新型ルークス、発売されたらここを見よ! ちょっとめずらしい新しいルークスの注目ポイント、あんなとこ、こんなとこ・・・

新型ルークス。

この8月22日に新型ルークスの実車が公開された。仕様などの詳細は一部が明かされただけで、発売時期も「秋ごろ」のアナウンスにとどまっている。

最初の「ルークス」はスズキパレットのOEM。三菱との合弁NMKV下で開発された次の「デイズルークス」では、日産は企画参画にとどまり、開発と生産は三菱自動車が行なった。車名を「ルークス」に戻した先代から、企画、開発とも日産が主導。今回の新型も引き続き日産主導で企画、開発が執り行われた。

一時的な車名の変更を無視すると、数えて4代目のルークスとなる。

新型ルークス&デリカミニの詳細や、ライバル車との比較は他記事に詳しい。

本稿は少々趣を変え、筆者が実車を見て気づいた、「新型が販社展示されたら、ここを見ておくとおもしろい」と思った点をご紹介する。

書いたとおり、明らかになっている詳細が限定的なため、現行スペックと実車観察を合わせた、筆者推測による解説が主となることをご承知おきいただきたく。

気づいた順に、クルマの内外順不同で話を進めていきます。

1.ハンドルデザイン

運転席に座って最初に目が行ったのはハンドルだ。

2本スポークのハンドル。

「今後の日産車(と三菱車)はこのように変わっていくのか?」と思わせられた。見ればただの2本スポークハンドルで、むかしだったら大衆車の低廉機種に用いられた形をしているが、ここで見るべきは形じゃなく、スポーク上のスイッチ配列。

これまでどのクルマも右スポークにアダプティブクルーズコントロール(ACC)関連、左にメーター表示やハンズフリー、オーディオ関連のスイッチがまとめられていたが、この新型ルークスでは左右逆になった。

これまでの慣例とは逆に、左スポークにアダプティブクルーズコントロール関連、右メーター操作/オーディオ/ハンズフリーのスイッチが廃された。
筆者が前のクルマで使っていた、汎用クルーズコントロールのスイッチ。スイッチ本体の都合上、ワイパースイッチレバーの下に置いたからハンドル左の操作だった(スイッチがぼけているのは、スイッチのために撮った写真ではないからです。)。

筆者は以前、汎用クルーズコントロールをつけていたが、製品付属のスイッチレイアウトの都合上、左のワイパースイッチレバーの下にもう1本棒が生えたかのような位置に取り付けていた。日常的には左下(時計7~8時位の位置)に置いたスイッチ操作でクルーズ走行していたわけだ。

一般的なレイアウトに対して違和感があったが、まさか量産車の正規もので左に配されるときが来るとは思わなかった。

ACCは運転支援デバイスのひとつ。昨今、未装備では商品力不足で、いまや軽自動車にさえ広まったACCだが、日常的に使用されている様子はないと判断したのだろうか、ACCよりは操作頻度が高い(であろう)メーター表示/ハンズフリー/オーディオの操作を右スポークに持ってきた。

さきほど「今後の日産車は・・・」と書いたが、あるいは軽自動車限定とも考えられなくはない。軽自動車は、通勤・送迎・お買いもの・・・その走行範囲は自宅からせいぜい半径20km圏内にとどまり、いわば街のおでかけサンダルとでもいうべき使われ方をしている。

右利きが9割を占める世の中で、使用&操作がおおよそ高速道路に限定されるACCスイッチなのに、街乗りが主体の軽自動車にまで右スポーク配置していたのは、考えてみたら実際の軽自動車の使用形態にそぐわないものであった。ならばいっそ使用頻度の低いACC関連は左に持っていっちまえという判断したのだとしたら理に叶っている。

新型ルークスのACCスイッチ。

左にハンズフリー/オーディオ関連、右にACC関連・・・この配列にいままで誰も疑問を抱かずにいたのが不思議。迂闊にも、私も気づかずにいました。

2.スイッチ形状にも細かな配慮

さてそのオーディオ関連スイッチ。上下左右(Λ∨<>)ボタンに囲まれる中央は、上下まわしのダイヤルスイッチで、押すとメーターメニュー表示の選択時のOKボタンにもなっている。

中央のダイヤルボタンの左傾斜を見落としてはならない。

「細かい配慮をしたな」と思ったのは、ハンドル輪っかを握ったまま操作する親指の動きに即し、この球状スイッチの回転軸を水平から右上がりに傾けたことだ。したがって、親指の上下操作で、スイッチは斜め左に傾いた状態で上下する。

いっちゃあ悪いが、いままでの日産だったらこんな配慮はしなかったことで、実際に操作してみたらほんのわずかな傾きが実によい操作感につながることがわかった。

右手親指の動きに沿うので実に使いやすいのだ。

おそらくこの部分も、今後の日産車に広まっていくだろう。ただし、ために「上(Λ)」と「左(<)」が遠くて親指が届きにくいのと、「戻る」ボタンはそのイメージから、現状の発話スイッチと入れ替え、「上(Λ)」の左に持ってくれば使いやすいと思った。

いま「遠い」と書いたばかりの「上(Λ)」と「左(<)」にはさまれる位置になるが・・・

3.フロントピラートリムのデザイン

私はときに、「こんなクルマがあったら」「こんなデザインがあったらいいのではないか」と、クルマ内外のへたくそスケッチを描くことがある。その中で長いこと、フロントピラー(のトリム)と計器盤上面の流れというかつながりに新しい造形はできないかと、絵を描いちゃあ破りいのを何度も繰り返してきたが、新型ルークス(とデリカミニ)がひとつの答えを出してきた。

前席に座って目に入るフロントピラー片側2本のうち、手前側サブピラーのトリムをピラー上で完結させず、天井とインストルメントパネル手前側も巻き込んでデザイン・・・ピラートリム~天井~ピラートリム~インパネ手前をぐるりと1周させているのだ。いままでのクルマの内装で、ピラーまわりをこのようにデザインした例を知らない。

フロントサブピラーのトリムが、天井とインパネ手前も含めてデザインされている。

一見、横長の薄板液晶を立てかけただけに見えるメーター&ナビも、その裏にはユニットを収めるスペースが存在しているから、実際には1周していないのだが、内装デザイナーの志としては1周させたかったはずで、さぞ悔しい分断だったろう。スケッチ上では首都高環状線よろしく、1周めぐっていたにちがいない。

そうはいっても、インパネ側はメーター&ナビ部分で分断されている。

また、天井側でもサンバイザーを上げてしまう(=未使用時)と途切れ途切れになってしまうが、これは上下寸が大きいフロントガラスとの関係でバイザー天地も大きくなってしまうから致し方あるまい。

サンバイザー未使用状態の天井側も途切れ途切れになっている。フロントガラス天地が大きいことに伴い、バイザーだって上下寸が大きいからだ。

写真の車両のこの部分はブルーになっている。デリカミニも含め、機種構成やボディカラー、内装色の関係がどうなるかはいまのところわからないが、中にはピラートリムが茶色のものもあり、この場合は木を思わせるから木の枠を通して前を見る感覚になる。

その向こう正面と左右にガラスがあるわけだから、茶色トリム車なら疑似木枠のせいで、リビングの出窓感覚になるだろう。

ピラートリムが茶色使用になると、1周トリムが木枠のようになって、これはこれで別のおもしろさが現れる。

この1周デザインはちょっとしたお遊びだが、ただ遊んでいるわけでもなく、未使用時のサンバイザーに隠れる部分にはチケットなどをはさめるホルダーが左右にあった。サンバイザー本体にもホルダーがあるから(運転席側のみ)、トリム側ホルダーには何かのメンバーズカード、バイザー側ホルダーは駐車チケットなど、挟むものの種類で使い分けするといい。

バイザーを下げると、トリムにホルダーがあった。 バイザー本体にもホルダーがあるので使い分けするのによさそうだ。

4.やさしい「かどまる」はメーターデザインにも

新型のデザインモチーフは「かどまる四角」だという。

日産は「ヘッドライト、リヤコンビランプ、ドアハンドル、ホイールなど随所に取り入れた」と。説明にはないが、薄い四角錐を押しあてた跡のような、グリルのエンボス模様も含んでいるだろう。

このテーマは主に外観に与えられているようだが、内装にもあり、ヘッドレストに用いられていた。

ヘッドライトやグリルエンボスの「かどまる四角」。 リヤランプの「かどまる四角」。 ホイールの「かどまる四角」。 ヘッドレストにも「かどまる四角」。

あとひとつ、メーターにも「かどまる」テーマが使われている。

新型ルークスのメーターは、現代の流れに沿って全面液晶型に変わった。このクルマのメーターは、車速を数字で表示し、その周りをアナログデザインのタコメーターが囲んでいるが(たぶんいくつか切り替え表示できるメーターデザインのうちのひとつ。)、そのプロッティングが「かどまる四角」になっている。

セドリックやグロリアの廉価&タクシー仕様のメーターは別格に、筆者はこれを見て3代目サニー(B210)のメーターデザインを思い出した。

そしてタコメータープロッティングの「かどまる四角」。 ルークスのタコメーターそのタテヨコ比率から、3代目サニー(B210)のメーターを思い出した。

この「かどまる」に似たメーターは、かつてトヨタがスペイドに使っていたっけ。四角形も角を丸くしただけでずいぶんやさしく見えるようになるものである。

5.クラストップの室内長

サイズ枠が決まっている軽自動車は、自由度のある高さ方向は別に、幅や長さの確保には、どこのメーカーも5mm、10mm単位で涙ぐましい努力をしている。

それにしても一体、どこに隠れていたというのか。新型ルークス開発陣は、現行ルークスの車内の長手方向に隠れていた「115mm」を発見、引きずり出して身柄を確保した!

隠れて遊んでいた(?)この「115mm」を室内長の延伸に充てて働かせ、カタログ上の室内長は、現行の2200mmから2315mmにまで延びて一挙クラストップにまで躍り出た。

室内長を延ばすには、ホイールベース延長が手っ取り早いが、サイド写真の新旧を比較すると、全長は当然のこと、ホイールベースとて変わっていないように見える。

まだしばらく現役の、いま販売中の現行ルークスのサイド視。 新型ルークスのサイド視。 両車重ねてみる。全長はもちろんのこと、ホイールベースも変わっていないようだ。 ラップ写真はわかりにくいだろうから輪郭線を与えてみた。赤ラインが新型、青ラインが現行型だ。 全体の違いは一目瞭然。

室内長さは、インストルメントの一番手前の突出部から後席シートバックの背面までの距離だ。ルークスでは新旧とも空調やシフトパネルの収まる斜面が計測出発点となるが、この斜面下端位置も現行から変わったようにも見えないが、新型のほうが角度が起き気味になっているから、これが室内長延長に寄与しているかもしれないが、明確なことはいえない。。

新型のセンターコンソール部。この斜面の下辺あたりが室内長計測の出発点になるはずだが・・・
こちら現行型。いくらか水平気味だ。この傾斜角の違いが室内長+115mmの秘密なのかどうかはよくわからない。

いったい何をどうしたから115mmプラスの2315mmになったのか?このへん、測定のしようでどうにでもなることでもあり、案外、リヤシートの定位置を下げただけの可能性もあるが、ここはミステリーのひとつとして謎のままにしておくほうが話はおもしろい。

いつか開発者に、そのトリックを聞いてみたいものだ。

6.設計者の苦労跡が見えるフロントキャビン

新型ルークスを斜め前から見たとき、どうにもフロントサイドのサブガラスの形状に違和感を覚えてならなかった。

新型ルークス斜め前方から。サブガラス上辺の奇妙な斜めにまず目が行った。

サブガラス下辺はフロントガラス下辺からの流れを素直に受け、「シャキンッ!」とした潔い直線のウエストラインにつながるのに対し、サブガラス上辺は一度フロントドア上辺に向かって斜めに下がっており、この部分が斜め前方から見たときの姿を破綻させている。

サブガラス上辺の勾配に無理を感じる。なぜこうなったのか?

なぜこのようにする必要があったのか理解できなかったが、さきの新旧重ね写真を作っているとき、その理由がフロントドアを飛ばしてリヤスライドドアにありそうなことが見えてきた。

推測になるが、リヤスライドドアのガラスはどうやら新旧同じものを使っている様子。形がぴったり一致するのだ。

ということは、周囲の窓枠のプレス形状やドア上端位置も現行から変わっていないはずだ。

現行ルークスのリヤスライドドアガラス。 新型ルークスのリヤスライドドアガラス。 両車重ねてみたら、ガラスおよびその周辺形状がぴったり一致する!

いっぽう、キャビン前部に目をやると、フロントガラス(とフロントピラー)は現行から起こされている。その成り行きでルーフ前端も前進、フロントガラス上辺もわずかに上に移動し、ルーフのこの部分はわずかに薄くなっている。

現行ルークスのフロントピラー周辺。 新型ルークスのフロントピラー周辺。 新型はフロントガラス&ピラーが起き上がったことがわかる。 同じく輪郭線付与。 車体を消す。これだけ違うのだ。

立ち気味になったフロントピラー角に合わせて新作になっても、上端位置は現行と同じままのリヤスライドドアに合わせなければならないフロントドアと、上辺の上方移動で生じたフロントガラス上端との高さ違いを吸収するには、外から破綻して見えてしまうのは承知の上でサブガラス上辺を斜めにするしか手がなかったのではないか。

おそらくボディ骨格は現行からのキャリーオーバーで、フロントピラー周辺だけ新作したのだと思う。このへん、ムーヴキャンバスの骨格を用いて造った新型ムーヴによく似ているが、ルークスの設計者もデザイナーも、この辺のつじつま合わせに苦労したことだろう。

出来上がったクルマを見るときは、このあたりの造り手の苦労も汲み取ってあげたいものだ。

なお、室内側から見るフロント&サブガラス上部はトリムに隠れているので不自然な点は一切ない。でもこれでいいのだ。

クルマは買ってから手放すまで、外から見る時間よりも中に乗って外を見る時間の方が圧倒的に長いのだから。

この部分の車内からの見え方は自然だ。ガラス周囲がトリムで隠れているからだ。

7.フロントは絶壁フェイス!

これは別に新型ルークスに限ったことではなく、いまのクルマ全般にいえることだが、ホンダでいう「マンマキシマム・メカミニマム」の思想(MM思想)は、小さいクルマを造るときほど腕の見せどころとなる。

サイズが限られる軽自動車でキャビン長さを最大限にしたければ、ホイールベースを延ばす以外にエンジンルームを小さくする手があるが、メカを収める都合があるエンジンルームだってただじっとしちゃいない。

これでもいくらか拡大した(と思われる)、新型のエンジンルーム。

旧ルークスは、グリルまわりとフロントバンパー前端までまだいくらか距離があった=バンパー突出が残されていたが、新型は他の軽自動車と同じく、フロントグリルとバンパー前端がついぞ面一になった!後ろ側をキャビンに食われる影響を最小限にとどめるべく、許される限り前側に逃げ続けた結果だ。

歩行者保護対策でバンパーとボディ段差をなくしたい要請にも叶うが、それにしても横から見たら、定規を当ててぴったりしそうなほど上から下まで直線になっている。

現行型のフロント部。まだバンパーの突き出しが残っている。 新型のフロント部。 新型。まっすぐ!

8.スライドドア開口長

スライドドアの開口幅というか開口長は、日産によるとクラストップの650mmで、現行ルークスと同じだ。つまりクラストップを2世代続けることになる。

スライドドアの前後方向の開口寸は、ドアサイズ次第でどうにでもなりそうに見えるが、話は素人が思うほど簡単じゃない。というのも、法規には、「開けたスライドドアの後端が車両最後端(=リヤバンパー後端)から後ろにはみ出てはならない」というヘンな約束事があるのだ。

「跳ね上げたら後ろからあんなにはみ出るバックドアほど下がらなければいいじゃないの」といいたくなるのだが、決まり事だからしょうがない。

開口部を大きくしたくとも後ろにはみ出ちゃいけないし、かといってフロントドアの開口部を責めてもいけないから、スライドドアは前にも後ろに大きくできない・・・そんな2つの制約の間(はざま)で実現したクラストップの開口寸650mmなのだ。これもさきのフロントピラーまわりの設計と同じで、センターピラー位置、スライドドア&クオーターパネルの前後長選定には、現行ルークス開発陣はかなり苦労したことだろう。

右側がスカスカの写真なのは、車両後端位置を写真中央に持ってきたかったため。 スライドドアを開けると・・・ こうなる。後ろは後端ギリギリ。これを守りながらフロントドア開口寸も守り、スライドドア開口寸を最大限確保するのはパズルだったと思う。その挙句に得た650mmがクラストップなら拍手で称えたい。

クルマ全体を見ると、内外装備は現行からの引き継いだ部分が多い新型ルークスである。ただ、仔細に見ると、ブラッシュアップを受けて進化した部分、ユーザー想いで改良した部分、各部位の開発担当者はずいぶん苦労したろうなと思わせる部分が混在した新型ルークスでもあった。

クルマが販社に並んだ頃、ここに掲げた項目にも注目すると、ちょっと違った見方によるクルマ選びができるかも知れないので、ご参考に。

発売は「秋ごろ」。もうすぐだ。

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