新潟県知事、柏崎刈羽原発の再稼働を条件付きで容認 「県議会に信問う」

写真は東京電力のロゴ。2011年6月、東京で撮影。REUTERS/Yuriko Nakao

[東京 21日 ロイター] - 新潟県の花角英世知事は21日午後に臨時の記者会見を開き、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働を了承すると表明した。安全性向上など7つの項目について国の対応を確認することを条件とした。今回の判断と、知事として職務を継続することについての信任、不信任を県議会に諮る。

再稼働に向けては、地元の同意が最大の焦点となっていた。花角氏は「県民の意見は再稼働に肯定的な方と否定的な方が大きく分かれている状態だ」とした上で、「これまでの安全対策、防災対策の取り組みについて正確な情報を県民に周知していくことを継続していけば、再稼働に対する理解も広がるのではないかと判断した」と語った。「7項目について確約をいただいた上で、県としては了承することとしたい」と述べた。

再稼働すれば、東日本大震災に伴う福島第1原発事故以降、東電の原発としては初となる。柏崎刈羽原発は1―7号機の全てが稼働を停止している。6号機は既に原子炉への燃料装着が完了している。

花角氏は、国から再稼働に対する理解要請を受けてから約1年半が経過しており「もう長く引っ張れないと思っていて、エネルギー情勢などを考えると、そろそろ結論を出さなければならないと(判断した)」とした。「国の法律上、規制基準に合格しているものを合理的な理由もなく止めることは難しいとは思っていた」とも話した。

7項目は、1)原発の必要性や安全性に対する国などの取り組みに関する県民への説明、2)安全性向上の取り組み、3)緊急時対応についての県民の理解促進、4)避難路や屋内退避施設の整備促進、5)使用済み核燃料の処分や武力攻撃対策などに対する国の取り組み、6)東電の信頼性確保への実効性ある取り組み、7)電源3法交付金制度の早急な見直し検討──。

電力産業を所管する赤沢亮正経済産業相はこの日夕方に会見し、「国に対する花角知事の発言をしっかりと受け止めた」とした上で、原子力防災の強化や地域振興などに取り組むほか、東電に安全最優先を徹底させるなどと説明した。柏崎刈羽原発6号機が再稼働すると、東京エリアの電力需給は2%改善するという。

<東電の収支>

東電は福島第1原発事故による賠償や廃炉で巨額の費用を必要としている。柏崎刈羽原発の再稼働で火力発電の燃料費が減るため、1基につき年間約1000億円の収支改善につながると試算している。

同社が10月に発表した2025年4―9月期連結純損益は7123億円の赤字だった。26年3月期予想は、柏崎刈羽原発の再稼働が見通せないため未定としている。

福島第1原発事故後、国内では全原発が停止。現在、国内の原発36基(建設中を含む)のうち再稼働したのは14基にとどまる。東電は24年の電源構成で火力の比率が73%と高く、一般家庭の平均モデルの電気料金も足元で月8639円と、原発比率が37%(火力は37%)の九州電力の7454円に比べ約15%高くなっている。

経済界からは、電気料金の高さが日本の産業競争力に影響しかねないとして、低コストの原発再稼働を急ぐべきだとの意見が出ていた。経団連の筒井義信会長は新潟県知事の判断を受けてコメントを発表し「柏崎刈羽原子力発電所は、わが国のエネルギー自給率の向上とカーボンニュートラル(脱炭素)の実現に大きな役割を果たす」とした。

政府の第7次エネルギー基本計画では、原子力を再生可能エネルギーと共に「最大限活用していくことが極めて重要」とし、発電電力量に占める原子力の割合を22年の5.6%から2040年に2割程度まで引き上げるとしている。

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