「もっと上を目指している」谷原秀人が画面越しでつぶやく松山英樹のいま
◇メジャー第3戦◇全米オープン 3日目(14日)◇オークモントCC(ペンシルベニア州)◇7372yd(パー70)
松山英樹にとって13回目の「全米オープン」は決勝ラウンドでも苦しい戦いが続いている。7オーバーの57位から出た3日目は「77」。通算14オーバーの63位に沈み、最終ラウンドはトップから3組目、午前8時14分(日本時間午後9時14分)にプレーを開始する。大会を中継するU-NEXTでは連日「松山英樹徹底マークチャンネル」を配信。初日、そして最終日の解説を担当する日本ツアー19勝の谷原秀人が、画面を通じて見た“松山のいま”を語った。
46歳の谷原は同じ東北福祉大OBである松山のよき兄貴分。後輩がアマチュアだった頃から親交を深め、2016年、17年にはPGAツアーやメジャーで長く同じ時間を過ごした。9年前に同じオークモントCCで行われた本大会にも一緒に出場。当時は予選落ちした松山の一方で、12オーバー51位タイで4日間を戦い抜いた。
日本で眺めたムービングデーの様子について、谷原は「攻め方を変えて“イケイケ”でやったけど逆にたたいてしまった。あの位置では行くしかなかったんだと思う」と下位スタートのプレーを振り返った。1Wを積極的に握り、グリーンの近くにできるだけ運ぶ戦法。「ただ、松山選手のアイアンショットの(高い)精度があれば、無理に行かなくてもよかったんじゃないかという見方もできる」
オークモントはフェアウェイキープと、ポアナ芝のグリーンの攻略が上位進出のカギとなるコース。松山のプレーでひとつ気になったのが、小技のうまさが影を潜めていること。「ショートゲームがパッとしないというか。『ああ、そうやって取りこぼしてしまったのか…』というところも多い。もちろんあの難しいコースだからというのもあるでしょう。とはいえ、彼のショートゲームの上手さは世界でトップ5に入る。その長所に対して本人が集中しきれていないようにも感じます」。54ホールのストローク・ゲインド・ショートゲームは「+0.01」でフィールド49位。3日目は「-1.26」で57位と振るわなかった。
スイングについても谷原は微妙な変化を感じ取る。「本人が取り組んでいることは彼とコーチ、チームにしかわからない」と前置きした上で、「アイアンショットのときはレイドオフなのに、ドライバーになるとトップで少しオーバースイング気味になっているように見える。あとはアドレス。少し、かかと体重なのかな」と見る。
今季は1月の開幕戦「ザ・セントリー」で優勝してから、トップ10入りが一度もない。好結果は喉から手が出るほど欲しいが、メジャー2勝目を争う舞台でも、スイングの完成度を高める取り組みを止めないのが松山ではある。「もっと上を目指しているところがあるから、今やらなければいけないという感じもあるんだろうと思います。探求心の強さは昔から変わらない。ゴルフって良い時もあれば、悪い時もある。いきなりハワイで勝つこともある。トップ10入りが少なくても、今シーズンで優勝していることは事実でしょう」
首位のサム・バーンズとは18打の差が付いた。最終日は「トップ10に入るのもかなり厳しい状況。だから、開き直っているはず。全英オープンやその後のプレーオフシリーズに向けて、少しでも感触を良くしたい。次の試合に向けてどれだけやりたいスイングができるかというところ」を注視する。
同じプロとして、本音を言えばタイトルに遠い位置でプレーするのは「楽しくはない」(笑)。「でも、実際の試合で目の前にあるスイングの目標に届いたかどうかというのは、その後のスイングづくりに影響する。プレッシャーがかかった時、そうでない時にどこまでできるかを見極めるポイントにもなるんです」。多くの人の興味が薄れていくような戦況にあっても、何かをつかもうとする姿勢はその後のキャリアを分ける。「すごく怒っているわけでもないし、顔色はそんなに悪そうではないですよね。本人としては納得している部分もあるのではと思います」。残された18ホールの後輩のプレーを待ちわびた。