TikTok米事業の売却計画、トランプ関税への中国の反発で頓挫-関係者

トランプ米大統領は、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国での禁止措置を回避する案で、TikTokの親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)と合意寸前までこぎつけていた。しかし、同大統領による今週の関税発表後、中国政府が同案の承認を見送ったことで取引は頓挫した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  同関係者によると、数カ月にわたる交渉の末、米当局は2日時点で、米投資家が過半を所有・運営する新たな米国バージョンのTikTokを立ち上げることで合意に近づいていた。バイトダンスの持ち株を20%未満に引き下げる内容で、北京に本社を置く同社が持ち分を売却しなければTikTokを米国で禁止するとした法律に従わせるものだ。

  この案は投資家およびバイトダンスの同意を得ていた。匿名を条件に語った同関係者によれば、ホワイトハウスは、同案を承認する大統領令にトランプ氏が署名し、取引完了まで120日間の猶予期間を設ける計画だった。TikTokの米事業売却期限である4月5日に間に合うよう発表を予定していたという。

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  しかし状況はその後一変。トランプ氏が貿易相手国に広範な関税を課す決定を下し、多くの中国製品への関税率が54%に達する見込みとなったことが影響した。バイトダンスの関係者は3日、関税についての交渉が行われるまで中国当局は承認を与えないと警告したという。

  中国政府は4日、トランプ政権の新たな関税に対する報復措置として、10日から米国からの輸入品全てに34%の追加関税を課し、レアアースの輸出を制限する措置を発表した。

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  バイトダンスはこの件に関するコメント要請にすぐには応じなかった。

  計画に新たな不透明感が漂う中、トランプ氏は4日、TikTokの米事業売却を求める期限をさらに75日間延長すると発表。バイトダンスは米政府とのTikTokに関する協議を初めて公に認め、重要な未解決問題があり、いかなる合意も中国法の下での承認を要する」とコメントした。

  トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、中国が売却交渉に協力し、承認の見返りとして米国が対中関税を緩和する可能性をあらためて示唆。

  「われわれは中国と引き続き誠意ある協議を続けたい。中国が相互関税に不満を抱いていることは承知している」とし、TikTokの禁止は望んでおらず「TikTokおよび中国と協力して取引を成立させたい」とした。

  在米中国大使館の報道官は、TikTokに関する中国の立場は以前から明確だと述べた。

  劉鵬宇報道官は声明で「中国は常に企業の正当な権利と利益を尊重・保護し、市場経済の基本原則に反する行為や企業の正当な利益を損なう行為に反対してきた」とし、「追加関税の導入に対する中国の反対姿勢は一貫して明確だ」と述べた。

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  バイデン大統領(当時)の署名で昨年成立したTikTok禁止法で、バイトダンスは1月19日までにTikTokの米事業売却をまとめるか、禁止措置を受けることになっていた。トランプ氏は1月20日、これを75日間保留する大統領令に署名した。

  トランプ氏による期限の延長は今回で2度目となる。

原題:Trump’s TikTok Plan Upended by Chinese Objections Over Tariffs(抜粋)

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