米議会、「エプスティーン関連文書」公開法案を可決 トランプ氏の署名次第

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米連邦議会の両院は18日、性犯罪で有罪とされたジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に関するファイルを公開するよう司法省に命じる法案を可決した。

下院は賛成427、反対1の圧倒的多数で法案を可決し、続く上院は正式な採決をせずに全会一致で素早く可決した。

上院の審議には数日かかるかと思われていたが、民主党のチャック・シューマー院内総務は、全会一致同意という手続きの法案を上院本会議に提出。異議がなかったため、討論も修正もなく法案は可決された。

法案はドナルド・トランプ大統領へと送られ、署名されて法律になる見込み。そもそも司法省の資料公開に議会採決は不要で、トランプ氏は単独で公開を命じることができた。

この法案は、パム・ボンディ司法長官に対し、エプスティーン元被告および共謀者ギレイン・マックスウェル受刑者に関連する「機密扱いではない全記録、文書、通信、調査資料」を法律施行後30日以内に公開するよう義務付けるもの。

資料には、司法省内部の通信、飛行記録、元被告に関連する人物や団体が含まれる。ただし、法案は、進行中の連邦捜査を危険にさらす情報や被害者を特定する情報については、公開を差し控える権限も司法長官に与えている。

18日の下院採決でただ一人公開に反対したクレイ・ヒギンズ議員(共和党、ルイジアナ州)は、「無実の人々が傷つく」ことを心配しているからだと、反対する理由を述べた。

これに先立ちトランプ大統領は16日夜、資料公表に否定的だったそれまでの姿勢を一変させ、自らのソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルに、「下院の共和党議員たちは、エプスティーン関連ファイルの公開に賛成票を投じるべきだ。私たちに隠すものは何もないからだ」と投稿していた。トランプ氏に対しては支持者の間で、資料公開を求める強い圧力が高まっていた。

それまでファイル公開を要求する議員たちを攻撃していたトランプ氏が、態度を一変させたことは、ワシントンの一部を驚かせた。

与党・共和党の議会指導部は、過去数週間にわたり大統領と歩調を合わせ、公開に反対していたため、不意を突かれた形になった。マイク・ジョンソン下院議長は、エプスティーン文書公開を求める動きについて「民主党のでっち上げ」だと再三批判していたものの、18日の採決では公開に賛成した。

12日に下院監視委員会の民主党議員たちが、元被告に関連する2万ページ以上の文書を公開したことで、元被告とトランプ氏の交友関係があらためて注目されている。公開された文書の中には、トランプ氏に言及する電子メールなども含まれていた。ホワイトハウスは、トランプ氏による一切の不正行為を否定している。

エプスティーン元被告に対する2度の刑事捜査では、被害者や証人へのインタビュー記録を含む数千件の文書が収集されている。

元被告はこの起訴よりも前、2005年に14歳の少女の両親がフロリダ州で警察に通報したことを受け、少女に対する性的虐待罪で2008年に起訴され、司法取引を通じて有罪判決を受けていた。

トランプ氏とエプスティーン元被告は以前、同じような社交界で交流していたが、大統領は2008年の有罪判決前に関係を断ったと述べている。元被告の犯罪行為について知らなかったとも話している。

その中にはトランプ氏に言及するものもあり、2011年に送信されたメールでは、エプスティーン元被告がマックスウェル受刑者に、「まだほえていない犬がトランプだと、承知してほしい(中略)。<被害者>は私の家で、彼と何時間も過ごした」と書いている。

さらに元被告は、トランプ氏について「一度も言及されていない」として、言及しなかった人物には「警察署長」も含まれると書いている。

これに対しマックスウェル受刑者は、「そのことについて考えていた」と返信している。

民主党が公開した電子メールでは被害者の名前は黒塗りされていたが、委員会が公開した黒塗りされていない文書には、「Virginia」という名前が記されている。

画像説明, 公開された電子メールの一部のスクリーンショット

ホワイトハウスは同日、この名前が著名なエプスティーン元被告の被害者の一人で、今年4月に自死したヴァージニア・ジュフリー氏を指すものだと反応した。

声明の中でホワイトハウスは、ジュフリー氏が「トランプ氏は一切の不正行為に関与していなかったと繰り返し述べ、限られたやり取りの中で『これ以上ないほど親切だった』と語っていた」と説明した。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、これらの電子メールが「民主党議員によって選択的にリークされ、リベラル系メディアに渡され、トランプ大統領を中傷する偽の物語を作り出すために利用された」と述べていた。

司法省の捜査資料公開を強く求めたのは、共和党指導部と異なる立場を取ることのあるトーマス・マッシー下院議員(ケンタッキー州)と民主党のロー・カナ下院議員(カリフォルニア州)で、両者が公開を司法省に命令する法案を提出した。

マッシー氏は、資料公開を推進したことでトランプ氏から批判されたが、姿勢を堅持した。

「(トランプ氏は)2030年にはもう大統領ではない」とマッシー氏は週末にABCニュースに述べ、同じ共和党議員が公開に反対するなら、「小児性加害者を守るために投票したことになる」とも話していた。

共和党では、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員も資料公開を強く求めた。

グリーン議員は長年にわたりトランプ氏を熱心に支持してきたが、この問題をめぐって決裂し、大統領は議員を「裏切り者」と呼んだ。

グリーン議員は18日の記者会見で、自分はエプスティーン元被告の被害者を代表して発言しているのだとして、トランプ氏を直接非難した。

「裏切り者とは何か教えよう。裏切り者とは外国や自分の利益のために仕えるアメリカ人のことだ。愛国者とは、アメリカとアメリカ国民、そして私の後ろに立つ女性たちのような人々に仕えるアメリカ人だ」とグリーン氏は強調した。

議員は、エプスティーン元被告をめぐる争いが、2016年の大統領選挙以来、トランプ氏の「アメリカを再び偉大にしよう(MAGA)」運動にとって「最も破壊的な事態の一つ」だったと述べた。

この記者会見ではエプスティーン元被告による虐待の被害者たちも発言。議会にファイル公開を促し、トランプ氏にも同様の対応を求めた。

被害者のアニー・ファーマー氏は、ファイルを非公開にすることは「制度的裏切り」に相当すると述べた。

「一連の犯罪が適切に捜査されなかったため、その後もあまりに多くの少女や女性が被害を受けた」とファーマー氏は強調した。

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