡充や他ブランドとのコラボ、販売地域の拡大など選択肢を増やす必要があると言う。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーも、高いPERを維持するには収益拡大の裏付けが必要だと指摘した。
目論見書によると、ヒューマンメイドは中国を海外戦略の「主戦場」に位置づけ、「最大の未開拓市場」だとしている。同時に中国への過度な依存を避けるため、米国市場への展開も進める方針だ。