焦点:スペースX・オープンAI・アンソロピック、赤字のまま大型上場へ
[23日 ロイター] - 宇宙開発企業スペースX、生成人工知能(AI)の旗手オープンAI、そして競合のアンソロピックの3社がそろって、米市場で過去最大規模となり得る新規株式公開(IPO)に向けて準備を進めている。異例なのは3社がいずれも現時点で業績が赤字だという点だ。
米証券会社LPLファイナンシャルの推計によると、3社の上場で現在約69兆ドルの米株式市場の規模は3兆ドルほど拡大する可能性があり、今回の上場は過去10年で最も重要な「高成長テクノロジー株に対する投資家のリスク許容度」を測る試金石になるとみられている。
アメリプライズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アンソニー・サグリムベーネ氏は「誰もが保有したがるという熱狂期を過ぎた後、3社が実際に利益を生み出す方法を示せるのかが極めて重要になる」と指摘する。
ロイターが確認した非公開登録書類の抜粋によると、早ければ6月の上場を計画しているスペースXは、昨年の売上高が186億ドル超で、損益は約50億ドルの赤字だった。オープンAIとアンソロピックもIPO準備の初期段階にあり、いずれも採算は取れていないと報じられている。
強気派の投資シナリオは明快だ。スペースXは衛星通信サービス「スターリンク」が、将来的に業界を一変させ得る成長エンジンとして多くの投資家から評価されている一方、再使用型宇宙船「スターシップ」の開発への多額の投資を続けており、依然として多額の現金を消費している。
オープンAIとアンソロピックは、生成AIブームの中心に位置する。両社が開発するチャットGPTやクロードは、企業向けソフトウエアとして、幅広い分野で採用が進んでいる。
How the market concentration of the Magnificent 7 has risen along with the marketこうした資金の集中は長年にわたる圧倒的な収益力に裏打ちされてきた。LSEGで決算・株式リサーチを統括するタジンダー・ディロン氏によると、マグニフィセント・セブンの合計の前年比利益成長率は2023年が43.2%、24年が36.9%、25年が25.3%だったのに対し、残る493社はそれぞれマイナス1.3%、7.0%、10.9%にとどまった。
アバディーン・インベストメンツの投資ディレクター、ジェイミー・ミルズ・オブライエン氏は「高い株価評価を維持する上で自己資本利益率(ROE)は歴史的に見て極めて重要だ。市場は、マグニフィセント・セブンのような高ROE企業は収益性を損なうことなく再投資を続けられると見ている」と語る。
現在想定されている評価水準からすると、スペースX、オープンAI、アンソロピックはいずれも投資家に対して現時点で、将来の業績についてマグニフィセント・セブンと同程度の信認を求めていることになる。
Knocking on the door of Wall Street’s most exclusive club<利益という関門>
収益性は株価指数への採用という観点でも重要だ。指数連動ファンドからの自動的な資金流入は時価総額を大きく押し上げる効果があるからだ。
S&P500を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは同指数に採用する条件として「4四半期連続の黒字」と「上場後12カ月以上の取引実績」を求めている。同指数に連動する運用資産は20兆ドル超に上り、組み入れられれば投資家層が飛躍的に広がる。
テスラは2010年に上場したが、S&P500に採用されたのは黒字化が定着した10年後の20年12月だった。スペースXやオープンAI、アンソロピックも同様に指数採用まで長い時間を要する公算が大きい。
ただし、連動資産が約1兆4000億ドルのナスダック100に比べて、同20兆ドル超のS&P500は目標としてはなお格段に敷居が高い。S&P500採用の基準である収益性要件は現時点で変更されていないものの、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが大型新規上場企業を対象に迅速な組み入れ措置を検討しているとも報じられている。
一部のアナリストは、仮にこの規模の企業が将来的に主要指数へ組み入れられれば、すでに少数のテクノロジー企業の寡占状態となっている市場で投資の集中がさらに進むのではないかと危惧している。
バンガード・キャピタル・マネジメントのロドニー・コメジーズ最高投資責任者は「新技術の初期の勝者が、必ずしも長期的な勝者になるとは限らない。だからこそ、分散投資が重要だ」と指摘した。
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