牛乳嫌いでも身長194cm…山梨学院・菰田に"衝撃事実" 県大会で先発がゼロだった理由

 第107回全国高校野球選手権大会で19日、山梨学院が昨夏覇者・京都国際との準々決勝に11-4で大勝。春の選抜大会では2023年に優勝しているが、夏の甲子園では初の4強入りを果たした。身長194センチ、体重100キロの2年生エース・菰田陽生(こもだ・はるき)投手は先発して4回途中まで1失点に抑え、打っても4打数3安打3打点と活躍した。ドジャース・大谷翔平投手(190.5センチ、95.3キロ)よりひと回り大きい“超メジャーサイズ”を誇る右腕は、千葉の野山や田、海で“野生児”のように育てられたという……。

元プロら70人以上が参戦 現場指導者の支持多数 “YouTube”にない野球指導動画が「無料で250本超」見放題

 長身から投げ下ろす最速152キロの剛速球が持ち味の菰田に対し、敵将の京都国際・小牧憲継監督は試合前、菰田対策として「朝礼台のような台の上からボールを投げさせて、打撃陣にそれを打たせる練習をしてきました。球質も重そうなので、ソフトボールも打たせました」と明かしていた。

 特訓の成果か、菰田は初回に1死から左前打、右越え二塁打を浴びて二、三塁のピンチを背負い、三ゴロの間に先制の1点を許した。ただ、続く2死三塁で相手を146キロのストレートで投ゴロに仕留め、追加点は許さず。吉田洸二監督は「あそこを1点でしのいだのが大きかったです」と胸をなでおろした。

 投球以上に驚異的だったのが、下位の7番を任されている打撃だ。2回、4番・横山悠捕手(3年)のソロで同点とした後、無死一、二塁で打席に立った菰田は送りバントを2度ファウルにしてカウント0-2と追い込まれた後、バスターで相手投手のグラブを弾く強襲安打。チャンスを広げ、敵失による逆転劇につなげた。

 5回1死満塁の打席では“逆方向”の右翼手頭上を越える走者一掃の3点三塁打。吉田監督は「菰田の打球は伸びるんですよ。パワーが凄いから。私もこれまでに、引っ張ってショートがグラブごと持っていかれた打球や、ライトへのホームランなどを見てきました」と改めて感嘆した。

「ゲームにばかり夢中になるのではなく、野山を駆け回ってくれた」

 全てが破格である。しかし、身長に関しては父・英典さんが175センチ、母・理恵さんが167センチ、上武大2年で外野手として活躍中の兄・朝陽(あさひ)さんも174センチで、遺伝とは言えそうにない。理恵さんは「牛乳を飲むと身長が伸びると言われますが、陽生は牛乳が嫌いなんです。その代わり、私の千葉県大多喜町の実家が米農家で、ご飯は思う存分食べさせました」と証言する。米不足といわれたご時世でも「我が家ではお米に困ったことはありません」と笑った。

 また、「夫(英典さん)が看護師で夜勤が多かったことから、朝陽と陽生は私の実家で過ごす時間が長く、幼い頃から、田植えから稲刈りまで喜々として手伝っていました。あれも体を鍛える上でよかったのではないかしら」と理恵さんは振り返る。

 もともと、英典さんも高校時代には硬式野球部、理恵さんもバレーボール部に所属していたスポーツ一家。「私は子どもを、ゲームにばかり夢中にさせるのではなく、“野生児”のように育てたいと思っていました。実際、自宅(千葉県御宿町)の近くの海や、私の実家の近くの野山や田んぼを駆け回りながら、たくましく育ってくれたと思います」と目を細めた。

 自宅近くの海で、英典さんの趣味のサーフィンに興じてきたのも、体幹を鍛える上で役立ったと見られている。

 菰田は今夏、山梨県大会では1度も先発がなく、通算わずか4イニングしか投げていない。吉田監督は「県大会では球速が136~139キロくらいしか出ず、相手にとらえられていました。甲子園に来てから平均で10キロくらい上がりました」と驚くばかりだ。甲子園ではこれまで全3試合に先発し、計15回2/3、2失点で防御率1.15の快進撃を続けている。

「甲子園という大舞台だからこそ、アドレナリンが出ているのかなと思います」と唇を綻ばせる菰田。潜在能力は計り知れず、どこまで伸びるかわからない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

関連記事: