MLB:大谷翔平、ボール球を振った割合とOPSの奇妙な関係 スポーツライター 丹羽政善

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今回は大谷翔平(ドジャース)の盗塁増加をテーマにする予定だった。実際、ほぼ原稿も書き終えている。ただ、前回の原稿(大谷翔平、ブレない構えの秘密 テクノロジーで可視化)を書き終えた後、少しモヤモヤしていた。

大谷は構えを重視。安定すれば選球眼も良くなり、ボール球を振らなくなる。すると結果が伴う。構えを安定させるため、米キナトラックス社のデータで日々、誤差を確認。大ざっぱにまとめれば、それが前回の内容だが、ボール球を振らないことによる効果がややざっくりしているので、そこを補足できるようなデータ的な裏付けが必要なのでは、と考えた。

ということで、ボール球を振った割合とOPS(出塁率+長打率)の関係を調べてみた。ボール球を振った割合が小さくなればOPSが上がり、ボールを振った割合が上がればOPSが下がるという仮説が成り立つが、どう連動しているのか。15試合ずつ(チームの消化試合数)の結果を調べ、同一グラフ上で比較してみたところ、以下のようになった。

左の縦軸はOPS。右の縦軸はボール球を振った割合を示している。仮説通りなら、一方が上がれば、一方が下がるはずなので、折れ線グラフにした場合、ひし形ができるはずである。

実際、多少、形はいびつであるものの、100試合目くらいまではひし形が3つできている。これは想定通りだ。ところが、奇妙なことに100試合目から150試合目くらいまでは、それぞれが連動しているのである。120試合目くらいまではボール球を振った割合が下がるとOPSも下がり、120試合目以降はボール球を振った割合が上がるとOPSも上向いている。これはどういうことだろうか。

この100試合目から150試合目は、7月21日から9月16日までの51試合ということになる。この時期は、本塁打こそ出ていて(18本塁打)、それがOPSを下支えしたが、3安打以上が一度もなく、マルチ安打を放っても、それが安定して続かない。なにより、無安打が20試合もあった。この間の打率は2割3分9厘だった。

ではこの時期、本人はどんな言葉を残したのか。それをたどると、言葉の端々にもどかしさがにじんでいた。

8月2日にオークランドで33号3ランを放ったが、「ここ数試合は正直、状態は自分の中でもよくない」と話し、「捉えたなと思っても、それがファウルになったりする」と首をかしげた。

8月17日にはセントルイスで38号を記録したが、状態はむしろ、悪化していた。

「(問題は)動き方。構えている段階でいい未来があまり見えていない。それはアプローチやいろんなところで補うことも技術ですし、自分の状態を上げていくことも技術」

「やっぱり自分が打ったと思った球がファウルになったり、空振りになっている」

「よくない時というのは、だいたいこういう感じ。動きに(タイム)ラグが多いなというか、さっきも言いましたけど打ったと思った球がちょっとのズレでコンタクトできていない、またいい打球になっていない」

「いい時もありますけど、それが継続的に続いていかない。いい打球を打っても、結果的にアウトになる打球が今月は多い。いい打席が、いい結果になるかならないかで、自分の中でそれが本当に正しい技術なのかどうなのか確認がしづらいので、多少(調子を)戻しづらくなっている」

8月28日の試合後には、こんな話もしている。

「(構えも動きも)微妙なところから、ちょっとずつ崩れていく。毎日継続するのが大事ですし、そこが一番難しい」

構えは決して悪くない。ボールの見え方も決して悪くない。しかし、捉えたと思った球がファウルになったり、空振りになったり。思うようなスイング軌道にバットを通せなかった。それを疲労と結びつければ理解は容易だが、本人はそう捉えていなかった。8月3日の試合後にそんな指摘も出たが、「疲れはない」ときっぱり。

「最近、休みが多い(試合がない)ですし、前半戦よりもスケジュール的にはルーズになっているので、体的には万全な状態」

あくまでも自分の技術不足であり、動作がしっくりこない。本塁打の量産ペースこそ鈍化しなかったが、結果と感覚は一致しなかった。タラレバではあるが、もしもこの間、せめて打率が2割7分台だったら、三冠王もあったのではないか。

もっとも、この経験がなければ、151試合目以降の劇的な反動があったかどうか。最後の12試合は、7本塁打、打率5割4分7厘。OPSは1.643。この短期間で2分3厘も打率を上げた。一方でボール球を振った割合は、25%を切っていた。

苦しんだ分、得たものも少なくなかった。今年のキャンプ初日、「一段階というか、まだまだ(上が)あると思っている」と話した大谷。レギュラーシーズンの最終日に、それを実感した。

「もう一段、打撃の質でいうと先が見えた。トータルしてみた時、いい結果を出しにいく過程が、すごく良くなってきた」

図らずもそれは、ボール球を振った割合とOPSの推移が、奇妙に一致した時期につかんだものだったのかもしれない。来年、キャンプが始まったら、確認してみたい質問のリストがまた一つ増えた。

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