父との特別な18番を背負い、両親の前で同点ゴールを決めた上田綺世「少し恩返しできたのは達成感もあるし、一番うれしい」

18番を背負い、劇的な同点ゴールを決めたFW上田綺世

[10.10 キリンチャレンジ杯 日本 2-2 パラグアイ パナスタ]

 これぞエースの仕事だ。ピッチに入ったのは後半44分。スコアは1-2。日本代表FW上田綺世(フェイエノールト)は「短い時間だったので、こぼれ球とか、チャンスに見えないものを仕留めないと結果を残せないと思っていた」と話したとおり、ワンチャンスを生かして劇的な同点ゴールを奪ってみせた。

 後半アディショナルタイム4分、MF相馬勇紀がゴール前にFKを蹴り込むと、相手のクリアボールが日本の右サイドにこぼれる。これを拾ったMF伊東純也が縦に仕掛け、右足でクロス。ニアに飛び込んだDF瀬古歩夢は届かなかったが、ファーサイドに詰めた上田が体を投げ出すダイビングヘッドで捉え、ゴールネットを揺らした。  今季エールディビジで開幕8試合8ゴールと絶好調のストライカーは「かみ合っているなというのはもちろんある。今日は来たけど、来ないときは来ないし、運も含めて、いい状態なのかなと思う」と認める。 「今日みたいにボールが来ることもあれば、準備をしていても、そういう局面が来ないこともある。今はこぼれ球がこぼれてきたり、自分が狙っているところにクロスが上がってきたりしているけど、来ない時期もあるし、普通だったら入るのにシュートが入らなくなる時期もある」  フェイエノールトに移籍して3シーズン目。上手くいかないときも、苦しいときも努力を積み重ね、一つひとつ課題を克服していった2年間を経て、欧州の舞台でその得点力がついに花開いた。「得点感覚というか、嗅覚でそこが分かるのは自分の状態がいいという部分でもある。うまくいかないときに積み重ねてきたことが今、結果になっている」と胸を張った。  特別な番号である背番号18に変更した初戦でゴールを決めたことも「特別うれしい」と素直に喜んだ。サッカーを始めるきっかけとなった父親が、元ドイツ代表FWユルゲン・クリンスマン氏への憧れから18番を背負ってプレーしていたことから、「ずっと父の真似をして18番を着けてきた」。プロ入り直前の法政大3年時、鹿島アントラーズでの3〜4年目、東京五輪と18番を背負ってきたが、日本代表ではカタールW杯は21番、その後は9番を付けてきた。 「9番を代表側からもらって、そこは自分の中でもリスペクトを感じて、その番号に添えるような活躍を責任を持ってしないといけないと思っていた。そして予選が終わってようやく自分の欲しかった番号がもらえて、それを国と一緒に背負って戦えるというのはすごく僕にとって特別です」。パラグアイ戦前日、報道陣の取材に対し、18番への愛着、特別な思いを熱い口調で話していた。  この日、スタンドには両親の姿もあった。「今日は大阪まで普段から支えてくれている母と父も来ていた。点を取って少し恩返しできたのは達成感もあるし、一番うれしい」。18番を背負い、父の前で決めた同点ゴール。上田にとっても、両親にとっても特別な1点になったのは間違いない。 (取材・文 西山紘平)●2026ワールドカップ(W杯)北中米大会特集▶日本代表の最新情報はポッドキャストでも配信中

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