3年ぶりに日本球界に復帰するDeNA藤浪晋太郎 阪神OBが口をそろえた「成功のカギ」 鬼筆のスポ魂
藤浪晋太郎投手(31)が3年ぶりに日本球界に帰ってくる。新天地は古巣の阪神ではなくDeNAだ。チームは85試合を消化した時点で39勝41敗5分けの借金2。首位・阪神とは9・5ゲーム差の3位だが、大型右腕は逆転Vの使者になり得るのだろうか。
DeNAの萩原チーム統括本部長は藤浪の起用法について「(先発か救援の)どっちがよりアジャストしやすいのかは(本人と)話してみないと分からない。ケース・バイ・ケース」と話した。
DeNAの先発陣は東を軸にジャクソン、ケイも安定した投球を続けているが、期待していたバウアーが4勝8敗と不振。救援陣も抑えの入江が右上腕の神経障害で離脱し、伊勢とともに代役を務めていたウィックも16日、出場選手登録を抹消された。起用法は藤浪の意向をくみ、最終的には三浦監督が決断することになるはずだ。
「ストライクさえ入れば…」
では、先発であれ救援であれ、藤浪は果たしてDeNAの戦力になるのか…。2013年、大阪桐蔭高からドラフト1位で阪神に入団後、在籍した10シーズンの投球を見続けてきた阪神OBたちは今回の日本球界復帰をどう見ているのか。
古巣・阪神の球団施設でキャッチボールする藤浪晋太郎=2024年1月19日、鳴尾浜球場(林俊志撮影)「大成功するか、全くダメか、二つに一つだ。中途半端はないと思う。もし成功するなら、藤浪はすごい成績を残す大投手になる可能性はあるよ。160キロの直球なんて、誰もが投げられるわけじゃない。ポテンシャルはすごいのだから、うまく乗っていけば大変身するかもしれない」
「成功するカギはあまり多くの球種を使わないことだ。大阪桐蔭高から阪神に入った頃は基本的に直球とスライダーだけだった。それがプロ4年目ぐらいから7色の変化球…とか言い出していろんな球種を覚えた。そこから投球フォームが崩れ、制球力の問題が指摘され始めた」
複数の阪神OBに聞くと、異口同音に「ストライクさえ入れば絶対に活躍する」と予想した。
3Aを自由契約
藤浪は22年のオフ、ポスティングシステムを利用して米大リーグのアスレチックスに移籍。その後、オリオールズ、メッツ傘下の3Aと渡り歩き、今季はマリナーズの3Aに在籍していたが、6月17日(日本時間18日)に自由契約となった。
米大リーグ挑戦1年目、先発するアスレチックスの藤浪晋太郎。藤浪はこの年、アスレチックスとオリオールズで計7勝を挙げたが、翌年からはマイナー生活が続いていた=2023年4月1日、オークランド・コロシアム(水島啓輔撮影)日米通算成績は、64勝62敗2セーブ(阪神で57勝54敗)。ポテンシャルは誰もが認める一方で、ボールがスッポ抜ける不安定な制球力は海の向こうでも改善されなかった。
藤浪のDeNA入りが表面化して以降、球界周辺では「打者は怖いだろう」「制球力が改善されない限り、活躍は期待できない」などとネガティブな声が流れている半面、「早くマウンドで投げる姿を見たい。米大リーグでさまざまな経験を積んだことを生かしてほしい」と復活を願う声も聞こえてくる。
ラストチャンスに
藤浪は4月12日の誕生日で31歳となった。一つだけ言えることは、野球選手として残された時間がそんなにあるわけではないということだ。大阪桐蔭高のエースとして甲子園で春夏連覇を達成。阪神入団後は3シーズン連続で2ケタ勝利を飾り、3年目の15年には自己最多の14勝をマークした。数々の栄光とその後の挫折を経て現在に至る。
プロ1年目、10勝目を挙げた阪神・藤浪晋太郎。セ・リーグの高卒新人では、江夏豊以来となる2桁勝利となった=2013年8月31日、甲子園球場(鳥越瑞絵撮影)もし、DeNAで戦力になれなかったときは、大きな決断を迫られるかもしれない。ラストチャンス-。藤浪はそう覚悟を決め、ハマスタのマウンドに立つのだろう。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。