【NASAが発表したヒ素生命体は存在する?】ヒ素を使って生命活動をしているのか、耐性があるだけなのか(スペースチャンネル)
2010年に“生命の常識を覆す発見”として発表された「ヒ素を使う生命体」の論文が、15年の論争を経て科学誌Scienceから正式に撤回されるという事態が起きました。その経緯と理由についてご紹介していきます。
◆ 「ヒ素生命体」発見とその衝撃
モノ湖 出典:Octagon2000年代末、NASAの支援を受けた研究チームがカリフォルニア州モノ湖の過酷な環境で、「ヒ素をリンの代わりに利用して成長する」バクテリアGFAJ-1を発見したと発表しました。モノ湖は強いアルカリ性であると同時に、塩分濃度の非常に濃い湖です。また、天然のヒ素濃度が濃いことでも知られています。
この発見は、DNAやATPなど生命の基本構造に欠かせないリンを使わずに生命活動を行う“異端の生命”とされ、大きなセンセーションを巻き起こしました。
発表直前にはNASAが「地球外生命の探索にも影響を与える」と予告し、注目を集めていたため、この研究は世界中のメディアで大きく報じられました。
しかし論文が掲載された2011年の時点で、8件の技術的な反論コメントが同時に掲載されるなど、当初から多くの専門家が疑問を呈していました。
その後、2012年に発表された追試実験では、GFAJ-1はヒ素に耐性はあるものの、リンの代わりにヒ素を使って生命活動をしているわけではないと結論づけられました。
◆ 撤回の理由と著者の反応
GFAJ-1 出典:NASA/Jodi Switzer Blum今回の撤回について、Science誌編集部は「DNAなどの核酸の純度が不十分であり、結果が汚染に基づいた可能性がある」と判断。つまり、ヒ素はDNAではなく細胞外のゲルに含まれていたのではないかという議論が噴出しています。このような議論から、論文の主要結論が成立しないとして、2024年7月24日付で正式に撤回されました。
ただし、論文著者たちはこれに納得しておらず、「結論への異論は科学の健全なプロセスの一部」とし、「データ自体は信頼できる」と主張しています。
この一件は、「ヒ素生命体」が実在しないことを意味するかもしれませんが、それ以上に科学とは常に更新と検証の連続であることを象徴する出来事です。意図的な不正はなく、むしろ「大胆な仮説」として議論の引き金となったこの研究は、今も科学の進化の一過程として記憶されるでしょう。皆さんはヒ素生命体は存在すると思いますか?ぜひコメントお待ちしています。
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