BOXが年間販売ランキング1位から一気に5位に陥落!! メーカー&ディーラーに直撃してわかった本当の理由
ホンダN-BOXは、2017年に3代目の先代型が発売されて以来、ほぼ一貫して国内年間販売ランキングの1位を守ってきた。しかし、絶対王者の地位がほころびはじめている。なんと2025年10月の登録車+軽自動車の販売ランキングでは5位、軽自動車ランキングでは4位と一気に落ち込んだ。これは何があったのか。渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、ダイハツ
【画像ギャラリー】ホンダN-BOXは標準、カスタム、(5枚)ホンダN-BOXは、今後、年間販売台数において絶対王者の座から陥落するのか、11月、12月の販売台数に注視したい
ホンダN-BOXは、2015~2024年(1~12月)の軽4輪新車販売10年連続1位、2022~2024年(1~12月)の登録車を含む4輪総合新車販売ランキングでは3年連続1位。
2025年上半期(1~6月)においても10万3435台で登録車を含み4輪総合新車販売ランキング1位を達成した、ベストセラー車。しかし、2025年10月の販売ランキングを見ると、登録車+軽自動車では5位、軽自動車単独だと4位に陥落した。
1位はトヨタヤリス(ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス)、2位はダイハツムーヴ(ムーヴ+ムーヴキャンバス)、3位はスズキスペーシア、4位はダイハツタントで、5位がN-BOXだった。小型車のヤリスを除いた軽自動車だけのランキングでも4位に後退している。■2025年10月 軽自動車新車販売ランキング1位:ダイハツムーヴ(ムーヴキャンバス含む) 1万6015台2位:スズキスペーシア 1万4420台3位:ダイハツタント 1万4244台4位:ホンダN-BOX 1万2784台5位:スズキハスラー 7103台■2025年10月 登録車+軽自動車 新車販売ランキング1位:トヨタヤリス(ヤリスクロス含む) 1万7041台2位:ダイハツムーヴ(ムーヴキャンバス含む) 1万6015台3位:スズキスペーシア 1万4420台4位:ダイハツタント 1万4244台
5位:ホンダN-BOX 1万2784台
N-BOXに変わって軽販売1位に輝いたダイハツムーヴ
N-BOXの順位が通常の1位から5位へ急落した理由として、筆頭に挙げられるのは売れ行きの減少だ。2025年10月におけるN-BOXの届け出(小型/普通車は登録)台数は1万2784台で、前年同月に比べて24%も減った。
その一方でムーヴは2025年6月にフルモデルチェンジされて納車を活発化させ、2025年10月には前年の3倍売れた。スペーシアは横這いだが、タントは認証不正問題による納車の滞りも解消され、前年同月に比べて1.3倍届け出されている。
このように小型車のヤリスも含めて、販売ランキングの上位車種の売れ行きは、前年と同等か増加した。それなのにN-BOXは24%も減ったから、販売ランキングの順位も1位から5位へ下がった。
それなら、なぜN-BOXは2025年10月に売れ行きを24%も下げたのか。N-BOXは、2025年4月にマイナーチェンジを実施した。その効果が販売面で現われたとすれば、売れ行きが前年よりも増えて当然だ。減ることは考えにくい。
N-BOXカスタムはメッキ加飾を極力少なくし大人しくなった。いわゆるオラオラ顔ではなくなっている
そこでホンダに販売が落ち込んだ理由と尋ねると以下のように返答された。「10月のN-BOXは、残価設定ローンの低金利キャンペーンを実施していなかった。その一方で、他社の軽自動車が売れ行きを増やしたため、N-BOXの順位が下がったと考えられる」。
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のホンダカーズで行われている新車購入クーポン「10万円」プレゼント
ただしディーラーオプションを対象にした「10万円分プレゼント」は、2025年10月から実施されていた。この時期のN-BOXが、販売促進の対象から外れていたわけではない。
そこで販売店にN-BOXの売れ行きが下がった理由を尋ねると、以下のように返答された。「稀に何らかの理由で届け出や納車が滞ることはあるが、10月のN-BOXは、いつもと同じで順調に納車されていた。N-BOXが売れ行きを下げた実感はない」。
以上のようにN-BOXの売れ行きが24%も下がった理由は見つけにくいが、一部の販売店からは「N-BOXは実は前の月に力を入れたから、その反動で10月は減った」という話も聞いた。
この「力を入れた」という意味は、販売よりも、届け出を活発に行ったことを示している。具体的には新車の在庫を販売会社などが届け出して、実質的に未使用の中古車として、中古車市場へ卸すことだ。このような届け出台数の粉飾を行うと、届け出台数、売り上げともに増やせる。
そして届け出台数が急減した10月の「前の月」とは9月だから、上半期決算の最終月に当たる。メーカーや連結子会社の販売会社としては、売れ行きを増やしたいところであった。
これはあくまでも想像だが、販売会社の在庫車を使った自社届け出が9月に活発に行われ、この影響で10月の届け出台数が下がった可能性を否定できない。販売店のコメントにあった通り、届け出や納車の滞りはなく、前年に比べて届け出台数が24%も下がった理由を見つけられないからだ。
なお今の状況は、現行N-BOXの発売直後から予想できた。現行N-BOXの発売は2023年10月で、2024年1~6月は絶好調に売れる時期だが、実際には対前年比が10%以上の減少だった。現行N-BOXは、フルモデルチェンジを行った直後に、売れ行きを下げたのだ。
つまり現行N-BOXは発売当初から人気に陰りが出ていて、価格がお手頃なムーヴが出たおかげで、それが一気に加速し、2025年10月には国内販売ランキングを1位から5位へ転落した。今後、日産ルークスやデリカミニのデリバリーが始まるのでどう動くのかも気になるところ。
現行N-BOXが以前ほど売れない理由としては、フロントマスクやインパネのデザインが大人しく、収納スペースも減り、しかも値上げを繰り返したことなどが挙げられる。N-BOXには大幅な改良が必要ではないだろうか。2027年の前半にフルモデルチェンジを前倒しして実施する可能性もある。
2025年9月19日に発表された日産ルークス。発表1カ月後の受注台数は1万1344台と好調。10月27日からデリバリーが開始されている。11月の販売台数はどこまで伸ばしているのか、気になるところ